27話 御堂小春は普通の———
「あの、これ・・・・」
材料を買いに行こうと、御堂と合流して少し遅めにスーパーに足を入れる。
御堂が目をキラキラとして眺めていたのは一匹丸ごとの蛸であった。その値段、なんと半額。思考回路が半ば主婦のようになっている御堂にとっては目につく商品だったのだろう。
「一匹まるごとって、食べきれそうな気がしないのだが。というか、調理できるのか?タコなんて日常的に調理するもんじゃなさそうなんだが」
「ふふふ、私を舐めないでください。私を何だと思ってるんですか?」
「料理が上手な腹黒っぺちゃん」
「それはそうですけど・・・物は言いようですね・・」
呆れたような視線を送ってくる御堂。だって本当なんだもん、って痛い痛い!足踏むなぁ!そういうとこ!
「んで、どうするんだ?一応、たこ焼き機がうちにある。お前が持ってないなら今日は俺んちでたこ焼きパーティーになりそうだが、大丈夫そうか?」
御堂がたこ焼きパーティーという単語に目を輝かせている。何気に楽しみなのかもしれない。
「はい。というか、私の家で必ずしもご飯を食べなきゃいけないわけではないですし」
「まあ、そりゃそうだわな」
特段、俺の家が散らかってるわけでもなく、と思ったけど、キッチンがごちゃごちゃなんだった。片づけとかないとなあ。
あれ?半額のタコ・・・消費期限が近いタコ・・・今日行われるたこ焼きパーティー・・・・
おかたずけ不可能では?
「時に御堂さんや、俺のキッチン、お世辞にもきれいとはいいがたいんだが・・・大丈夫そ?」
「はああああ・・・貴方という人間は・・・」
彼女から、深くため息をつく音が聞こえる。
(ねえねえ、あの子たち、高校生カップルかしら?すごく仲睦まじそうだけれど)
周りからおばさんたちの会話がかすかに聞こえてくる。
周りから見れば仲良く良さそうに見えるのだから、不思議なものだ。
(そうねえ、同棲してるみたいだけれど)
(あらあら、最近の子ったら、イチャイチャでうらやましいわねぇ)
周囲の目があり、反応に困って仕方がなかった。
「なあ、俺たち、傍から見たら付き合ってるように見えるのか?」
御堂も同じくおばさんたちの会話が聞こえていたのか、ほんのりかすかに頬を赤らめていた。たとえ、気がなくても、恥ずかしいのだろう。
と思ったのだが、気を取り直したようだ。
いつもの表情に戻る。
「・・・・まあ、男女が一緒に買い物でもしていればそうなんじゃないですか?もしかして、周りからはこのお可愛いわ・た・し、と交際しているように見えて、嬉しいんですか?気持ち悪いですよ」
「なんたる被害妄想・・・」
(なんつうか、普通の女の子、だよなぁ)
学校での御堂は、勉強もできて、スポーツもできて、みんなの、クールな表情をしている模範生だ。
だから、こんなあざとい顔は学校では見れない。でも、今はなんというか、ふざけたり、気に障ったことはやり返してくる。
まあ、素が出ているような感じだ。
「とにかく、蛸買って早く帰ろうぜ」
「そうですね」
ちなみに、御堂とのたこ焼きパーティーを楽しみにしている自分が心のなかにいた。




