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5th Dimension(フィフス・ディメンション)5次元 マンガ原作 アニメ原作 シナリオ

〇 モンタージュ

  銀河系(全景)

  赤い4次元ワープ空間。

  飛行する数々の宇宙船。

  船体にはアメリカ宇宙軍をはじめとするさまざまな国の国旗が掲げられてい

  る。

N「急速に発展した宇宙開発は4次元空間の発見に成功し、超長距離間の物体移動を可能にするワープ飛行を実現化させ、人類を銀河系探索の甚大な欲求へと駆り立てた」

  惑星に建設した宇宙基地で宇宙服を着た大多数の作業員たちが作業をする。

N「しかし、太陽系の存在は確認できず、知的生命体との遭遇、並びに化石燃料などの資源の発見にはいまだ至っていない」

  ゴツゴツした楕円形の小惑星ソリュージュが宙に浮かぶ。

  そこには光が降り注ぎ青い海が波を打つ。

N「西暦2123年、地球から最も離れた地球の8分の1ほどの小惑星ソリュージュは、太陽に類似した発熱体の約1億3千万キロに位置していたため、銀河系において地球以外で唯一海と酸素を有する惑星と認識された」

  ソリュージュの土と水を採取し、その場で解析器に掛ける宇宙服の作業員。

N「しかし、その膨大な研究にも関わらず、やはり生命体の存在は確認できなかった」

  ソリュージュの大地に日本の国旗を立てる宇宙飛行士。

N「惑星ソリュージュを発見した日本宇宙軍は国連決議による国際宇宙法によってその保有を認められた」

  未来宇宙都市となったソリュージュ。

  高級ホテル、整備されたビーチ、美しく舗装された道路を行きかう電気自動

  車。

N「GDP世界17位で成長産業を持たない日本は、巨大な中国の資本を借りてこの星を富裕層を中心とした一大観光惑星へと変貌させた」

  泳ぎ、戯れ、食事をし、酒を飲む涼しげな南国衣装をまとう人々。

N「それから数年、いまやソリュージュは高級宇宙リゾート地として日本の重要な観光産業へと成長した」

  高級ホテルのエントランスには日本と中国の国旗が並ぶ。

  ソリュージュの空に浮かぶ小惑星第2ソリュージュには中国の軍事基地、巨大

  空母、宇宙船、戦闘機がそびえる。

N「その代償として、日本政府はソリュージュを外周する唯一の衛星・第2ソリュージュに中国宇宙軍の軍事基地を建設させた」

  真っ赤なワープ空間の中を行きかう宇宙船、貨物船、日本のパトロール船。

N「地球からソリュージュへ向かう航路であるワープ空間は日本が保有する4次元空間であり、日本政府の許可なしに使用してはならない。使用する場合は日本政府に対して通行料を支払わなければならないことが国際宇宙法で定められており、その結果、これもまた日本の貴重な観光資源となっていたのである。このソリュージュ専用のワープ空間はコスモロードと名付けられた」


〇 タイトルバック

  『 5th Dimension 』


〇 中国・北京市街(全景)

T「北京」

  繁華街を歩くスーツ姿のアジア系の中年男。

  ある人物の後を追う。

  その人物はメガネを掛けた知的な女性。

T「中国宇宙軍・参謀長・(チョウ)思涵(スーハン)(30)」

  大型書店に入る趙。

  後をつける中年男。


〇 高級ホテル

  ラウンジで老紳士と談笑する趙。

  それを無表情で見つめる中年男。


〇 市街地・路地(夜)

  帰路に就く中年男。


〇 中古マンション

  エントランスへ入っていく。


〇 同・エレベーター

  コーッという上昇音。

  疲れた表情で目をつむる中年男。


〇 同・中年男の部屋

  真っ暗。

  照明をつけ入室してくる中年男。

  キッチンへ行き、疲れて水道水をなんとなく飲む。

  向けられる銃口。

中年男「(ドキッと振り向く)」

  サイレンサー銃でキュッと射殺。

  ドカリと落ちる中年男。

  中年男のカバンからスマホを取り出し、自分のスマホとつなぐ射殺女。

T「中国宇宙軍・諜報局員・(コウ)欣怡(シンイー)(30)」

  黄の背後から現れる趙。

  二人、中国語の会話。

趙(日本人?)

黄(アメリカ人)

趙(CIA?)

黄(フリーのジャーナリストのようね)

趙(後始末は任せる)


〇 日本宇宙軍・諜報局・局長室

  パソコンを操作する諜報局長・犬養(48)。

T「日本宇宙軍・諜報局・局長・犬養聡一郎」

  卓上インターフォンが鳴る。

犬養「(出て)入れ」

  男性の諜報局員が入室、犬養の前へ。

局員「コード番号#3572が殺されたそうです」

犬養「だろうな。民間人では無理だよ。すぐ古城君たちを呼んでくれ」

局員「ただちに」


〇 コスモロード

T「ワープ空間・コスモロード、ソリュージュへの出口付近」

  日本宇宙軍・諜報局の巡視船が浮遊する。


〇 巡視船・操縦室

  腕組みして前面モニターでコスモロードを眺める女性諜報局員・古城葉月

  (30)。

T「日本宇宙軍・諜報局・工作員・古城葉月」

  その横で操縦(かん)を握る女性諜報局員・志田瑠依(30)。

T「日本宇宙軍・諜報局・工作員・志田瑠依」

  巡視船の横を宇宙船が横切る。

瑠依「旅客船?」

葉月「貨物」

瑠依「出るな?」

葉月「来るぞ」

  宇宙船が前に進むとコスモロードの出口が開き、前面に宇宙空間が広がる。

  そこへ飛び出していく宇宙船。

  出口が塞がろうとする。

  その瞬間、宇宙空間から物凄いスピードで空賊船が侵入!。

葉月「来たッ!」

瑠依「中国軍!?」

葉月「空賊だ!」

  貨物船をスルーする空賊船。

瑠依「襲わないッ、どういうこと!?」

葉月「追って!」

  猛スピードで逃げていく空賊船!。

  それを追いかける巡視船!。

  矢のような追跡劇!。

  逃げる逃げる追う追う!。

瑠依「往生際の悪いッ、地球まで逆走か!?」

葉月「待ってッ……」

  突然減速する空賊船。

瑠依「なんだ!?」

  ある所で停止する空賊船。

  その後方で停止する巡視船。

瑠依「止まった。何してる?」

葉月「……」

  停止したまま膠着状態の2船……。

瑠依「長いな。何してるんだ?」

葉月「警告信号を送る」

  葉月、タッチパネルを操作。

  モニターに中国語の文章が出る。

葉月「反応したッ」

  中国語を訳す葉月。

葉月「警告に従う。直ちにコスモロードを出る……?」

瑠依「なんだ……?」

葉月「(難しい表情)」

瑠依「追い出す?」

葉月「確保しよう。臭う。地球へ送還する」


〇 中国・宇宙軍基地

  まるで巨大な街。

  ズンとそびえ立つ豪華な旅客船。

  その下で男性設計者・(ヨウ)紫龍(シリュウ)(46)の説明を受ける趙。

T「理論物理学者・楊紫龍」

趙(本当に4次元空間での時空軸を完全把握できるの?)

楊(ミリ単位で可能です)

趙(重力の存在も?)

楊(理論的には。しかし、前例がないので我々が初めてとなるでしょう)

趙(失敗もありうると?)

楊(宇宙開発とはその繰り返しです)

趙(予算がいくらあっても足りないな)


〇 万里の長城

  観光客に紛れて会話する趙と黄。

趙(卓球選手?、日本人の?)

黄(この間のオリンピックで金メダルを獲ってる)

趙(日本人が。中国人選手も落ちぶれたもんね)

黄(金を持ちすぎたのよ)

趙(女優や歌手はいなかったの?)

黄(手垢がついている)

趙(なるほど。スポーツ選手ならイメージも良いってわけか)

黄(まあね。でもまだいろいろ秘密がある。あとで教える)

趙(日本でどれくらい人気があるの?)

黄(国民的スターと言ってもいい)

趙(それがソリュージュへ行くのを喜ぶってわけ?)

黄(金が無いのさ日本のスポーツ選手は。『憧れの楽園ソリュージュへ行ける』って大はしゃぎしているよ)

趙(ほーう)


