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35話『運命共同体だから』

「こんな姿を稲庭君に見られるなんて屈辱です」


泣き止んだ御堂は開口一番にそう言った。


「俺たちは運命共同体だから、気にしなくていいだろ」

「それもそうなんですかね……」


俺と御堂の間に少しの沈黙が続く。


「ところで今日はクリスマスだな」

「そうですね。だから何だって話なんですけど。私、あんまりクリスマスが好きじゃないんですよ。知ってましたか?」

「ああ。さっきの理由を聞いたらな、嫌でも、な」

「大体はご察しの通りです。ものごころついたときにまだ純粋だった私は世界にはサンタさんがいるんだと思い込んでいました。毎年毎年、朝起きたらすぐにプレゼントが来ていないかを確認していました。あるわけないのにね。それから何年かして私はやっとどうしてプレゼントが枕元に毎年置かれないのかを悟りました。自分は愚かだと思いましたよ。でもそれと同時にやっぱり私は親に愛されていないだなと。心がぽっかりと開いてしまったような、底知れぬ寂しさが私を襲いました。それからクリスマスは私が愛されていないことを象徴する日となったんです」


俺は立ち上がり、バッグから用意していたものを取り出す。ついでに、それを座っている御堂の頭に乗っける。


「これは………?」


頭に乗っかかっていたものを手に取り、不思議なものを見つめるような顔をする。


「開けてみろ」


そう言って俺が座りなおす間に、彼女はお店でしてもらった可愛いらしいラッピングを丁寧にはがす。


「これって……」

「ほら、俺からのクリスマスプレゼントだ。やるよ」

「……………ぅ……ぁ……………」


また御堂が泣きそうな顔になる。クリスマスプレゼント、ずっと欲しかったんだよな。ずっと我慢してたんだよな。


「もう泣きすぎだよ………」


俺は泣き虫な御堂を見て苦笑する。


「だって………だって………!」

「まあ、マフラーだし、色とかが気に入らなかったら捨ててくれていいから」

「そんなことしませんっ。大切にしますから!」


そうして、彼女は用意したマフラーを大事そうに胸に抱えて、先ほどの泣き顔とは一転し、穏やかに純粋無垢な笑みを浮かべる。喜びとちょっとした恥ずかしさで頬を薄紅色にさせて緩んだ口元を無防備にさらけ出した姿を直視しないことなんて到底できなかった。


(………可愛いすぎる)


「どうしたんですか、そんな呆けた顔をして。意識でも飛んでいましたか」

「…………え?あー、いや何でもない」

「稲庭君………我儘言っていいですか」

「姫様、仰せのままに」

「それ言ってて恥ずかしくならないんですか」

「指摘するなよ。はずかしいだろ」

「じゃあ言わなければいいじゃないですか・・・マフラー、巻いてくれませんか」

「俺が………?」

「はい……」

「それ、指輪とかブレスレットとかでするやつじゃないの?」


そう言われて、御堂は顔を薔薇色に紅潮させる。


「恥ずかしいので言わないでくださいっ!いいから早くっ」

「恥ずかしいなら言わなければいいじゃないか………」


そうして彼女の首をきつく締めないように、極力優しい手つきで丁寧に巻く。巻いている途中で、瑞々しい唇に目が行ってしまうが、不埒なことを頭の中から抹消し、目の前のことに集中する。


「よしできた………」

「どう、ですか?」

「似合ってるよ……その……可愛い」

「かわっ……!?」


羞恥心を押し殺して、そんな言葉を囁くと、御堂が耳までかぁーっと赤くなるのが分かった。


「ありがとう、ございます……」

「あぁ」


やはり押し寄せてくる羞恥心から逃げることもできず、ぎこちない返事になってしまったのは仕方がなかった。







1章完結です!

ここまでご覧になった方、ありがとうございました。

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