26話 腹黒美少女は悶える
「うまっ」
口にしたマーボーナスがこんなにも美味しいとは思ってなかった。
「それはよかったです」
いつも俺が何かをいうと不機嫌になる腹黒美少女こと御堂であるが、純粋に自分の料理が美味しいと褒められるのは嬉しいらしい。口元が緩んでいる。
「それにしても、よく俺を自分の部屋に連れ込ん———」
「言い方ッ!」
「いてっ」
そうして机の下で足を踏まれる。
「言い方はともかく・・・言いたいことはわかりますよ」
「俺がお前を襲ったりするなんて考えなかったのか」
「稲庭くんはそんな度胸ないでしょう?」
そうして御堂は挑戦的な目でこちらを伺う。
「まあ襲う気はないし、というかそんなことしたら俺の社会的信用が底に沈むからなぁ」
学園一の美少女と言われているこの御堂を襲おうとした、なんて噂が出ればそれの真偽に関わらず、まず俺は学校に足を踏み入れるのさえできなくなる。
・・・考えただけでも恐ろしい。
(というか稲庭くんは優しいですからそんなことしないでしょう)
御堂がボソボソとなにかを呟いていたが、小声だったので聞き取れなかった。
「なんか言った?」
「なんでもっ!!」
「そうか」
少しの間、沈黙が訪れる。ただ、その沈黙は居心地の悪いような、気まずいものではなく、むしろ、なぜだか心地の良いような、そんな時間だった。
そんな沈黙を先に破ったのは御堂だった。
「言っておきますが、私のご飯が食べられるのはあと6回ですからね。すごぉーく!!貴重なので、一回一回味を噛み締めてくださいねっ」
とのこと。
「言われなくても噛み締めてるよ。お前の飯は本当にうまいんだよ。冗談抜きで。これがあと6回しか食べられないのは正直残念だ」
御堂は顔を俯かせて何やら顔をプルプルと震わせていた。耳まで真っ赤だった。
「ッ!!もうっ!そう言うのはさらっと言うことじゃないですよっ」
自分の料理の力量が褒められてすごく嬉しいのだろう。全身むず痒そうにしている。
「可愛い……」
思わずこぼれてしまった言葉は彼女に聞こえてしまっていたようで。
「かわっ!?なななっ!!何なんですかっ。さっきから人のことを好き勝手に言って!」
俯きながら喋っていたので、表情がうまく読み取れかったが、反論するためにこちらを向いたときには恥ずかしそうに顔を紅潮させていた。
俺に対して反論しているようだったが、顔は満更でも無さそうだった。
………褒められて嬉しいんだろうな
素直にそう言えばいいのに。
結局それから、御堂がいつものクールで冷静な女の子に戻るまでに少しの時間がかかったのは言うまでもない。




