33話 イブにしたこと②
父親の突撃イベントがあったものの、無事に終えて、時刻は午後4時30分。御堂からは「夕食を7時半くらいから作り始めるので、そこあたりには来てください」とメッセージが飛ばされていた。
あと3時間暇な時間がある。人によれば多いという人もいれば、逆に少ないという人もいるだろう。
学校の課題ノルマは順調で、午前中に終わらせていた。読みたい漫画も今はないし、見たいアニメも生憎なかった。
「どうしたものかな。あっ、あれが、あれがあるのか・・・」
以前からやりたかったことが頭に思い浮かび、俺はコートを羽織って、外出することにしたのだった。
〇〇〇〇
「どれかいいんだろ」
赤色のマフラー、黄色いマフラー、緑色のマフラー。
俺は今服屋にいる。御堂が以前通りかかったときに、諦めたような顔を見せたきっかけとなった服屋である。
俺にはあの時の御堂がクリスマスという言葉に冷たい過去を思い出したような気がした。
もしかすると俺の勘違いかも知れない。
ただ彼女に何もしてあげられない自分に対して嫌気がさしただけだ。
・・・だからこれはただの自己満足だ。俺が彼女の嬉しそうな顔を見れたなら俺が満足する。ただそれだけなのだ。
流石にどんなものが欲しいのか、と聞くのは憚られた。一応サプライズだし。喜ぶまで行かなくとも驚くぐらいはしてもらわないだし。
・・・それにしてもどうしたものかな。
御堂に似合いそうなマフラーが見つからない。赤の混じったセミロングの黒髪の女の子に似合うマフラー。ただ御堂がどんなマフラーだって似合わないと言っているのではなく、素材が良すぎてそれを引き立てるようなマフラーを探すのが難しいのである。つまり何でも似合うが故に全て正解のように思えて、だからこそ全て不正解に見えてしまう。
くっ・・・!美少女ゆえの弊害ッ!
「んー・・・んー・・・」
正解がわからず、俺は唸りつづける。そんな俺を他の来店者や店員さんが不審に観察するが、気にしなかった。
「あれー、稲庭くんじゃん」
そんなときに現れたのは青色のポニーテールを上下にぽんぽん揺らした少女だった。
〇〇〇〇
「なるほどね、ご近所さんにクリスマスプレゼントを渡そうとしてるわけかぁー」
上の階の住人をご近所さんというのか、という問題はさておき。
「そういうことだ。何気にお裾分けとかも貰ったりしてるし」
毎晩ごはんを作ってくれるという情報は流石に伏せておいた。それただの通い妻的存在だし。
それはそうと、このクリスマスプレゼントは日ごろの感謝を表すためのものでもあるため、本人が喜ぶものがよい。
「そのご近所さんにいつもの感謝をこめてってこと?」
「そういうことだ。もしお前がそのご近所さんの立場なら、どんなものだったら喜ぶんだ?」
「そうだねえ。稲庭君がいま服屋にいるし、衣類関係でいくと、やっぱり手袋とかマフラーは無難だよね。すでに持っていたとしても、その日の気分とかで変えられてお洒落だし」
「やっぱりそうだよなあ」
「じゃあ、色とかで困ってるの?」
「そんなところだ。実際その人は結構なんでも似あうから、正直どんな色にするかとかでめっちゃ迷ってる」
「そっかあ。なんか感謝を表す色は緑って聞いたことあるけど。って部外者の私がなんか言うのはよくないよね。ごめんごめん」
「いやむしろ手伝ってくれるとありがたい」
そうして2,30分ほど悩んでから選び、クリスマスプレゼント選びに手伝ってくれた綾波に軽く感謝を伝え、帰宅するのだった。




