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30話 腹黒美少女の看病

「食欲はあるのか?薬飲むなら、食後のほうがいいと思うんだけど」


ぐぅー


ちょうどそのタイミングで御堂から虫の声がする。御堂の頬が少し赤くなる。多分恥ずかしがってるんだろなあ。俺はそれに苦笑するしかなかった。


「仕方ないでしょう。朝から動けなくて何も食べられなかったのですから」


ぷんすかぷんすか、と口を尖らせて、不満を口にする。


「俺が学校行く前に言ってくれたらなんか適当に買ってたのに」

「う・・・まあそれは申し訳ないというか・・・稲庭君の朝の大切な時間を取るわけにはいかないというか・・・」


なんか言い訳のように聞こえるし、目がインド洋横断できるくらい、泳いでるんだけど。


「もしかして朝苦手なタイプ………?」

「うぐっ」


どうやら図星だったようだ。

こうかはばつぐんだ


「せっかく完璧を演じてきたのに、稲庭君の前だと弱みを握られてばっかりで・・・なんか悔しいです」

「人には向き不向きがあるだろ・・・って話は逸れたが、おかゆ、ふわとろ卵味か、梅味があるけど、どっちにする?」

「梅味でお願いします……」

「わかった。電子レンジ、使わせてもらうぞ」

「はい」


御堂のキッチンはむしろ生活感が漂わないほどに小ぎれいに片付いていた。俺の家のキッチンとは大違いだと素直に尊敬する。ちなみに俺の家のキッチンは前までは調味料やお皿、鍋などがごちゃごちゃしており、お世辞にも綺麗とはいいがたかったが。御堂が晩御飯を作りに来てくれるようになってからは定期的に片づけている。


だれかさんに怒られないようにするためでもあるが。


何はともあれ、極論使えたらいいじゃないかと思い、片づけようという気にはなれなかった以前の自分に誇りたくなった。


「ほら、おかゆだぞ。食べれるか?」


パックのおかゆを電子レンジに入れて3分。やけどしないように注意してお皿に入れかえ、和室にあった布団の近くに設置されていたローテーブルに置く。彼女の家はどうやら和室に布団を敷いているらしい。


ちなみに俺たちの住んでいるマンションは2LDKで、洋室と和室それぞれ一つずつある。高校生でかつ一人暮らしをしている俺にとっては一部屋あれば十分であり、本当に親には裕福な暮らしをさせてもらっている、と感謝している。むしろ使いきれず、申し訳ない、といった感じなのだが。


「ありがとう、ございます」


布団から起き上がってローテーブルに向かう。


「じゃあいただきます………」

「ん」


そうしてちょびちょびとお粥をほおばる御堂。一口一口が小さく、それがまた子供っぽいように、ハムスターみたいな愛玩動物のように、庇護欲を連想させる。


「何ですか、そんなじろじろ生暖かい目で見て。あげませんよ、これはぜーーったい私のものなんですからね」


俺の視線に気づいた彼女はおかゆの領有権で争おうとするも、残念ながら俺はおかゆが欲しいわけじゃないので遠慮しておいた。


「いや、なんか微笑ましいというか……いつもよりも表情が柔らかいというか……」

「今日の私が子供っぽいと?いつも可愛げがなくて悪かったですねっ」

「ごめんって。いつもお前はクールで大人びていて、大人らしい美しさを感じるけど、今日はあどけなくてそういう綺麗さもあるんだと思っただけだ」

「なッ—――?!」


一瞬にして、俺の言葉に狼狽し、顔を茹だこのように赤くする御堂。その照れ隠しのようにお粥を飲むようにして一気に頬張った。


ごくりっ…………


「余計なお世話です!」


お粥が喉を通った音がすると、いつもの御堂に戻っていて、表情変化の素早さに苦笑するしかない伊吹だった。



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