〇 日本宇宙軍・諜報局・局長室

  犬養と葉月と瑠依がソファーで議論する。

犬養「フランスの宇宙軍がワープ空間での重力の存在を確認したという情報がある」

葉月「重力?。空間がゆがむってことですか?」

犬養「理屈はな」

瑠依「毎日操縦していて何も感じませんが」

犬養「まだ仮説の段階なのかもしれん」

葉月「それが我々諜報員と何の関係が?」

犬養「中国宇宙軍がその重力に異常な興味を示しているらしい」

葉月「なぜ?」

犬養「わからん」

瑠依「スパイは?」

犬養「先日、北京でアメリカのジャーナリストが殺された。CIAが発注した民間のスパイだ」

葉月「身元は?」

犬養「CIAが関わっているとはバレていない」

瑠依「とんだ流れ弾に当たるところでしたね」

葉月「それで、『中国の意図を探れ』と?」

犬養「そういうことだ」

瑠依「ウチのスパイは?」

犬養「まだ何も言ってこない」

瑠依「言える段階にないのかも?。確証がないというか……」

犬養「そろそろだとは思うんだが……」

葉月「そういえば、先日おかしなことが」

犬養「君たちが連れて帰ってきた空賊だろう?。あれなら我々の人質と交換に中国へ強制送還する。ヤツらが何か?」

葉月「貨物船を無視してコスモロードに入り込んだんです」

犬養「それが?」

瑠依「ただそれだけ。何も盗りゃしない」

葉月「立ち止まって何かを調べていたのか」

犬養「おかしいな。ヤツらの素性は?」

葉月「ただのチンピラです。前科も小物ばかり」

犬養「誰かに頼まれてコスモロードの空間を調べていたとしたら……」

葉月「中国宇宙軍」

犬養「臭うな。中国へ行ってヤツらを尾行できるか?。取り越し苦労かもしれんが」

葉月「分かりました。現地の諜報員に事前に連絡を入れておいてください。力を借りるかもしれません」

犬養「分かった。頼む」

葉月・瑠依「ラジャー」


〇 北京・ジャズバー

  上品で広々とした空間。

  ステージで日本人のジャズミュージシャンが演奏する。

  誰も聞いていない。みんなワイワイガヤガヤ談笑と酒に酔いしれている。

  壁に隠しカメラ!。


〇 路地裏

  停車している中国製のSUV車


〇 同・車内

  後部座席はまるでハイテク潜水艦内のコックピット。

  車内に張り巡らされるコンピューターとモニター。

  そこに映し出されるジャズバー内の様子。

  それを凝視する葉月と瑠依。

  懸命に演奏するジャズバンド。

瑠依「日本のミュージシャンも中国に出稼ぎか、笑えないな」

葉月「ミュージシャンだけじゃない、建設作業員、介護職員にハウスキーパー、コンビニのレジだって日本人だ」

瑠依「ソリュージュがなければ今頃どうなっていたことやら」

葉月「半導体で生き残れなかった日本にはもはや観光産業しか残ってないのさ」

瑠依「やれやれ……、おッ?」


〇 ジャズバー

  空賊の男性リーダー・(ソウ)義和(イーホー)(30)がスーツ姿で入店してくる。

T「中国空賊リーダー・宋義和」

  黒服に尊大な笑顔で挨拶する宋。

  ジャズバンドを「この鼻くそが」という目で見やる。

  店内を偉そうに歩き回る。

  客の飲んでいる酒をチラチラ見ていく。

  成金スーツの客と握手する。

  知り合いの風俗嬢と派手に抱き合いキスをする。

  女とデレデレ猥談する。

  必死に演奏するジャズバンド。

  奥に身なりのいい客のテーブルがある。

  それをチラッと見やる。

  身なりのいい客は男性紳士の3人。一人は金髪の白人。

  宋、紳士たちの席に近づく。

  やかましいジャズの演奏。

瑠依「本命登場だな」

葉月「映像明るくして」

  宋、笑顔で紳士3人と握手をしてテーブルに座る。

  酒を持ってきたボーイに札ビラを渡す。

  深々と一礼をするボーイ。

  談笑しだす紳士たちと宋。

葉月・瑠依「……(モニターを凝視する)」

  やがて真剣な話をしだす宋たち。

瑠依「分かる?」

葉月「中国政府の役人だと思う……」

瑠依「あの白人、どこの国だろう?」

葉月「どっかで見たなあ……」

瑠依「本部のデータベースで解析してみる」

  面長の中国人男性の顔アップ。

  コンピュータを操作する瑠依。

  画面に文字が!。

葉月「中国外務省・東アジア担当」

瑠依「ビンゴ」

葉月「その隣は?」

  カメラがその隣のヒゲの紳士を映す。

  瑠依がコンピュータを操作。

  映し出される文字情報。

瑠依「こちらもヒット」

葉月「中国宇宙軍・北部方面大佐」

瑠依「えらいことになってきたなあ」

葉月「あの白人、なんとかならない?」

  カメラを白人にズームする。

  瑠依、コンピュータで捜査。

  画面に「not found」

瑠依「出ない。ヨーロッパ支局のパスワード分かる?」

  葉月、コンピュータを操作。

  文字が出る。

瑠依「出た……」

葉月「フランス宇宙軍・4次元開発局・局長」

  思わず顔を見合わせる二人。

瑠依「なにこれ?。プロ野球のオールスターじゃん」

  ジャズ演奏が一曲終わる。

  拍手する客たち。

  酒を持ってきた給仕に札ビラを渡す宋。

瑠依「なんなの?、あのチンピラ空賊」

葉月「さあ、ほんとにチンピラとしか」

  白人女の給仕に札ビラを渡しキスをする。

葉月「国籍を変えているのかもしれない」

瑠依「宇宙船の操縦はまあまあだったけどね」

葉月「洗ってみるか」

瑠依「とんだ長期出張ね」

葉月「人質交換でのうのうとしやがって」

  女給仕の胸元に札ビラを入れる宋。

瑠依「私たちの胸にも入れてくれるかな?」

葉月「いいねえ(笑)」


〇 バーの玄関・外(深夜)

  遠くから車で張り込む葉月と瑠依。

葉月「きた」

  宋が多くの店員に見送られて出てくる。

瑠依「大名行列」

葉月「会計ぜんぶ持ったんだろう」

  宋、運転席に乗り込み出発。

瑠依「やるかッ」

葉月「レッツゴー」


〇 深夜の街路を走る宋の車

  ゆっくり追跡する葉月たち。


〇 繁華街とネオンの中を走る両車


〇 ナンバープレートを録画する葉月


〇 白みがかった郊外の住宅街

  宋の車がくたびれた運転でやってくる。

  やがて洒落た一軒家に入っていく。


〇 路地に止める葉月たちの車

  家に入っていく宋を見張る。

瑠依「そんなに儲かるかねえ、空賊って」

葉月「ツッコミどころ満載だな」

  宋が服装を変えて出てくる。

  チンピラの恰好。

  そのまま発車。

瑠依「なんだ?」

葉月「追って」


〇 またまた繁華街へ向かう両車


〇 小汚い中華料理店

  ジェラルミン鞄を持って入っていく宋。

瑠依「何が入ってる?、金か?」

葉月「中国宇宙軍の資料だろう」


〇 朝日が昇る繁華街

  あくびが出る瑠依。目薬をさす葉月


〇 料理店・入口

  突然スタスタやってきた女の中国人チンピラ2人が中に入る。

瑠依「なんだ女か、朝っぱらから元気だねえ」

葉月「やばい、出して、ゆっくり」

  瑠依、とりあえず発進。


〇 道路・走る葉月たちの車

瑠依「どうしたの?」

葉月「気づかれてないだろうなあ……」

瑠依「だれ?」

葉月「趙思涵スーハン、中国宇宙軍・参謀長」

瑠依「エビで鯛か」

葉月「オマケに黄欣怡シンイー、中国諜報局工作員」

瑠依「同業者かよ」

葉月「あのチンピラ洗いなおそう。公安のスパイに徹底的に調べさせる」


〇 同日・朝の9時、中国宇宙軍本部・門

  そのままの服装で張り込む葉月たち

  ジャズバーで宋と喋っていた中国人高官二人が昨夜のスーツを着て入ってい

  く。

葉月「間違いないな」

瑠依「ふざけやがって」


〇 日本の高級ホテル・大広間

  キラキラマスコミでごった返している。

  壇上に卓球ユニフォームを着てラケットを持った卓球選手・林田修一(20)。

T「オリンピック金メダリスト・林田修一」

  横のホテルソリュージュの渡辺オーナーとにこやかに握手する。

   ×   ×   ×

  テーブルで記者会見に答える林田。

記者「ソリュージュに行くのは初めてですか?」

林田「宇宙に行くのが初めてです」

記者「オーナー、今回、林田さんをホテルのアンバサダーに選んだ理由は?」

オーナー「ソリュージュに新しく中国のスポーツレジャーセンターが建設される。世界中のスポーツ選手がウチのホテルをご利用されるでしょう。林田さんにはぜひヘビーユーザーとなってウチのホテルの良さを伝えて頂きたいですね」

記者「林田さん、ホテルの印象は?」

林田「憧れのホテルソリュージュに宿泊できるのはとても嬉しいことです。世界ツアーではほとんどがビジネスホテルなので」

  バシャバシャとカメラのフラッシュ!。

  二人のバックにはホテルソリュージュの巨大な看板とモニュメント。

  そこには日本と中国の国旗が掲げられる。

  そして、テーブルの末席には旅客船設計者で物理学者の楊紫龍の姿が。

  ネームプレートには旅客船設計者の文字。


〇 中国のカフェ

その記者会見をテレビで見ている葉月と瑠依。会話は中国語。

瑠依(ケッ、日本人のくせに中国の船で行くとはねえッ)

葉月(仕方ない。ホテルソリュージュの大株主は中国だ。それに今度の旅客船は中国の新開発の船らしい。その宣伝も兼ねてるんだよ)

瑠依(断りゃいいものの)

葉月(林田のスポンサーには中国企業が入り乱れてるからな)

瑠依(泣ける)


〇 高級スポーツジム

  汗を流す空賊・宋。

  それをトレーニングしながら見張る葉月。

  その映像に葉月と瑠依の会話がかぶさる。

葉月「中国公安のスパイからネタが来た」

瑠依「誰だよアイツ」

葉月「宋義和イーホー、本名ルイス・オルガド、30歳。国籍はフランス。チンピラなんてのも嘘。パリ国立工業大学・工学部・電気工学科卒業。そのままフランスの半導体メーカーに。ところが上司の派閥が汚職で左遷、中国支局へ。そこで相当イジメられたそうよ。そのまま恨みを残して退社。自分のルーツである中華系の企業へ転職」

瑠依「それがなぜ空賊に?」

葉月「あの空賊はフェイクだ。操っているのはフランス宇宙軍だよ」

瑠依「ヤツの前科は?」

葉月「全部フランス軍がこしらえた。乗組員も全部中華系のフランス人だよ」

瑠依「中国人になりすまして何かたくらんでるのか……」

葉月「半導体がらみかねえ……。半導体の技術者なんてどこの国も欲しがる。とくに日本なんて半導体後進国はね」

瑠依「そこをフランス宇宙軍がかっぱらったってことか」

葉月「ますます泣ける」


〇 中国繁華街・ショットバー

  変装してバーテンをやる瑠依。

  客としてカクテルを飲む私服の宋。

  二人ともニヤニヤ英語で話す。

宋(へえ、アメリカから)

瑠依(こっちの方が金払いがいいからね)

宋(大学では何を?)

