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25話 理由

話し合いの結果、伊吹はお皿洗いに徹することとなった。というのも、伊吹が料理ができず、ただおいしい料理を作ってもらうだけなのも申し訳ないと思ったからだ。御堂はどちらかというと伊吹がお皿を割ってしまうのではないかという懸念が大きかったようだが。


「そういえば、よく俺を家に上げようと思ったな。俺に下心があったらどうするんだ?お前、もう少し身の危険を考えたほうがよかったんじゃないか?」


女子高校生が同年代の男子を引き連れるなんて、世間一般からすれば誘ってるのかと思われてもおかしくない。まあ相手が御堂だから、自身に対する行為が薄い、というか、そんな考えは1ミリもない、微塵もない、欠片もない、と思うのだが。


「私だって気を付けてますよ。だって私、可愛いんですから・・・それに体型だって、ほら。男性が好みそうな体型だと思いませんか」


出たよ、腹黒っぺちゃんの自信たっぷりな表情。その自信、分けてほしい。料理だけじゃなくて自信のおすそ分けとかもしてくれないかな。


どうやら自分の体型には自信があるようだ。ま、そりゃそうか。学園トップで可愛いなんて言われ続けたら、嫌でも気づくよな・・・


実際、御堂は華奢な体つきをしている割には、出るとこはしっかり出ているのだ。


「肯定しろと?」


それにはうなずくしかないのだが、実際に本人に伝えるのは、自分の好みを晒しているようで、男としてのプライドが許さなかったらしい。


「まあ貴方がどんな女性の好みをしているかはさておき、私の勘は当たらずとも遠からず、といった感じだと思います。たまに学校で男子たちがそう言う話をするのも耳に入っていますし」


腹黒様おそろしぃ。


「で、まあ話はそれたが、どうして好きでもない異性を家に上げようと思ったんだ?作業用BGMとして、教えてくれ」


現在、俺は皿洗い中で、洗うだけというのはどうにも変わりばえのない作業である。本当に御堂の料理はおいしく、そのお返しとして俺が皿洗いをしているのだが、感謝を感じているとはいえ、皿洗いは単調な作業なのだ。


「そうですね・・・稲庭君のことが好き・・・だから・・・」


ソファにいたはずの彼女は今や俺の後ろにいて、妖艶な声色で、悪戯っぽく俺の耳に囁いた。


一瞬勘違いしそうになるも、彼女が腹黒であることを考えると、答えはすぐに導かれる。


罠、である。


「あのなあ、そんなの男子に言わないほうがいいぞ」

「どうしてですか。稲庭君が嫉妬してしまうからですか?」


首をコテンと傾げる御堂。本当はその答えがわかってるから、悪趣味なのだ。


「ちげーよっ!」

「ふふ、わかってますよ。こんなの他の男子生徒にすれば、いちころですもんね。趣旨を理解してくれる貴方にしかやったことないし、これからもやるつもりはないですよ」


小悪魔め。


「はあ、お前ってほんとそういうとこだよなぁ。んで、本当の理由は?焦らさなくていいから教えてくれ」

「そうですね」


御堂はあごの手を当てて、思い出すように、記憶を絞るように、考える。


「稲庭君、何回か人助けしてませんか?」


過去が回想される。


「私が覚えてるだけでも2件ありますよ」

「そんでその2件っていうのは?」

「1件はある年配の男性を助けてくれ・・・助けたことです。彼は足腰が弱そうなのにも関わらず重い荷物を持っていたようですが、周りの人は見て見ぬふりをしていましたよ。でも貴方は違った。優しく声をかけて荷物を持った」


「それだけのことだ。それ以上でもそれ以下でもない。打算があったかもしれない。偽善だったかもしれない。そうは思わないのか?」


俺の行動が偽善であり、または打算があったから、そう思い込んでいてほしかった。


「いいえ。貴方にはただそれだけという感覚だったかもしれない。打算だったかもしれない。けれど、私にはそうではありません。たとえそれが偽善であったとしても、貴方は他人がしなかった、できなかったことを成し遂げた。その結果に貴方の意思は関係ない」


「・・・そうか。んで、もう一つは?」


「救急搬送された少女を送り届けたことです。周りから見ていましたが、貴方の、倒れた少女に対する対応は完璧だった。おそらく知らない少女だったのでしょうが。あろうことか、稲庭君は救急隊員の方に自分もつれていくように懇願していたんですよ。少女の身を案じたように、必死に必死に」


「ーーーその女の子が可愛かったからだ」


「嘘ですね。あの時のあなたの表情は、連れて行かれなければまるで何かが潰れてしまうような顔でした。そんな人が軽率な理由で同伴を哀訴嘆願するはずがない。以上の二つが私が貴方を信用する理由です・・・・あの、どうしてそんなに人助けをするのか、そして、それを隠そうとするのか、教えてもらえませんか?」


「俺が他人を助けているのは・・・すまないが言えない・・・」


他人に知られないようにひそかに人助けするのってカッコいいじゃん、なんて軽はずみな理由を言えるはずがなかった。








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