8話 腹黒美少女の飯
それは数日後の夜であった。御堂小春からメッセージが送られてきたのは。どうやら俺が知らない間に俺とのL〇NEをつないでいたようだ。多分御堂が俺のスマホをチェックした時にばれないように入れたんだろう。全然気づかなかった。元女神恐るべし。
小春【ニンジンがなくなってしまいました】
稲庭【そうか】
小春【はい】
稲庭【んで?】
小春【スーパーに行って買ってきてください。私は行くのが面倒くさいので】
稲庭【ナチュラルにパシるんじゃない。というか真下に手足のように動いてくれる人形ができたなんて思わないで?なんか俺悲しくなってきたわ】
小春【そういうのも織り込み済みです。だから貴方がもし買ってきてくれるのなら、貴方の晩ごはんのおかずも一緒に作ってあげますよ?どうせまだ晩御飯作ってさえいないのでしょう?】
なんでわかるの?怖いんだけど。まあでも俺も晩飯作るのめんどくさいから、買ってくるだけでただで飯が食えるなら・・・それはそれでありだな。
稲庭【わかったよ。買ってきてやる】
小春【ありがとうございます】
ううー、まんまと御堂の策略に引っかかってしまった。いや、自らトラップに引っかかりに行ったといってもいい。
そうして俺は俺はスーパーへ行くために外出するのだった。
〇○〇〇
ピンポーン。御堂の家のインターホンを押す。ほどなくして玄関の扉が開く。
「ん。人参買ってきたぞ」
「ありがとうございます。では約束通り晩御飯のおかず作ってあげますから、待っといてください」
「御堂の部屋の中で?」
「そんな簡単に私の家に入れると思ったら大間違いです。殴りますよ?」
「マジすいませんでした」
「まったくもう。とりあえずタッパーにできた料理をいれるので、15分後くらいにまたきてください」
「ちなみに、メニューは?」
「アスパラガスと人参の肉巻きです。ところでアレルギーはありませんよね?」
「ああ、問題ない」
「わかりました。では15分後に」
そうしてとりあえず俺は自宅(真下)に帰ることにした。
○○○○
「あ・・・・タッパーがない・・・・」
それは俺がタッパーを探そうと食器入れを探していた時のこと。
え?そんなことある?俺、新生活始める前に買ったよね?なんでないの。
L〇NEの画面
稲庭【ときに御堂さんや】
そう送るとすぐに既読がつく。
小春【なんですか?】
稲庭【タッパーがないんだけど】
小春【わかりました。では私がおかずをあげるというのはなかったことに】
ちょっと待てや。主さん、俺がどんだけ苦労して人参を手に入れたとおもっている?!(正解はそこまでの苦労がかかっていないでした。こういう反語とみせかけて反語ではないパターンも存在するので、気を付けましょう☆)
稲庭【裁判所に訴えていい?】
小春【なら私は警察に通報します。上の階の人が私の家に無断で入ろうとしたって】
稲庭【マジすいませんでした】
小春【よろしい。ただやはり報酬がないのは可哀そうなので、ここは仕方なく私のタッパーを貸します】
稲庭【いいの?】
小春【はい。ただし、私のタッパーを舐めまわさないでください】
忠告がガチな件について。え?俺そんな変態者として見られてるの?
小春【そろそろ料理ができるので取りに来てください】
と言われたので、スーパーに行ったときと同じ格好のままエレベーターで上に上がるのだった。
「どうぞ。あとタッパーは洗って返してください。まあ返ってきた後にまた自分でも洗いますが」
そう言われて受け取ったアスパラガスと人参の肉巻きは、俺を、白ごはんを先に炊いておけばよかったと後悔させるものであった。
(うまっ。さっすが腹黒美少女だわ・・・・・)