瑠依(電気工学)

宋(あ、そうッ。俺も工学部)

瑠依(ねえ、どこかいいホテル知らない?)

宋(何に使う?)

瑠依(教授を誘惑しちゃおうと思って(笑))

宋(ハハ、それならシュプリームホテルがいいよ)

瑠依(あんな高いところ!)

宋(そういう事にはもってこいさ)

瑠依(よく行くの?)

宋(しょっちゅうッ!)

瑠依(まあッ!)

  ケラケラ笑う二人。


〇 シュプリームホテル(全景)

  中国一の超高級ホテル。

  前方の車中で張り込む葉月と瑠依。

  正面入口からスーツ姿の宋が出てくる。

  そのあとにジャズバーのフランス人。

T「ジャン・ルーベット。フランス宇宙軍・4次元開発局・局長」

瑠依「あッ、あの野郎!ジャズバーの!」

葉月「ジャン・ルーベット36歳。フランス宇宙軍・4次元開発局・局長。今年で5度目の中国訪問」

瑠依「何をしようとしてるんだヤツら。ける?」

葉月「こっちの諜報員に任せよう。これ以上深追いするとケツが割れる」

  去っていく葉月たちの車。


〇 北京・繁華街のサウナ・個室(夜)

  日本の諜報局工作員・上條麻友(30)と汗テカテカで話し込む葉月と瑠依。

T「日本宇宙軍・諜報局・中国担当員・上條麻友」

葉月「重力……」

瑠依「コスモロードの空間内に?」

麻友「ソリュージュの出口付近らしいの」

瑠依「死ぬほど飛んでるけど何の違和感も感じないけど?」

麻友「あの広い空間に針の穴ほどの重力地点があるらしいのよ」

葉月「それをなんで中国が?」

麻友「見つけたのはフランスの旅客船。飛行中に偶然発見したらしい。でも、まだ仮説の段階」

瑠依「それを何とか探り出そうとしてるのか、私たちの目をかいくぐって」

葉月「でも、重力を探し出す目的は?」

瑠依「あんなもの操縦の邪魔でしかない」

麻友「操縦を重力にゆだねたらどうなると思う?」

瑠依「引っ張られるだけだ」

麻友「その先は?」

瑠依「先?、先ったって……」

葉月「どこかに突き当たらないの?」

麻友「普通はそう考える」

瑠依「空間の行き止まりでしょう」

麻友「行き止まりが無かったとしたら?」

葉月「異空間」

麻友「そう」

瑠依「そんなマンガ」

麻友「我々はそう考える」

葉月「フランスは何て?」

麻友「4次元以外にも5次元空間があって、そこに新たな銀河系があるんじゃないかって」

瑠依「じゃあ、太陽系も?」

麻友「だとしたら?」

葉月「第2の地球」

麻友「知的生命体か化石燃料があるのかも知れない」

瑠依「なるほど。こんだけ銀河系探しても何も無かったんだもんね。あったのはソリュージュだけ。それも、いまでは単なる観光惑星」

麻友「でも、もし、地球が手に入るとしたら?」

葉月「ソリュージュどころの利益じゃないな。ソリュージュでさえ世界中が欲しがっているのに」

麻友「可能性があるならトライすべきだ」

瑠依「でも、なんで中国に?」

麻友「予算……」

葉月「自力じゃ出来ないってか……」

麻友「フランスとしてはこの計画を中国に売り込んで、そのおこぼれにあずかろうってわけさ」

瑠依「金が無いってのは悲しいね」

麻友「儲かってるのは中国とインドだけだよ」

葉月「分かった。この話は一度日本に持って帰る。コスモロードは日本の領域だ。ヤツらの好きにはさせない」


〇 日本宇宙軍・諜報局・局長室

  立ち上がって話し合う犬養と葉月と瑠依。

犬養「フランスと中国か、ややこしいな。どちらも常任理事国だ、議論は進まない」

葉月「次、いつ仕掛けてくるかさえ分かればいい。そこを確保する」

瑠依「中国宇宙軍の趙思涵スーハンが絡んでる。大ヤマに違いない」

犬養「あの女は我々の考える数段上だ。下手すると大やけどするぞ、米中戦争だ」

葉月「CIAに報告しますか?。コスモロードを横取りされますよ」

犬養「5次元空間の確証が得られなければ」

葉月「我々が探します。必ず重力の謎を解き明かす」

犬養「どうやって?、予算もないこの貧乏国家に」

瑠依「それを言っちゃあオシマイですよ」

犬養「熱くなるな。現時点でコスモロードを実効支配しているのは日本だ。それを忘れるな。事実コスモロードが発見されて以来大きな事故は何もない。せいぜい空賊の窃盗ぐらいだ」

葉月「局長、もし他の国が自国のワープ空間で重力を発見したら手遅れですよ」

瑠依「甚大な国益を失う」

葉月「中国が仕掛けてくるのは明白です。だからわざわざ北京まで行ってヤツらを追い回した。そしたら出てきたのが趙思涵スーハンだ。おまけにフランス軍まで。これはやらないわけにはいかない」

犬養「………………」

  犬養、腕をこまねき黙考する。

犬養「やけに熱いな今回は?」

瑠依「中国には返さなきゃならない借りが山ほどある」

犬養「君もか?」

葉月「そのうちソリュージュは実効支配される。ヤツらその気です。いや、もうされているのかも」

犬養「……」

  犬養、ウンウンと頷き納得する。

犬養「何をすれば?」

葉月「宋義和イーホーにトラップを掛ける。金、女、仕事、なんでもいい、とにかく次なにを仕掛けてくるかを探る」

犬養「現地人を雇わなければならんなあ……」

葉月「(ニヤリ)上と相談してください」

瑠依「(ニヤリ)お任せします」


〇 中国宇宙軍・基地

  楊紫龍が設計した「林田を乗せるソリュージュへの豪華旅客船」が轟音を響か

  せながら離陸する。

  それを管制塔から見守る趙。


〇 地球の空

  日本へ向かう豪華旅客船。


〇 日本宇宙軍・基地

  その旅客船が到着。

  楊紫龍が旅客船の窓から笑顔で手を振る。


〇 同・基地ロビー

  楊紫龍を笑顔で出迎える卓球選手・林田修一。

  二人、硬い儀式ばった表情で握手。

  マスコミでギラギラとごった返す。

   ×   ×   ×

  通訳を介して日本人記者の質問にニコニコと答える楊。

楊(ワープ時の揺れを従来の揺れの10分の1に抑えた。お客様には快適なワープの旅を楽しんでいただける)

記者「スピードはどうですか?」

楊(こちらも従来の4倍の速さでソリュージュまで到達できる)

記者「コスモロードの印象は?」

楊(コスモロードは治安がいい。彼(林田)の華やかな船出にも相応しいですね。船旅がいい休暇にもなるでしょう)

記者「ソリュージュのオーナーは喜んでいるでしょうね?」

楊(渡辺オーナーとはこれから会いますよ)

記者「いえ、中国のオーナーです」

楊(……(不意を突かれ嫌な顔をする))


〇 中国宇宙軍・諜報局会議室とテレビ

  その記者会見を無表情で眺める趙と黄。

趙(バカめ)

黄(挑発に乗った)


〇 日本宇宙軍・諜報局・局長室

  葉月と瑠依に書類を渡す犬養。

犬養「現地の諜報員が見つかった。宋にハニートラップを掛ける。上條君が手配してくれた。正真正銘の中国人だ。1億円報酬金を払う。予算が下りた。宇宙幕僚長に礼を言っておけ」

  女諜報員のプロフィールを読み込む。

葉月「薬学生……21歳」

瑠依「ほーう、すげえ美人」

葉月「宋とどうやって接触させるんです?」

犬養「ボディメイクって知ってるか?」

瑠依「筋トレでしょ?。今じゃ人前で見せびらかすのが目的とか」

葉月「それが何か?」

犬養「コンテストに向けて頑張っているらしい。宋が通っているジムでトレーニングさせる」

瑠依「ほとんど裸みたいな衣装着るからな。この美貌ならイチコロだろ」

葉月「男落とすぐらいなら私たちでも」

犬養「現地へ行きたい気持ちは分かるが、ここは上條君に任せよう。責任は私がとる」

瑠依「ウチらじゃ年増ってか」

犬養「バカヤロ。ひがむな」

瑠依「はいはい」


〇 北京・薬科大学(全景)


〇 同・研究室

  白衣を着て実験にいそしむスパイ女。


〇 同・中庭

  女、笑顔で、大学生風のラフな格好をした上條麻友と落ち合う。


〇 同・体育館

  大学対抗バスケット大会が行われている。

  盛り上がる応援団とギャラリー。

  ギャーギャー物凄い喧噪!

  その中に紛れて麻友が女に資料を見せている。

  真剣な表情で麻友のレクチャーを受ける女。


〇 中国宇宙軍・格納庫

  黒い宇宙戦闘機がそびえ立つ。

  メカニックに案内される趙と黄。


〇 機内・操縦室

  メカニックの説明を受ける趙と黄。

メカニック(4次元空間内での急発進・急停止にかかるGが従来の戦闘機の約8分の1軽くなる)

黄(8分の1、すごいな)

趙(半導体は?)

メカニック(インド製を使っている。今、一番性能がいい)

趙(台湾製は?)

メカニック(頭はいいんだけど、スピードがね。そこをインドはクリアした)

趙(アメリカ製はもうダメか……)

メカニック(落ちたもんですよ。黄さんのような飛ばすパイロットなら絶対インド製が)

黄(ちょっと振り回せる?)


〇 音速で空を翔け抜ける黒い戦闘機


〇 同・操縦室

  慣れた手で操縦する黄。

  前面モニターを見る趙とメカニック。

メカニック(どうです?)

黄(軽い!)

