37話 腹黒美少女へのご褒美①
「こ、こんばんは………」
御堂は約束の時間通りに来た。
心なしか、少しぎこちない動きをしている。
何はともあれ、ぴったりに来るというのは本当に、ちゃっかりした奴だと思う。
「あぁ、ところで適当に買い出し行ってきたけどそれでよかった?」
「はい。これくらいあれば作れるかと」
「何が食べたいですか?」
「んー、ハンバーグ」
「はいはい」
どこか微笑ましい笑いをする御堂。
「なんか小さな子供を見るような、その目は何?」
「ふふっ、子供っぽくて微笑ましかったので」
「さいで……」
「そうです」
なんか今日は全体的に雰囲気が柔らかいというか、すっきりしているというか……。
昨日、辛い過去を思い出させてしまったのは本当に申し訳なかった。だがその顔なら、自分でうまく消化できたのだろう。
今日も大変美味な夕食を食べた後、俺はケーキをどう出そうか、と考えた。
普通に出してもいいが、それだと少し味気ない。何かのご褒美として渡した方が彼女の場合は喜びそうだし。
「なぁ、御堂。何かしたいこととかある?」
「何ですか、急に?気持ち悪いですよ」
「ありがとう。んで?」
空気を吸うように罵倒されるけど、なんかもう慣れてしまった。少し悲しい気もするが、まあなんでもいいだろう。
「そうですね、特にはありませんが。突然どうして?」
「まあ何と言うか気まぐれだ」
皿洗いをする俺に「気まぐれ、ですか」と目をぱちぱちさせながら訊いてくる彼女。強いて言うなら、ということで俺の部屋を見渡す。
そこで彼女の目に引っかかったのはテレビ下のゲーム機だった。
ほこりが被るほど、というわけではないが親に家賃もろもろを払ってもらっている身としては学力を下げるわけにはいかなかった代物の一つだ。
「これって、ゲーム機、ですよね?」
「ああ。って言ってもあんまりやらないけど」
「そうなんですか?以前私が人質にしたスマホゲーム、あれは何だったのでしょう?」
「あれは友達が勝手に入れたやーつ。俺は無関係だ」
「そうですか」
「ってことでその人質、解放してもら———」
「嫌です。私だって人質にされてるものがあるのですから」
「さいで……」
何でだろう。凄く理不尽な取引なのに、相手が御堂だからと言う理由で納得してしまった自分がいる。まあ、俺のお心が寛大だということにしておくか。
「私、ゲームとかやったことないのですが。楽しいのですか?」
「それは御堂次第だな」
まあ、何はともあれやってみる他はない、か。
皿洗いをささっと済ませて御堂の隣に座る。的確な距離をとっているためか、避けられはしなかった。
「じゃあやる、か?」
「は、はい!」
そうして俺たちはコントローラを握るのだった。




