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31話 欲しいものは?

御堂が風邪から復帰して約数日。


「もうすぐクリスマスだな」


寒さが本格的にやってきた12月上旬、俺はいつものように御堂と買い物を終えて、帰路までの道でふとつぶやく。最初は御堂に買い物を付き合わされている感じしかなかったのに、俺の分まで晩飯を作ってくれるようになってからというもの、むしろ買い物で重たいものを持たせているという罪悪感と申し訳なさが湧いてくる。


ちなみに一応、いつも御堂が待とうとする重たい買い物袋を奪おうとするも、「私が買った物なので、自分で持ちます」と譲らないのである。


このやりとりも今では慣れた物である。


「クリスマスですか」

「あんまり楽しみにしてなさそうだな」

「まあ、まんまそうなので。クリスマスって何をするんですか」

「そうだな。俺の家は、サンタクロースからの贈呈品受け取って、そんで家族とクリスマスパーティーで豪華なもの食べて...まあ、あとは適当にゲームでもして、ダラダラしてたかな。そっちは?」


そう聞くと、御堂は顔を一瞬曇らせたような、寂しそうな表情を浮かべた後に、それをごまかすように笑みを浮かべる。


「べつに大したことは何も...」

「あっ・・・その、ごめん・・」


やらかしてしまった、と思うも後の祭りだ。御堂が他とは異なる、異質な家庭環境の中で育ってきたのは、すこし前でほぼ他人だった俺にすらわかってしまう。だというのに、俺はそんなことも考慮せずに、御堂の過去の話をぶり返そうとしてしまった。


「いいですよ、私は貴方になにも言っていないので、知らなくて当然なんですよ」


そう言われて、心がずきずきと痛む。


俺は無神経だ。この雰囲気はまずいと思ってほかの質問を繰り出す。


「そういえば、なにか欲しいものはあるか?」


そろそろクリスマスだし、日ごろの感謝も込めて、クリスマスプレゼントでも・・・と思うのは無粋な考えであろうか。


「ん~、冷蔵庫のバターがそろそろ切れそうなので、バターを買っておきたいですね」

「そうじゃなくて。御堂がここ最近欲しいものだよ」


明かりのついた服屋の前で、立ち止まって考えるそぶりを見せる。一瞬、服屋に飾られているマネキンの服装を見ていたが、すぐにそこから視線を逸らす。


「いや、いいですよ。特にほしいものはありません」

「そうか」


俺は御堂がマネキンから目をそらした時の、自分はそんな経験をこれまでもこれからもするはずない、なんて考えるような、あきらめたような顔を見逃さなかった。

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