メカニック(いいでしょう?。急停止していいですよ)

  黄、操縦桿で急停止する。


〇 ふわりと空の上で減速する戦闘機


〇 同・操縦室

  驚く趙と黄。

黄(すごいねッ!)

趙(急発進もこういく?)

メカニック(もちろん!)


〇 北京・宋の通う高級スポーツジム

  女スパイがビキニのようなトレーニングウェアを着て、いかつい男にマンツーマン指導を受けてマシーンを動かしている。

  腹筋が6個に割れている。

  ジム内の男どもが自分のトレーニングそっちぬけで女に見入っている。

  そこへ宋が呑気に入ってくる。

  みんなの視線の先に自分も視線を向ける。

宋「!(眼を見開く)」

  美しい若い女と鍛え抜かれた肉体!。

  ツヤツヤテカテカの汗!。

  蒸しだされる若い女の真っ赤な吐息!。

宋「……(動けない)」

   ×   ×   ×

  ランニングマシーンで走る宋。

  女が気になってしょうがない。


〇 同・シャワー室

  ヤケクソ気味に頭を洗う宋!。


〇 同・廊下の角

  宋、急いで走ってきた女と衝突する!。

女(キャンッ)

宋(あ、失礼ッ)

女(ごめんなさいッ)

  女、目もくれず急いで外へ。

  床に落ちた女のカギ。

  急いで拾い声をかける宋!。

宋(おーいッ)

  女はもういない。


〇 同、外

  急いで出て来た宋、前方を見やる。

  女はバスに乗って出ていく。

  宋、路駐してあるマイカーに乗って追う。


〇 繁華街、バスを追う宋の車


〇 住宅街のバス停

  降りる女。

  宋も車から急いで降りる。

  後ろから声をかけカギを見せる宋。

  びっくりして笑顔で深々と頭を下げる女。

  笑顔で返す宋。

  指をさし近所で食事をおごると女。

  笑顔で手を振り遠慮する宋。

  引っ張っていく女。


〇 レストラン

  笑顔で談笑する宋と女。

  筋肉自慢のポーズの女。

  ニコニコ笑う宋。

   ×   ×   ×

  レジでスマホを出す宋。

  制止して自分のスマホで決済する女。

  ペコリと頭を下げる宋。

  ニッコリ笑顔の女。


〇 ジム(後日)

  宋、入ってきて女を探す。

  女、宋の視線を待っていた。

二人「(笑みあう)」


〇 女の薬科大学(全景)


〇 同・研究室

  にこやかに白衣で説明する女。

  嬉しそうに聞く宋。


〇 飛行場・レンタルセスナ機


〇 空を飛ばす宋と狂喜する女


〇 シュプリームホテル(全景)


〇 同・イタリアンレストラン

  正装して食事する宋と女


〇 同・スウィートルーム

  入ってくる宋と女。

  バラの花束を渡す宋。

  涙する女。

  二人、キスを交わす。


〇 ホテル全景

  二人の部屋の明かりが消える。


〇 日本宇宙軍・諜報局・局長室

  入室してくる葉月と瑠依。

  資料を渡す犬養。

犬養「宋が落ちたぞ」

瑠依「ホントですか!」

葉月「何を仕掛けてきます?」

犬養「卓球選手の林田修一がソリュージュにCM撮影に行くだろう?」

葉月「来週そのリハーサルが中国の簡易宇宙船で行われますね」

犬養「そこに宋とジャン・ルーベットが乗り込むそうだ」

瑠依「ヤッホーッ!」

葉月「政府公認でコスモロードを探ろうってわけか」

犬養「日本のパトロール船が同行する。君たちも乗り込め」

瑠依「アイアイサーッ!」

犬養「簡易宇宙船の資料だ。よく読み込んでおけ」

葉月「はい」


〇 日本宇宙軍・基地

  入港する中国の簡易宇宙船。

  ビルの窓から見つめる葉月と瑠依。

瑠依「どこに潜り込んでるのやら」

葉月「燃料補給してすぐ出発よ、ウチらも急ごうッ」

  駆けていく葉月と瑠依。


〇 同・全景

  とどろく轟音!

  簡易宇宙船(中国船)がズンズン揺れる。

アナウンス「3・2・1、リフトオフ」

  一面の大地を覆う白い煙!

  中国船が空へ飛び立つ。

  日本のパトロール船もそれに続く。


〇 パトロール船・操縦室

  犬養がメインパネルで中国船を追う。


〇 パトロール船・カタパルト

  日本の戦闘機がスタンバイしている。


〇 戦闘機のコックピット

  葉月と瑠依が操縦席でモニター越しに中国船を追ってスタンバイしている。


〇 空

  ぐんぐん上昇していく中国船。

ゆっくりのパトロール船。


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「(はえ)えッ……」

葉月「残念ながら国力の差ね」


〇 宇宙

  漆黒の空と静寂。

  轟音のエンジンをがなり立てて突き進んでいく中国船と貧弱なパトロール船。

  どんどん小さくなっていく地球。


〇 宇宙

  もう地球は見えない。

  物凄いスピードの中国船。

  追いつくのがやっとのパトロール船。


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「速すぎるッ、逃げてんなッ」

葉月「どうせコスモロードの入口で追いつく」


〇 パトロール船・操縦室

オペレーター(OP)「中国船、まもなくコスモロードに入ります」


〇 宇宙空間が開き赤い空間が見える

  入っていく中国船。

  いったん閉まるコスモロード。

  ゆっくり停止し、待つパトロール船


〇 戦闘機・コックピット

  瑠依、イライラ貧乏ゆすり。

  葉月、難しい顔。


〇 コスモロードが開く

OP「コスモロードに突入します」


〇 戦闘機・コックピット

  前面モニターを見る葉月と瑠依。

  何もない真っ赤な空間。

  前方に中国船はいない。

瑠依「野郎、スピード上げやがったッ」


〇 パトロール船・操縦室

犬養「速度上げろ、追いつけ」


〇 エンジン轟音、パトロール船進む


〇 前方に中国船発見


〇 戦闘機コックピット

瑠依「ふざけやがって」


〇 前方に大型船が


〇 パトロール船・操縦室

犬養「何だ?」

OP「オランダの貨物船です」

  中国船、貨物船の前ににゅるりと入り込み、葉月たちの視界から消える。


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「なめられてんなあ……」

葉月「(インカムで)局長、貨物船に進路を開けるように言ってください」


〇 貨物船、平行移動し視界が晴れる

  中国船がいない。


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「あッ!」

葉月「慌てるな、前方に覆面がいる」


〇 パトロール船・操縦室

犬養「(インカムで)403号、聞こえるか?」

  中国船に並走する覆面パトロール船。

覆面船「こちら403号。大丈夫です、大人しくソリュージュに向かっています」

犬養「すまん、すぐ追いつく」


〇 中国船を尾行する覆面パトロール船


〇 コスモロードを突き進む中国船

  やっと後方に追いつくパトロール船。


〇 パトロール船・操縦室

OP「まもなく出口です」


〇 突然止まる中国船


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「きたッ」

葉月「探りを入れてる」


〇 中国船・操縦室

  4次元モニターを見る楊・宋・趙・黄・ジャン。

趙(これが4次元レーダー?)

楊(そう。世界で初めて4次元空間での時空軸の把握に成功した。今の現在地が1ミリ単位で分かる)

  4次元レーダーを指差す楊。

楊(ここがコスモロードの入口、こっちが出口、そして我々が今ここ。見てくれ、ここに空間軸のねじれがある。これが重力だ。やはりソリュージュの出口付近に存在した)

ジャン(どうだ!)

宋(どうです?)

趙(あとはその先に何があるかだな)

黄(当たってみる?)

趙(こんなに早く5次元空間にお目にかかれるとはね)

黄(日本はどこまで掴んでるのか)

宋(知っていたところでどうなる?。自力で開発するのは無理だろう。ソリュージュと同じさ。結局は中国の資本頼みだよ)

ジャン(おいおい、日本と組んでもらっちゃ困るぜ。発見したのはこっちなんだから)

趙(分かってますよ。しかし領海侵犯は間違いない。国連がどう言うか?)

ジャン(ウチも含めて安保理が一致しないだけさ(笑))

宋(どうだい?、俺が探ってきてもいいぜ?)

趙(日本の諜報局は優秀だ。みすみす我々を逃がすとは思えない)

黄(5次元に気づいてるって言うの?)

趙(そこまでは。でも、単なる護送船にしては胡散臭い。パトロール船などとうそぶくが……)

黄(ひとつ揉んでみる?)

趙(新しいジェットの操縦は?)

黄(お任せを)

ジャン(さすが、どこの国も女性は決断が早いや!)


〇 コスモロード

  中国船、パトロール船、動かず膠着状態。

  しかし、ふわりと中国船が発進。


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「動いたッ!」

葉月「何かあるッ」


〇 パトロール船・操縦室

犬養「追え!」


〇 進む中国船、追うパトロール船


〇 パトロール船・操縦室

OP「まもなくソリュージュ出口です」

犬養「(インカムで)古城君、始まるぞ!」

葉月「了解!」

瑠依「(操縦桿を握り)まかせて!」


〇 コスモロードの出口が開いた

  中国船が出ようとする!

  パトロール船も続く!

  その瞬間、中国船の船底から黒いジェット機がビュッと飛び出す!。

  趙と黄が操縦する戦闘機だ!。


〇 パトロール船・操縦室

犬養「なんだあのジェット機はッ、速い!」


〇 戦闘機・コックピット

葉月「エンジン全開!」

瑠依「局長!カタパルト開けてッ!」


〇 パトロール船・操縦室

犬養「(ボタンを押す)よしいけッ!」


〇 パトロール船の船底が開く

  戦闘機がスルッと降りエンジンの爆音とともに発射!


〇 ズキューンと黒ジェットを追う戦闘機!


〇 中国船とパトロール船は4次元を抜ける


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「飛ばすよ!」

葉月「オッケイ!」


〇 黒ジェット・コックピット

趙(いいねえッ、速い!)

