2話 腹黒美少女の関係者へと
「最低です!あんなことを言うなんて!あの人なんて大嫌い。この世界から消し去りたい!」
そこには屋上の柵を軽く蹴りながらそんなことを言う女神様がいた。
なんか俺、場違いだな。よし、何も見なかったことにして扉を閉めて、と。
「待ってください稲庭くん」
うっ。これ絶対関わったらダメなやつじゃん。最終的には闇で黒な組織に抹殺されるやつだろ?
なおこれに無視すれば女神様無視問題として学校中に俺の名前が知れ渡ってしまうかもしれない模様。
………仕方ない、か。
「その、、、ごめん。誰かいるとは思わなくて、、」
『私こそごめんなさい。私はなんてことを言ってしまったんだろう………(ぐしゅん)』
(俺の妄想)
こんな感じのが完璧美少女こと御堂から返ってくるだろう。なにせ女神だし。
「本当です!なんで貴方がここにいるんですか?誰も来ないと思ってここで一人愚痴ってたのに!ホントに最悪です!」
あれ?話と違う。
てか女神様言葉キッツ!俺の心臓壊れちゃうんだけど。
普通の人と話している感覚だったからあまり気づかなかったけど、それとなく今の一瞬で女神様の印象ぶっ壊れてしまった。
まあそりゃ人だしな。本当に愚痴を言ったりしない人なんて、いないほうが変だよな。
「まあ見られたものは仕方ないです」
勝手に話は進んでいく。
「稲庭くん。私と取引しませんか?」
ん?何もなければ俺は今頃太陽の実験データとって感動しているはずなのに。なぜこんなことに・・・
まあ話くらいは聞いてやろう。というかこれって、女神様が腹黒だったのが漏洩しないためのものだよな。
でもね、そもそも俺漏洩させる気ないの。俺にメリットとかないし。多分俺が誰かに言いふらしても、皆あの女神さまがそんなことするはずない、って信じてくれないだろうし。
え?俺、帰っていい?
「取引ってのは?というか誰にも言わないし、なかったことにするからさ、もういい?」
「駄目です!」
そう言ってスカートのポケットからスマホを取り出し、何やら弄り、またポケットへと戻す御堂。
「稲庭くん、あなたはいま私が行っていた言動、行動すべて記憶の彼方に焼却してください」
「それだと不公平じゃないか?」
それは取引ではなく、ただのお願いだ。俺は誰かに言いふらすつもりはないが、取引ってなら公平なものを望む。
「そう。これでは不公平ですよね。だから私からはとある権利を貴方に与えます」
「とある、権利・・・?」
「私が一つだけ貴方のいうことを聞く権利です」
「なんでもっ?!」
その言葉を聞いた瞬間、御堂の目がごみを見るような目に変わる。
「きもいです。
もちろん、『死んでください』とか『エッチさせてください』なんていう、救いようのない変態が言うような、ゴミみたいなお願いは耳すら傾けません。論外です。しかしどうですか?美少女になんでも一つお願いできるんですよ?取引としては、あるいは、貴方にとっては、価値があるんじゃないですか?」
「......わかった…………それでいい」
「もし、誰かに言ったりして約束を破れば?」
「退学でもなんでもしてやるよ」
「言いましたからね!」
そう言って先ほどポケットにしまったスマホを再度取り出し、俺に見せてくる御堂。腹黒女神様は不敵な笑みを浮かべていた。その画面にはボイスレコーダーのアプリが表示されている。
「録音.....?」
「ええ。貴方が取引を破れば、私はこれをもって戦います」
戦う・・・・?いったい誰と?
とは思ったものの、ここで突っ込みを入れたらこのシリアスな雰囲気が台無しだ。
「なんでも権ですが、何に使いますか?」
何でも権って。可愛いかよ。とりあえず今のところ何もないので、保留にしておく。
「んんー、あー、保留でいいか?」
「わかりました。ではそういうことで。これからよろしくお願いします」
「ああ。んじゃ先に俺が出るわ」
一緒に屋上から出ればこの取引も水の泡になるかもしれない。
「察しがよくて助かります」
そうして屋上での出来事は幕を閉じた。