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清楚で謙虚だと思ってた完璧美少女が実は腹黒だった件  作者: ばななすくりぷたー
第2章 「そういうことにしておきます」
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38話 腹黒美少女へのご褒美②

そうして御堂が選んだのは有名なレースゲームだった。アイテムがバナナとか出る例のアレである。


「何のキャラクターがおすすめですか?」

「そーだな、火力重視ならこのデカ骨ザウルスかと。でも、コイツは一回止まると戻るまでに時間がかかるから、半分博打みたいなもんだな」


ある程度予想はできていたが、当人は慎重そうに選んでいた。といっても、一度もやったことがないと言うのだから、半分くらいは勘だろう。ちなみにもう半分は俺の入れ知恵だ。


結局、失敗度外視で俺は火力を重視したデカ骨ザウルスのキャラクターを、彼女はその見た目から緑の恐竜のキャラクターを選んだ。べーろんってする例のアレだ。ちなみに俺が入れ知恵した知識によって、彼女は博打をしないように小柄そうなものを選んだのだとか。


程なくして軽快なBGMと共にレースが始まった。


〇〇○

「やった!勝ちましたっ!」


アクションやキャラクターの選定に慣れて数試合。

彼女はレースを1つ重ねるごとにだんだん操作が上手くなっていて、流石は学年1位だと感心する。


(まあ、努力の賜物ではあるが)


彼女が学年1位を取り続けているのはひとえに彼女自身が有する才能でもポテンシャルでもない。彼女は両親に思考を侵されることなく、自分の意志で血の滲むような努力を続けたのだ。


才色兼備と言われているが、実は誰よりも努力家ということだ。


「ん。お疲れさん。じゃあ1試合勝ったということでこれをやろう」


ご褒美をあげる口実ができたところで、冷蔵庫に冷やしていたケーキを御堂の近くにあるローテーブルに持って行く。


彼女は晩御飯を作る際に冷蔵庫の中身を見たはずだが、何も言及していないないということはおそらく気に留めていないということなのだろう。


「ケーキですか……」


目をぱちぱちとさせながらこちらの様子を伺ってくる彼女。そして急にハッと目を見張る。


「まさかこれを私に食べさせた代わりに何かを要求しようと!?」

「違う」

「まさか体を!?」

「違う」


ただ自分の体を抑えるようにする彼女に対して俺は心底呆れたようにため息をつく。


「お前は俺を何だと思っているんだ」

「私のタッパーを舐め回す変態童貞」

「はぁ」


呆れる俺を見て、彼女は満足そうに頷いた。


彼女に激しく罵倒された気がするが、まあいいだろう。俺が彼女から借りたタッパーを舐め回すというのは事実ではないし、億が一、事実であったとしても彼女が俺の部屋に来ているということはある程度信頼してもらっているはず……なので、ご愛嬌で何とかなるはずだ。


「レース勝利おめでとう。よく頑張りました」

「………え?」


まるで彼女は本当にわからないとでも言うかのように口を開けてあんぐりとしていた。


「お前のために買ってきた。他意はない」

「どうして……?私、頑張るようなことひとつも……」


おそらく自己評価が低いからなのだろう、そうやって御堂は自分を卑下している。


よくない癖だ。


「じゃあいつも学年1位キープしてるご褒美ってことでいいからさ?」

「でもそれは当たり前のことで」

「お前なぁ……」


彼女にとっての当たり前でも俺にとっては十分すぎるくらいなのだ。


これでもかというくらいに自分への甘やかしを拒む御堂を横目に、ケーキをお皿に移し替えて、ローテーブルに運ぶ。


「たまには自分を甘やかしてもいいんじゃないか?」

「私、自分を甘やかしてもいいんでしょうか?」

「ああもちろん」

「でも私、やり方がわかりませんよ……」


普段は絶対に自分を甘やかしたりしないのだろう、やり方がわからなくて当然だ。


だから、そんな彼女に対して俺は———。


茶髪のセミロングが微かに揺れる。


そこからほんのりと香る甘いシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。


彼女が俺の行動に気づいたのは、俺が彼女のさらさらな頭を撫でて少し経った後だった。


「何ですか、この手は?」

「いい感じの所に頭があったからな」

「そう、ですか」


少し困惑した表情を浮かべているものの、拒絶されはしなかった。


さらさらな髪に手を滑らせる。絹糸のような感触が心地よい。少し赤の混じった黒髪は光の反射を受けて黒紫色にきらきらとその輝きを放つ。


最初こそ困惑していたものの、彼女の頭を撫でているうちに、いつの間にか目を細めて心地良さそうに微笑を浮かべている。


甘やかされたことでへにゃりと緩みきった口元に、おそらくその恥ずかしさからなのだろう、淡い薔薇色に染めた頬。バクバクとうるさい心臓を飼い慣らそうと必死にその高鳴りを押さえつける。そして自分に甘える彼女の無防備な姿から目を逸らそうとするも、無防備さからか、どこかいつもより幼さを感じてしまい、その姿が魅力的であったため、到底逸らすことなどままならなかった。


「あの……ちょっと……撫ですぎなのですが……」


結局、彼女が自分の表情に気づくことはなかった。


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