黄(さすがメイド・イン・チャイナ!)


〇 進む進む黒ジェット、追う追う戦闘機


〇 戦闘機・コックピット

瑠依「ダメだッ速いッ追いつけない!」

葉月「頑張って!」


〇 黒ジェット・コックピット

  余裕の2人。

  4次元レーダーを見る趙。

趙(この先よ)

黄(OK)


〇 4次元空間での追跡劇

  どんどん進んでいく黒ジェット。

  通行船の間をぬっていく。

  追う戦闘機。

瑠依「通行船が邪魔だ!」

葉月「警告信号鳴らす!」

瑠依「ダメ!向こうの思うツボ。第2エンジン第3エンジン始動!。舌噛まないで!」

  ジェット機の両翼のエンジン全開の炎!

  コックピットでガッとGが掛かる!。

葉月「ウッ!」

  グングン遠ざかる黒ジェット。

瑠依「ダメだッ、日本の巡視船はいないの!?」

葉月「いるけど今入口付近だ、間に合わない」

  どんどん遠ざかる黒ジェット。

  必死で食らいつく戦闘機。

  通行船の間をクネクネぬっていく。

  戦闘機エンジン、さらに真っ赤に!。

葉月「ダメエエエ!オーバーヒートする!」

瑠依「今日持てばいいッ!燃えるまでいく!」

  ギューンとかっ飛ばす戦闘機。

  一方、減速する黒ジェット。

  飛ばす戦闘機。

瑠依「近づいてきた!」

葉月「見えた!。ああまだ遠い」

  余裕で操縦する黄。

黄(けられてるな)

  4次元レーダーを見る趙。

趙(日本の諜報局だ)

黄(巻こう)

  黒ジェット突然Uターン!。

  驚愕する葉月と瑠依!。

瑠依「わああッ!引き返しやがった!」

葉月「なんてスピード!」

  黒ジェット、華麗に戦闘機の横を逆走していく!

瑠依「ふざけやがって!」

葉月「どうしてあんなに素早く転回できるの!?。中国はどんな兵器を開発したの!?」

  余裕で操縦する黄。

  余裕で4次元レーダーを見る趙。

趙(あそこに空間のくぼみがある。隠れよう)

  黒ジェット、4次元空間のくぼみに姿をくらます。

  じっと停止している黒ジェット。

  そこを行き過ぎる戦闘機。

瑠依「消えた!。どこへ!?」

葉月「くそうッ、3次元レーダーでは分からない!」

  ゆらゆら通行船の間をぬってコスモロードの空間内を探す。

瑠依「あれ、あそこ、なんだろう?。くぼみ」

葉月「初めて見た。4次元空間にあんな場所が……」

  カメラでくぼみにズームを掛ける。

  モニターを見つめる葉月と瑠依。

葉月「影?」

瑠依「動かない……」

  戦闘機、ゆるりと近づく。

  突然轟音!。

瑠依「わッ!」

  大型貨物船が横切る!。

  デカい長い!。

瑠依「(イライラ)チクショウ!」

葉月「(冷静にモニターを凝視)」

  貨物船が通過、とその瞬間黒い影がピュッと動く!。

葉月「やっぱりいた!。逃げられた!」

  戦闘機、コスモロードの真ん中へ。

  モニターで前後左右を確認。

  凝視する葉月、見つけきれない。

葉月「うーん……」

瑠依「ヤロウ、どこに!」

  黒い影!。

葉月「いたッ!。ソリュージュの方向!。急いで!」

  ビューッと飛ばす戦闘機!。

  余裕で操縦する黄。

  4次元レーダーを見る趙。

趙(ここだ。東方向へ曲って)

黄(壁よ?)

趙(行ける)

  黒ジェット、右へ曲がって突き進む。

黄(行けた!)

趙(重力空間に入った)

  グングン進む黒ジェット。

黄(重力だ!。引き込まれていく!)

  グングン揺れながら空間を落ちていく黒ジェット。

黄(まずい、ジェットが効かない。制御できなくなる。この船じゃムリだ。大型船がいる)

趙(あとちょっとなのに)

黄(戻ろう、危険すぎる)

趙(了解)

  黒ジェット、Uターンしてもと来た空間へ戻る。

  突き進み戻る黒ジェット。

黄(重い、尾翼が動かない)

趙(もう少しよ)

  ゆったり進む黒ジェット。

趙(コスモロードへ出るよ)

  黒ジェット、コスモロードの中央空間へ出る。

  が、なんとそこには戦闘機!。

瑠依「いやがった!」

黄(やばい!)

趙(逃げて!)

  黒ジェット、出口へ全速力!。

瑠依「逃がすか!」

  戦闘機、ぶっ飛ばす!。

  コスモロードの出口付近。

  通行船で渋滞している。

  黒ジェット、大型貨物船にコバンザメのように張り付く。

瑠依「ヤロウ、民間人を盾にしやがって」

  黒ジェット、じっと出口が開くのを待つ。

  見張る戦闘機。

葉月「出たところで逮捕よ。そのままソリュージュの留置所へぶち込んでやる」

  入り口が開く。

  貨物船が宇宙空間へ出る。

  黒ジェットも追随する。

  戦闘機も追う。

  !。

  黒ジェット逆噴射!。コスモロードへ!。

  慌てて戦闘機も逆噴射!

  が、客船にぶつかりそうになる!。

  客船から戦闘機に無線!。

大声「FUCK YOU !」

瑠依「やれやれ……」

葉月「やつら重力地点を発見したようね。専用のレーダーも持っている。私らの動きを完璧に読まれた」

瑠依「いつのまに開発したんだ、それも誰が」

  また黒ジェットは貨物船にコバンザメ。

  見張る戦闘機。

  出口が開く。

  貨物船が出る。

  黒ジェットも追随。

  戦闘機も出る。

  黒ジェットまた逆噴射。

  戦闘機も冷静に逆噴射。

  出口が閉まろうとする。

  その瞬間黒ジェット急発進!。

瑠依「ワッ!、バカッ!」

  戦闘機も急発進!。

  出口が塞がる!

  戦闘機、ギリギリで宇宙空間へ!。

  ズワワーン!。

  中国空母が待ち構えていた!。

瑠依「(はか)られた!」

葉月「逃げてッ!」

  黒ジェットは空母内に収容。

  その瞬間、葉月はモニターで黒ジェットのコックピットの窓を確認する。

葉月「あの野郎!」

瑠依「誰ッ!?」

葉月「趙思涵スーハンだッ!」

瑠依「じゃあ操縦していたのは黄欣怡シンイーか!。あいつらッ!」

葉月「この借りは返す、とにかく逃げて!」

  戦闘機、宇宙空間を全速力!。

  空母から白いジェット機が発進。

  葉月たちにミサイル発射!。

  !。

  戦闘機の横の岩を爆破!。

  爆風で戦闘機が激しく揺れる!。

瑠依「うわあ!」

葉月「バラバラにされるッ、逃げて!」

  戦闘機逃げる逃げる!。

  白ジェット追う追う!。

  白ジェット2発目発射!。

  間髪入れず3発目発射!

  ミサイルが戦闘機のコックピット横をギリギリでかすめる!。

  瑠依、操縦(かん)をグイグイ操る。

  ウネウネかわしながら猛スピードで逃げる!。

瑠依「歯くいしばれ!」

葉月「(グッと歯を食いしばる)」

  戦闘機、正面の岩にミサイル発射!

  木っ端みじん!、その中を突き破る!。

  後方の白ジェットに岩の破片が降りかかる。揺れる白ジェット。

  逃げる逃げる戦闘機!

葉月「90度行ける!?」

  戦闘機、垂直方向にグーンと突進!。

  所狭しと広がる無数の星屑の空間へ。

瑠依「どこ、ここッ!?」

葉月「銀河系の果てだ、星屑しかないッ」

  戦闘機、狭い星屑の間をぬうようにクネクネ逃げる。

  白ジェットもクネクネと蛇のように追う。

  両機、星屑空間を抜ける!。

瑠依「どこかワープ空間ないッ?」

  葉月、レーダーを必死で探す。

葉月「(苦しい)んんん、無いなあ……」

  白ジェット後方から機関銃で威嚇。

  バババババッとコックピットをかすめる。

  戦闘機、宙返りして背後に回ろうとする。

  白ジェットもグーンと後を追い、回らせない!。

  レーダーを見る葉月、何かに気付く。

葉月「何か空間があるッ」

  が、すぐさまレーダーがガーガー狂う!。

葉月「クソウッ妨害しやがった!」

瑠依「どっちッ?」

葉月「西50度!」

  戦闘機、左手へギュンと急旋回。

  小惑星にぶつかりそうに!。

  必死でよけた!。

  しかしまた陰から小惑星が!。

  ミサイル発射!。

  小惑星粉砕!。

  その真ん中を突進!。

  突き進む。

  レーダーに反応アリ!

