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24話 腹黒っぺちゃんと晩飯

今、目の前にはエプロンをつけた少女がいる。それも学園では清楚可憐ならしい。


「共同作業・・・?」

「そういうことです。稲庭君は確かある程度は料理ができましたよね」

「ある程度とは失礼な・・・まああってるけど。週に1,2回は自炊するから、最低限はできると思うが。あまり期待はするなよ?」

「はい、私に任せてください」


時々腹黒っぺちゃん、すごく自信満々。その自身分けて欲しい。


「そんで、何を作るの?」

「そうですね、冷蔵庫にあるのは大根、豚肉、生姜、レタス、トマトくらいですか・・・生姜炒めとかでいいでしょう」


なんか冷蔵庫から大量のマシュマロストックが覗き込んでいたような……


まぁそれはさておき。


俺たちは御堂が考えたレシピに従って夕食を作り始めるのだが・・



「いてっ!」


大根おろしを作ろうとして、大根をずりずりしていたら、俺の指がずりずりされてしまった。擦られた中指からはかすかに出血していた。


「ここまで料理ができないとは・・・稲庭君はそこのソファーでゆっくりしていてください。料理の邪魔になってしまいます」


フライパンで生姜焼きを作っていた御堂があきれた目でこちらに振り向く。そして「はいどうぞ」と絆創膏を渡されたと同時に戦力外通告を受けたのだった。


ただくつろげと言われるのはこちらとしても申し訳ないので、リビングにあった運よくあった二人用のテーブルを除菌し、きれいにしておく。もしかしたら、来客用のものかもしれない。


「はあ」


もっと料理スキルが高ければ役に立てるのになと嘆かずにはいられない伊吹だった。


しばらくすると伊吹の鼻腔をくすぐるいい香りがリビング中に広がってくる。


白米

生姜焼き

大根おろし

レタスとトマトの野菜サラダ

オニオンスープ

きゅうりの漬物


出来上がった品がテーブルに運ばれていった。一汁三菜がしっかり揃っており、どこからどう見てもバランスの取れた食事だった。


「うまそう・・・」


ついよだれが出そうだった。


「食べていい?はやく食べていい?」


まるで躾された飼い犬のように、飼い主の「よし」の合図を待つ。


「どうぞ」


御堂は俺の感想を先に聞きたいらしく、自分のには手をまだ付けないらしかった。


「いただきますっ!」


戦火が切られたように、手を合わせてから、オニオンスープを口にする。


すると柔らかい玉ねぎの甘みとコクのある風味が口全体に広がる。ほっとする味だ。


「美味い・・・美味すぎる。柔らかい玉ねぎが引き出すくちどけの良い食感に、深みのあるスープ・・・人生で一番好きなオニオンスープかもしれない」


率直な感想を伝えると・・・・御堂が珍しくぼけーっと狼狽していた。


「どうしたんだ?俺なんか気に障るようなこと言った?」

「え・・・!?あっ、私あんまり自分の作った料理を褒められたことがなくて、その、とてもおいしそうに食べているので、つい嬉しくって!・・・そんなに美味しいですか?」

「ああ、めちゃくちゃうまい。少なくともレストランとかで食べるスープの数倍は美味しい。スープはこれ、コンソメだけ・・・じゃないよな」

「・・・驚きました。稲庭君、体型はどちらかというとひょろがりなのに、舌は肥えているのですね。でもスープの味は企業秘密です」


そこで俺はとある疑問に気が付く。


「でも、冷蔵庫に玉ねぎはなかったのにどうしてだ?」

「作り置きしているんですよ。毎食の足しに、と思って」


なるほど、その手があったか。毎食こんな美味しいスープが飲めるなんて羨ましい。


「いいなあ・・・」


無意識に憧憬の言葉が漏れる。きっと毎朝寒い中で飲む、御堂のオニオンスープは、さぞほっとするんだろうなぁ・・・


「じゃあ・・・おすそ分け・・しましょうか・・・?」


御堂から紡がれた言葉に衝撃と嬉しさを覚える。


「え?!いいのか!?」

「はい、そこまで言うなら・・・あげないことも、ないですよ」

「しゃあああああああああああああっ!」

「ふふ。そんなことで喜ぶ人、初めて見ましたよ」


御堂からは子供を見つめるような、生暖かい視線を感じた。


「んだよ、微笑ましそうに見つめて」

「いえ・・・そんな大げさなことではしゃぐ人、初めてですから」

「自分の料理を卑下しないでくれ・・・大げさじゃないんだよ・・・お前の料理を食べれるのは本当に嬉しいし、将来、お前のご飯を毎食食べられる人はすごく幸せなんだと、食べていて思った。これはお世辞とかじゃなくてありのままの本心だ。素直に受け取ってくれると嬉しいのだが・・・」


その言葉を聞いて、彼女は照れ隠しをするように俯く。


「そういうとこですよ・・・!」


表情は俯いているのでわからないが、耳まで薔薇色に染まっているところを見るに、おそらく顔中真っ赤なのだろう。


(すこし褒めすぎたか・・・?)


まあそう思っているのは本心なのだ。それにしても、どこかに置いてけぼりだったのか、羞恥心が今になってこみあげてくる。


(というか『君のご飯を毎食食べられる人はすごく幸せなんだよ』ってプロポーズの時のセリフみたい・・・あぁッ!恥ずかしぃ・・・)


顔が沸々と熱くなっていくのが自分でもわかる。俺は照れ隠しをするように、残りの夕食を食べるのだった。




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