3話 腹黒美少女の監視
ここ数日俺は頭を悩ませている。
その原因は……言うまでもなく何でも権の使い道だ。
この権利はいわば運良く天から降ってきたもの。だから絶対使うべきか?と訊かれればノーなのだが、まあ俺男子高校生。そんな欲のかけらもない人間ではございません。
「なあ中浜、お前もし美少女に何でもしていい権利あげるって言われたらどうする?」
昼休憩に購買でパンを買ってきた中浜に尋ねてみる。
「は?突然何言ってんだよ。ま、でもそうだな、なんでもいいのなら、半日だけレンタル彼女してもらうわ」
欲に忠実だなぁ。
「伊吹こそどうなんだよ?」
「俺は……まだ決まってない」
「決まってない?これって仮定の話だよな」
「あ、、ああー、うん」
「そうだよな」
あっぶねぇ!
その瞬間何処からか殺意の混じった視線を感じた。
「ヒッ……」
その正体は女神様こと御堂小春であった。俺を視界の中心に捉えている。微笑を浮かべ、優しさが溢れているようだ。が、俺には分かる!コイツいまドス黒いこと考えてやがる!
(稲庭くん、わかっていますよね)
その微笑には凍りつくような笑みがあった。まあ全部俺の妄想な訳だけど。
さすがにこれ以上この話題をするのは自分の首を閉めることになりかねない。話題を変えよう。
「そ、そう言えばさ、お前が入れた美少女ゲーム、触ってないなぁ」
「消してはいないんだな」
「消してないんじゃなくて、消せないんだよ。誰かさんのせいで!」
100%コイツのせいで消せない。これは事実である。
俺がこのアプリを消そうとしたら、中浜が『消すなぁ。消したらお前のLIN○のアカウント、俺のスマホから削除するぞ!』と脅されているのである。ぐぬぬ、無念。
〇〇〇
「あの、ちょっといいですか?」
そう声をかけられたのは御堂に凍りついた視線を向けられたのと同日の放課後。
俺は今日も今日とて太陽の実験データを採取していた。今日の活動はこれくらいと思い、昇降口に差し掛かったあたりで御堂に声をかけられたわけだが。
「悪いな。俺はいまから用事があってだな・・・」
「帰る準備万端じゃないですか」
「・・・・・」
そのまま無言で押し通そうとするも、、、、
「ほら私、完璧美少女と帰れる下校イベント達成できますよ!そんな貴重なチャンスを逃しちゃっていいのですか?」
「いや言い方……」
いまは放課後まっ最中。生徒は帰る者は帰り、部活に入っている者は部活をやっている。つまり、一番人が居ない時間帯といえる。
だから御堂は素の方に戻っているのだが。
「いいのか?ここでその性格出しちゃって」
「だから早く場所を移そうとしているわけじゃないですか。ということで早く靴に履き替えちゃってくださいね」
彼女の顔には笑みが浮かべられていたものの、ハヤクシロと言われているような気がした。