葉月「そこに異次元空間がある!」

  そこへ背後に白ジェットが!。

瑠依「しまった!後ろ取られた!」

  瑠依、操縦桿の黒いボタンを押す。

  戦闘機の船底から弾薬が落ちる。

  爆破!。

  煙幕が宇宙空間に広がる!。

  グラグラゆれる白ジェット。

  宇宙空間に赤い口が開いている。

  入り込む戦闘機!。

  白ジェットも追って入り、思わずミサイル発射!。

  外国の工事艇を爆破!。

瑠依「バカめ、ケンカ売ってやがる」

  工事艇、調査艇、パトロール艇、貨物船などがウヨウヨしている。

葉月「建設中のワープ空間だ!」

瑠依「どこの国!?」

葉月「分からないッ突き進むしかない!」

  宇宙船の間をクネクネ猛スピードで突き進む!。

  ワープ空間の警備艇が発進。

  白ジェットの背後につく。

葉月「自業自得ッ」

瑠依「これ、どこまで続くの!?」

葉月「今が逃げ切るチャンス、行けるとこまで行って!」

瑠依「オーライ!」

  後ろから警備艇が警告灯を点滅。

  白ジェット、クネクネと逃げる。

  警備艇、パトランプとサイレン!。

  白ジェット構わす加速!。

  戦闘機、白ジェット、警備艇の順で激しい追跡劇!。

  空間内には工事艇、調査艇がうようよしている。

  その狭い隙間をぬって進む戦闘機。

瑠依「ダメだ!、トランスフォームする!」

  瑠依、赤いボタンを押す!。

  戦闘機、本体を切り離し、先端の小型ジェットで加速!。

  小さいのでスイスイ隙間をぬっていく。

  距離を離す戦闘機。

  モニターで後方を見る葉月。

葉月「少し差がついた!」

  必死で追ってくる白ジェット。

  追随する警備艇。

  うねうね進む3機!。

  突き進む戦闘機の前を工事艇が横切る。

  ぶつかりそうに!。

瑠依「(必死で操縦桿を引っ張る!)」

  ギリギリで避ける!。

  戦闘機、そのまま加速で直進!。

  びゅんびゅん飛ばす戦闘機!。

  遅れを取る白ジェット。

  クネクネ飛行し警備艇を惑わす。

  警備艇、白ジェットに警告ミサイル発射。

  翼の先端に当たる。

  白ジェットの背後にピタリと着く警備艇。

  白ジェット、後方にミサイル発射!。

  !。

  警備艇、爆破、撃沈!。

葉月「バカな!」

瑠依「なに考えてんの!?」

  白ジェットもトランスフォーム。

  後部本体を切り離し、加速!。

  グングン進む白ジェット。

  逃げる逃げる戦闘機!。

  うねうね工事艇をよけて突き進む!。

  ぶつかりそうになる!。

  でもよけて突き進む!。

瑠依「出口はッ!?」

葉月「まだ!」

  グングン進む戦闘機。

  追う白ジェット。

  葉月、モニターを見る。

  白ジェット、ついに背後に追いつく。

葉月「取られた!」

瑠依「クソッ(操縦桿を必死で揺らす!)」

  揺れながら逃げる戦闘機。

  白ジェット、機関銃発射!。

  戦闘機の翼の先端をかする!。

  前方に建物が!。

  葉月、モニター確認。

葉月「中継ステーション!」

瑠依「救難信号だしてッ!」

  葉月、タッチパネルを操作。

  ビュウウウンッ!

  ステーションを突っ切る2機!。

  葉月、パネルの英語を読む。

葉月「反応した!」

  ステーションの緊急ランプが光る!。

  ステーションから警備艇発進!。

  逃げる戦闘機、追う白ジェット!。

  背後から警備艇。

  「止まれ」の警告信号!。

  白ジェット、警備艇に威嚇機関銃!。

  汗だくだくの瑠依と葉月!。

  飛ばす戦闘機!。

  また工事艇とぶつかりそうに!。

  横によけた!。

  しかし正面からまた工事艇が!。

瑠依「(操縦桿を力いっぱい前へ!)」

  戦闘機、急に前に沈む!。

  その上空をスレスレで工事艇が進む。

  バキイイイッ!

  工事艇、戦闘機の垂直尾翼を吹き飛ばす!。

  瑠依、切り返して何とか中央空間へ!。

  警備艇、白ジェットの背後から警告音。

  白ジェット、煙幕弾発射。

  警備艇、煙幕に幻惑されてグラグラ!。

  しかし粘りつく。

  突っ切っていく戦闘機!。

  すごい汗の瑠依!。

葉月「ガンバレ!」

  葉月、モニターを見る。

  白ジェット、遅れをとっている。

葉月「よし、警備艇がうまく捕まえてる」

  瑠依、操縦桿を左へ。

瑠依「邪魔だッ」

  戦闘機、前方の貨物船を追い抜こうと横へよける!。

  しかし、よけた正面から小型船が!。

  正面衝突か!。

  瑠依、操縦桿を身体ごと右へ!。

  貨物船に側面衝突!。

  ガギィーッと衝突音!。

  瑠依、切り返して何とか中央空間へ!。

  機体ボロボロ!。

  構わず飛ばす瑠依!

  アクセル、ブレーキ、操縦桿を必死に操る!。

  どんどんぬって進んでいく。

  工事の残骸にぶつかりそうになる。

  葉月、思わず体をのけぞる。

  ギリギリ!、すり抜けていく!。

  また船が現れる。

  減速、回転、エンジン全開!。

  必死の瑠依!。

  また中継ステーション。

葉月「まだ建設中だ!」

  突然浮遊する巨大な鉄筋!。

  いよいよぶつかる、もうダメだ!。

二人「ワアアアアアアアアアアアアッ!」

  瑠依、逆噴射!。

  くるくる狂ったように回転!。

  瑠依、切り返して中央へ!。

  後方の白ジェット、警備艇に機関銃。

  警備艇の翼のエンジンに当たり煙!。

警備艇も発砲。

  かわす白ジェット。

瑠依「今、どこッ!?」

葉月「3次元レーダーじゃ分からない!」

  バキイイイーッと衝撃!。

  巨大貨物船の側面に衝突!。

  切り返す瑠依!。

  ズタボロ!。

  後方の警備艇、ミサイル発射!。

  白ジェットの翼をかする!。

  白ジェット、警備艇にミサイル!。

  !。

  警備艇、爆破、撃沈!。

  白ジェット、エンジン全開!

瑠依「やばいッ、追いつかれる!」

  戦闘機、正面モニターに物体が映る。

葉月「何かある!。出口かもしれない!」

  背後を取る白ジェット。

瑠依「きたッ!」

  逃げる戦闘機!、追う白ジェット!。

  白ジェットのミサイルが照準を合わせる。

瑠依「撃たれる」

  白ジェット、ミサイル発射!

  かわす瑠依!。

  逃げる戦闘機、追う白ジェット。

  両機、ボロボロ!。

  前方に光!。

葉月「宇宙だ!」

瑠依「エンジン全開!。燃えてもいい!。突っ切る!」

  戦闘機、加速!。

  白ジェット、必死に食らいつく。

瑠依「しぶてえ野郎ッ」

  前方に小さな物体。

葉月「船かッ!?、こんなところにッ」

瑠依「救難信号!」

  葉月、タッチパネルを操作!。

  迫る白ジェット。

葉月「もうすぐ出くわす!」

  船が見えてきた!。

  ズワワーン!。

葉月「デカい!」

瑠依「どこの船ッ!?」

葉月「インドの巡視船だッ!」

瑠依「なんでこんな僻地にッ?」

  モニターに英語の文字が!。

葉月「収容してくれるッ、助かった!」

  狂ったスピードで迫る白ジェット!。

瑠依「やばいッ自爆する気だ!」

  瑠依、操縦桿を思いっきり引っ張る。

  戦闘機、急転回!。

  丸裸になる白ジェット。

  インド船、ミサイル発射!。

  !。

  大爆破!、白ジェット、撃沈!。

  残骸が宇宙に無残に散らばっていく。

葉月と瑠依「(大きなため息!)」

  ぐったりの二人。


〇 日本宇宙軍・食堂(後日)

  コーヒーを飲みながらテレビを見る葉月と瑠依。

  ニュース番組、アナウンサーが話す。

テレビ「インドのGDPが今年の半ばまでに50兆ドルを超え、中国を上回り、世界1位になるとIMFの機関が明らかにしました」

瑠依「人口も1位、半導体も1位、ついにGDPも1位か」

葉月「悔しいだろうな、中国は」

瑠依「あんな銀河系の果てにまでワープ空間を拡張している」

葉月「まあ、そのおかげで私たちも助かったんだけどね」

瑠依「追っかけてるのが中国の戦闘機じゃなかったらどうだったろうね?」

葉月「どっちも撃ち落とされてたさ」

瑠依「日本がGDP2位だったって本当なの?」

葉月「大学の現代史の教科書に出てくるらしい。小・中・高の日本史では習わない」

瑠依「泣ける……」


〇 日本宇宙軍・基地(朝)

  快晴の青空!。

  楊が開発した中国の豪華旅客戦。

  林田を乗せてソリュージュへ行く予定。

  その内覧式が報道陣を集めて行われていて盛り上がっている。

  林田が大勢の政府関係者や記者たちにまつりあげられている。


〇 都内の高級ホテル(正面玄関)

  宋がスーツ姿で出てくる。

  続いてジャンがラフな私服で出てくる。

  2人、それぞれの迎車に乗り込む。

  走る迎車。

  葉月と瑠依も車に乗り2人を追う。

  運転は瑠依。

  都内を飛ばしていく2台の迎車。

  葉月と瑠依もグングン追う。

  

〇 千葉方面の道路

  都心から少し離れてくる。

  飛ばす2台の迎車。

  葉月たちも追う追う。

  2台が左右に分かれた。

  瑠依、急停車!。

  葉月、すぐさま降り、タクシーへ。

  瑠依・葉月、それぞれ発進!


〇 ジャンは羽田へ。追う瑠依


〇 宋は日本宇宙軍・基地へ。葉月追う


〇 羽田空港(全景)

  降りるジャン。

  瑠依も降りて急いで追う!。


〇 羽田・アライバル

  ラフな若者の服で到着する趙と黄。

  ジャン、2人の頬にキス。

  笑顔の3人。

  それを後方で見張る瑠依。


〇 羽田・正面入口

  迎車へ乗り込む3人。


〇 羽田・路肩

  走ってきた瑠依、車に乗り込む。

  発進!。


〇 都内道路

  飛ばすジャンたち3人。

  追う瑠依。


〇 都内・元のホテル

  ジャン・趙・黄、笑顔で入っていく。

  それを見届けた瑠依、車を置いてホテル屋上へ。


〇 ホテル屋上

  ヘリコプターに乗り込み操縦する瑠依。

  飛び立つ!


