5話 腹黒美少女VS二次元美少女
「へえ稲庭くんはこういうのが好きなんですね」
御堂の目がごみを見るような目でこちらを伺ってくる。
「違う、俺は断じて美少女ゲームが好きなわけではないんだ」
そうすべて、このアプリを入れた中浜が悪い。
「何か言い残すことはありますか?」
そう言って御堂は自分のスマホをポケットから取り出し、俺の画面をカメラ機能で撮る。
「何しているんだ?」
「稲庭くんの弱みを見つけたので、証拠写真として保存しました。社会的に弱いのは私だけじゃありません」
ふふと不敵な笑みを浮かべる御堂。これが傍観者の利己主義か。
「もう弱みがあるのは私だけじゃない!私の秘密がバレれば道連れで貴方の醜態をさらします!逆にあなたの秘密がバレれば私は秘密を暴露されない保証がなくなる。だってそうなったらあなたはもう失うものがなくなるのだから。私たち運命共同体ですね!」
そう言って仲間を見つけたかのように嬉しんでいる。
「理不尽だ……」
「貴方がどうなろうと知ったこっちゃありません。でも約束しましょう。私たちはお互いに裏切らず、平穏な学校生活を送れるように精進する。お互いに足を引っ張らない。どうですか?」
「それ、お前が秘密バレたくないだけなのでは?」
「そうですよ。人間自分のために行動するものです。これに例外はありません」
「じゃあ、お前が演じている完璧美少女はどうなるんだよ。人のために見返りも求めずがんばってさ、その姿からは想像もできないよな」
「それは・・・人にはいろいろな事情があるものです。人のテリトリーに入り込まないでください」
テリトリー?なんかかっけえ。
「すまんつい」
「まったくもう。まあいいです。それより......私は買い物していくので先に帰っていてください」
「え?俺もそうしようとしていたんだが」
冷蔵庫に何もないので至極当然の発想である。
「は?」
腹黒美少女に半ギレされたんだけど。腹黒怖えー。
「んじゃ一緒に?」
「ふざけないでください。警察に通報しますよ?」
「いやなんで俺が警察に通報されなきゃならんのだ?」
「だってキモいから」
「ぐはっ.......!」
※女子の一撃必殺は殺傷力100億。単位はジンバブエドル?なにそれ弱えーなおい。
「冷蔵庫に何もないんだけど?俺を殺す気なの?」
「親はいないんですか?」
「今はな。母親は離婚で家を去り、父親は現在単身赴任。つまり家には親はおらず、俺一人」
「な.....なるほど貴方にも色々とあるんですね…」
「ってことでどこかの腹黒さんに来るなって言われてもいかなきゃなんだよ。おk?」
「Y..YEーS。ま、まあそういう事情があるならいたしかたないですね」
そういうことで俺と腹黒美少女さんの買い物(?)が今幕を開けようとしていた。