〇 日本宇宙軍・基地

  豪華旅客船。

  内覧会で盛り上がっている。

  後方で宋を見張っている葉月。

  背後から瑠依が合流。

葉月「どうだった?」

瑠依「ジャンが趙と黄と合流した。今ホテルに入った」

葉月「あいつら……」

  セレモニーは司会者の挨拶で一旦休憩。

  宋を追う葉月と瑠依。


〇 会場のバックヤード

  関係者で入り乱れている。

  そのどさくさに紛れて宋と楊と林田が談笑している。

  林田と宋はつながっていた。

  楊はラフな服装。

  楊が林田の肩を笑顔で軽く叩く。

  笑顔で応える林田。

  馴れ馴れしく林田をさわる宋。

  それを後方から観察する葉月と瑠依。

葉月と瑠依「(目を合わせ頷く)」


〇 宋とジャンのホテルロビー

  プラダのスーツを着たセレブ然とした葉月が登場。

  その横にビジネススーツを着た瑠依。

  その後ろにデカいヴィトンのトランクを2つ持ったスーツの男性諜報員。

  3人、ズンズンフロントへ。


〇 フロント

葉月「予約していました黒田由加です」

フロント「お待ちしておりました」

  深々と一礼。


〇 同・最上階スウィートルーム

  入ってくる葉月たち。

  直ちに作業に入る。

  パソコンをセッティングする葉月と瑠依。

  AI装置を立ち上げる男性諜報員。


〇 ホテル・ロビー

  基地から帰ってきた楊・宋・林田。

  それぞれの部屋に分かれる。


〇 楊の部屋・前

  楊、鍵を開け入っていく。

   ×   ×   ×

  気取って正装をして出ていく。

  それを後方から確認する葉月と瑠依。


〇 ホテル大広間

  大パーティー、お祭り!。

  セレブで賑わう!

  やってきた楊、溶け込み談笑する。

  それを背後から確認する犬養。

  犬養、葉月に電話する。


〇 楊の部屋の近く

  電話に出る葉月。

犬養「いいぞ、始めろ」

  葉月、電話を切り、マスターキーで瑠依と共に楊の部屋に侵入。

  瑠依、楊のジェラルミンケースの鍵穴に小型装置をとりつける。

  ボタンを押すと装置がウーンと作動。

  じっと見守る葉月と瑠依。


〇 パーティー、ゴキゲンで酒を飲む楊


〇 楊の部屋

  装置がピッと鳴り、カチャッとジェラルミンケースの鍵が開く。

  中から楊のパソコンを取り出す瑠依。

  電源をつなぎ、今度はまた別の装置を取り付け、ボタンを押し作動。

  ウーンとパソコンのロックを解析しだす。

  じっと見守る葉月と瑠依。


〇 ホテル全景・もうすっかり夜


〇 パーティーは大盛り上がり

  酒に酔ってゴキゲンで座っている楊。

  若く綺麗な女たちが楊を接客する。

  ニコニコだらしない楊。

  眉間にしわを寄せ腕時計を確認する犬養。


〇 楊の部屋

  装置がピッと鳴りパソコンが立ち上がる。

  瑠依、自分のパソコンを楊のパソコンにつなぎ、電波USBを差し込む。

  そのUSBが赤く点滅。


〇 スウィートルーム

  男性諜報員がセットしたAI装置の電波ランプが赤く点滅。

  AIがウーンと作動し、モニターに複雑な文字数字が目まぐるしく乱れ飛び楊

  のパソコンの遠隔解析を始める。


〇 楊の部屋

  じっと眉間にしわを寄せて待つ葉月と瑠依。落ち着かない。

葉月「まだ……?」

瑠依「うーん……」

  犬養から電話。

  葉月、出る。

  パーティー会場の犬養、イライラ。

犬養「まだかッ?、もう引っ張れんぞッ」

葉月「待ってください」


〇 パーティー会場

  楊、酔っ払って立ち上がり、女の子たちの制止を振り切って歩いていく。


〇 スウィートルーム

  AIの画面に「not found」の文字。

  瑠依に電話する諜報員。

諜報員「ダメだ、何も出ない」


〇 楊の部屋

瑠依「なにッ!?」

  葉月に犬養から電話、出る。

犬養「ダメだ!、もう出ろ!」

葉月「(瑠依に)退散しよう、こっち来てる!」

瑠依「チクショウ……」

  葉月と瑠依、急いで片付ける。


〇 楊の部屋・前

  そっと出てくる葉月と瑠依、去っていく。

  その入れ違いで楊がフラフラ酔っ払って入室。


〇 スウィートルーム

  疲れて議論する犬養・葉月・瑠依・男性諜報員。

瑠依「そのAI、どこ製?」

工作員「アメリカ製。AIのせいにされちまっちゃこまるなあ……」

瑠依「ごめん」

葉月「絶対あるッ。5次元空間の資料が!。持ってこないはずがないッ」

瑠依「楊の中国のマンションは?」

犬養「今、上條君がやっている」


〇 北京・楊のマンション

  麻衣のほか3人の諜報員が部屋の中を荒らしまわっている!。

  机の中をかき回す。

  ベッドの下。

  洋服ダンス。

  本棚の本一冊一冊。

  風呂場の換気口。

  じゅうたんの下。

  便器の水洗タンク。

  天井裏。

  ベランダの植木。

  ソファの底。

  キッチンの収納棚。

  小物入れ。

  くつ箱の中。

  麻衣、部屋の図面を広げる。

  床下を金属探知機。

  諜報員、がっくり頭を垂らす。

諜報員「ありません……」

麻衣、冷静な表情で考える。

麻衣「公安の連中まだいる?」

諜報員「酒飲んで寝てるんじゃないですか」

麻衣「たたき起こして」


〇 スウィートルーム

  悩み込む犬養・葉月・瑠依・諜報員。

犬養「楊と林田が話し込んでいた?」

瑠依「バックヤードでずいぶん親しげに」

葉月「短期間でいつのまに」

瑠依「どうやったらつながれるんだ?」

犬養「臭うな」

葉月「宋が間にいましたね」

犬養「林田にこの話を持ち掛けたのは誰だ?」

葉月「卓球協会ですよ」

瑠依「卓球協会には?」

葉月「ソリュージュのオーナー。でも日本と中国、二人いる」

犬養「中国……」

葉月「探り入れますか?」

  犬養の電話が鳴る。

  出る犬養。

犬養「上條君ッ。なんか出たか?」

  犬養、電話の話を聞きこむ。

犬養「なにッ!?」

  ビクッとする3人!。

犬養「分かったッ、時間がない、とりあえず切る!」

  スマホを切る犬養。

瑠依「何て?」

犬養「楊と林田は親子だ。林田は国籍を変えている。生まれたときに日本人の養子になった」

諜報員「じゃあ、もしかしたら?」

葉月「!」

瑠依「!」

犬養「急げ!」


〇 ホテル・林田の部屋

  写真立てには楊との仲睦まじい写真。

  林田のパソコンを操作する葉月と瑠依。


〇 スウィートルーム

  AIが無線で遠隔解析している。


〇 ホテル・林田の部屋

  犬養に電話をする葉月。

葉月「ホントに大丈夫なんでしょうね?」

犬養「ああ安心しろ、若いってのはいいネッ」


〇 ホテル・女性客のツインルーム

  若い女2人相手にセックスする林田。


〇 スウィートルーム

  グルグル英数字がAIの画面で回る。

  ピンッ!と音。

  ファイルが検出!

  開いて画面を見る犬養。

  葉月に電話で話す犬養。

犬養「ビンゴ。コスモロードの重力地点の座標軸だ」

  続いてピンッとAIが反応!。

  ファイルを開く。

犬養「4次元レーダーの設計図も出てきたぞ」


〇 林田の部屋

瑠依「生まれた時からスパイかよ」

葉月「教育熱心なことで」

犬養の電話「もういい、時間がない、退散しろッ」

葉月「了解ッ」


〇 ホテル・女性客のツインルーム

  疲れて裸でベッドに横たわっている林田と女二人。


〇 林田の部屋を後にする葉月と瑠依


〇 日本宇宙軍・基地(全景)

  快晴!。

  ソリュージュへの豪華旅客船が出発を控えている。

  ゴーゴー響くエンジン音!。

  外野はお祭り騒ぎ!。

  遠くからマスコミやオーディエンスがスマホ・双眼鏡・巨大ビジョンで「まだ

  かまだか」と待ちわびている。


〇 同・デパーチャー

  出発式典が盛大に行われている。

  物凄いフラッシュの嵐。

  林田とホテルソリュージュオーナー渡辺が握手している。


〇 日本宇宙軍・基地

  旅客船の機体が地響きを鳴らしている!。

アナウンス「4・3・2・1・リフトオフ」

  船底エンジンからマグマのような炎が噴き出し、一気に白煙が大地を覆い巨大

  な雲のように視界を包む!。


〇 轟音と共に飛び立つ旅客船


〇 旅客船の底の中

  中国の宇宙船が潜んでいる。


〇 その宇宙船の操縦室

  趙、黄、宋、楊、ジャンがシートベルトをして座っている。


〇 さらに宇宙船の底の中

  趙と黄が乗る黒ジェットが潜んでいる。


〇 上昇していく旅客船


〇 どんどん空へ上がっていく


〇 大気圏

  もう空間には巨大な旅客船が独りぼっち。

  下には青い地球。


〇 宇宙船・操縦室

  神妙な面持ちの趙と黄。


〇 物凄いスピードで宇宙を進む旅客船


〇 コスモロードの入り口へ近づく旅客船

  入り口がモワッと開く。

  フワリと進入する旅客船


〇 宇宙船・操縦席の宋とジャン、ニヤリ


〇 入り口が閉じる


〇 真っ赤なコスモロード内

  エンジン全開!

  ゴーッと全速力で進む旅客船。


〇 4次元空間を突き進む旅客船


〇 宇宙船・操縦室

  4次元レーダーを囲む趙、黄、宋、楊、ジャン。

  4次元レーダーで旅客船がどんどん進んでいくのが確認できる。


〇 4次元レーダー

  旅客船がコスモロード出口付近にいることが分かる。

楊(まもなく出口です)


〇 コスモロード・出口付近

  旅客船、減速してやがて止まる。

  すると船底から趙たちを乗せた宇宙船がするりと出て右へそれていく。

  旅客船は何事もなくスッと発進。

  そのまま出口へと消えていく。


〇 宇宙船・操縦室

  4次元レーダーを見入る趙、黄、宋、楊、ジャン。

  どんどん中央空間からそれていく宇宙船。

  やがてピコンピコンと重力の信号が点滅しだす。

宋(重力だ!)

楊(来ましたね)

ジャン(よしッ)

  4次元レーダー、宇宙船を表す点が重力の方へ進んでいく。

楊(これからGが掛かります。みなさん自分のシートへ)

  5人、それぞれのシートに着席し、しっかりとベルトを締める。

  前面モニターに4次元レーダーが写し出される。

  どんどん重力方向へ進んでいく宇宙船。

宋「(モニターを真剣に見入る)」

ジャン「(こちらも真剣)」


〇 コスモロード・重力空間

  ゴーッと落ちていく宇宙船。


〇 宇宙船・操縦席

  ガッと5人全員の体にGが掛かる。


〇 コスモロード・重力空間

  落ちていく宇宙船、逆噴射!

  落下が止まりフワリと飛行する。


〇 宇宙船・操縦席

趙(予定通りだ)

黄(この先だな)


〇 映し出される4次元レーダー

進んでいく宇宙船

楊「順調だ」

  !。

  さらにGが掛かる5人。


〇 コスモロード・重力空間

  落ちていく宇宙船。

  さらに逆噴射!

  スッと制御される宇宙船。


〇 宇宙船・操縦室

  コーッと操縦音だけ。

  黙って4次元レーダーを見つめる5人。

ジャン「(緊張の表情)」

宋「(眉間にしわ)」

楊「(4次元レーダーを固唾を飲んで凝視)」

  緊張する表情の5人!。

  重力の点滅が消えている空間がレーダーに現れる。

趙(あれは?)

楊(重力空間の果て、5次元空間への入口かもしれない)

宋(やった!)

ジャン(ブラボー!)

趙・黄「(見つめ合いニヤリ)」


〇 4次元空間を突き進む宇宙船


〇 突き進む宇宙船、突然フワリと浮く


〇 宇宙船・操縦室

  みんなのGが解け身体がダラリとリラックスする。

趙(どうした?)

黄(Gが解けた)

楊(重力空間を抜けたかもしれない)

ジャン・宋「(ニヤリと喜ぶ)」


〇 スイスイ突き進む宇宙船


〇 宇宙船・操縦室

  席を立ち4次元レーダーを囲む5人。

4次元レーダーから重力の反応が消える。

宋(重力を抜けた)

楊(新しい空間に入った)

  宋とジャン、ガッシリ握手!。

趙と黄「(冷静に笑み合う)」

ジャン(シャンパンを開けよう!)

  ジャン、棚からシャンパンを取り出しサッとナイフでフタを切る!。

  ポンッと飛び出すシャンパン。

  カンパーイ!。

  みんなグラスを持って祝杯を上げる。


〇 空間をどんどん進む宇宙船


〇 4次元レーダーから宇宙船が消えていく


〇 空間を進む宇宙船

  4次元の赤い色が薄くなっていく。


〇 どんどん進んでいく宇宙船


〇 宇宙船・操縦室

  5人、前面のモニターを眺める。

  順調に進んでいく。

  が、しかし前方に……

5人「?」

  前方に黒い物体が……。

  宇宙船、進む。

物体に近づいていく。

  やがて物体がはっきりと見える。


〇 クッと止まる宇宙船!


〇 なんと日本宇宙軍が待ち構えている!

  戦艦、戦闘機、空母がズラリ!。


〇 葉月・瑠依の鋭い眼光!


〇 ギョッとする趙と黄の表情!


〇 戦艦・操縦席

OP「退却命令の信号に応じません!」

  犬養が腕を上げる。

犬養「全戦闘員、用意!」


〇 全艦の砲が中国宇宙船に照準を合わせる


〇 戦艦・操縦席

  犬養が腕を振り降ろす。

犬養「撃てえッ!」


〇 狂った花火のようなミサイルの嵐!

  ギュンギュン撃ちまくる日本宇宙軍!。

  ハチの巣にされる宇宙船。


〇 宇宙船・操縦室

宋(ダメだッ逃げられん!)

ジャン(反撃しろ!)


〇 中国宇宙船、ミサイル発射


〇 黒ジェット・コックピット

  趙と黄が慌てて乗り込む!。


〇 中国宇宙船

  日本のジェットが旋回し爆撃していく。


〇 中国宇宙船・船内通路

  逃げる宋とジャン。

宋(救命艇へ!)

  楊も後から必死に急ぐ!。


〇 中国宇宙船の船底から黒ジェット発進


〇 葉月と瑠依の戦闘機コックピット

  葉月と瑠依、モニターで黒ジェットが逃げていくのを確認。

葉月「発進ッ!」

瑠依「逃がすかッ!」


〇 日本軍戦艦から戦闘機が飛び出す!


〇 撃ち合いの両軍!


〇 戦艦・操縦席

犬養「降伏しろと続けろ」

  オペレーター、信号発進。


〇 さらに撃ち合いの両軍!


〇 4次元空間の先の先の空間

  逃げていく趙たちの黒ジェット!。

  追う葉月たちの戦闘機!。

  両機、進むにつれ空間が狭く細くなっていく。

  追う葉月たちの戦闘機。

  もの凄いスピードとジェット音!。

瑠依「今度のは前のとは違うぞ!」

  突き進む戦闘機!。

  前方に黒い物体。

葉月「いたッ!」

  戦闘機、黒ジェットに追いつく。


〇 中国宇宙船と日本軍の撃ち合い

  中国の戦闘機が飛び出す。

  しかし、あっけなく日本の戦闘機に撃ち落とされる。

  激しい撃ち合い。

  中国宇宙船、どんどん破損していく。


〇 戦艦・操縦室

犬養「キャノン砲を撃て」


〇 キャノン砲、ウイーンと照準が合う

犬養「撃てッ!」


〇 キャノン砲ドゴーンッと発射!

  中国宇宙船のど真ん中に直撃!。

  !。

  大爆破!、木っ端みじん!。

  船内で楊が爆死!。

その瞬間、宋とジャンを乗せた救命艇が脱出。

犬養「逃がすなッ」

  日本のジェット、救命艇を撃破!。

  大爆破!、宋とジャンも宇宙に散る。


〇 戦闘空間

  静寂……。

  散り散りに浮遊する残骸……。

  もわもわ爆炎……。

  冷静に見守る犬養。

犬養「国連に連絡しろ」

  ズンとゆっくり前進する日本軍。


〇 4次元空間の果て

  黒ジェットと戦闘機の追跡劇は続く。

  逃げる黒ジェット。

  追う戦闘機。

  逃げる逃げる追う追う!

  曲がる黒ジェット。

  戦闘機も曲がる。

  空間の色が赤から青へ!。

  強いGが掛かる!。

  ウッと体中が引きつる趙と黄!。

趙(重力だ!)

黄(こんな所までッ)

  グラグラ乱れる2機!。

  苦しい瑠依!。

瑠依「操縦が利かない!、気絶する!」

葉月「撃って……!。最後に……!」

  瑠依、ミサイル発射!。

  飛び出すミサイル!。

  黒ジェットの翼に命中!。

  噴き出す煙!。

  クルクル回る黒ジェット。

  空間の色が真っ青に!。

  重力に落とされる2機!。

  上下逆になって落ちる黒ジェット。

  何とか平衡を保つ戦闘機。

  さらにGが4人を襲う!。

  険しい顔の4人!。


〇 パッと真っ黒


〇 黒い5次元空間

  突然2機が飛び出してくる!。

  操縦できず煙を上げてクルクル5次元の果てまで落ちて消えていく黒ジェッ

  ト。

  ユラユラしていたがスッと真っすぐ平衡を取り戻す戦闘機。

葉月・瑠依「(モニターで消えていく黒ジェットを確認)」

無数の星屑。

葉月「黒い空……」

瑠依「なんだ?、銀河系?」

葉月「3次元レーダーも4次元レーダーも反応しない」

瑠依「5次元?」

葉月「分からない」

瑠依「どこか降りれない?」

葉月「調べよう」

  飛行する戦闘機。

  大きな星屑。

瑠依「あそこに小さな惑星がッ」

葉月「何か分かるかも」


〇 小惑星

  着陸する戦闘機。

   ×   ×   ×

  葉月、土を採取し、解析器に掛ける。

  解析器が反応!。

モニターに英語が浮かぶ。

葉月「パラジウムだ!。リチウムもある!」

  どんどん読み上げていく葉月。

葉月「クロム、ニッケル、チタン、セシウム、コバルト、ゲルマニウム。白金まである」

瑠依「レアメタル!。(周囲の星屑を指し)これ、全部がそうなの!?」

葉月「こんな資源が!」

瑠依「ここどこ!?」

葉月「探索しよう。太陽系があるかもしれない」

   ×   ×   ×

  無数の星屑の中を進む戦闘機。

瑠依「これが全部レアメタルだとしたら莫大な国益に」

葉月「ここが5次元だとしたらね」

  突き進む戦闘機。

葉月「?」

  前方に光が!。

葉月「光だッ」

瑠依「接近してみるッ」

  瑠依、操縦桿を前へ。

  どんどん光に近づく戦闘機。

  青い星が見える!。

瑠依「熱だッ!。太陽だ!」

葉月「海の星もある!」

瑠依「着陸しよう!。知的生命体か化石燃料があるかも!」

葉月「うんッ」

  青い星に近づく戦闘機。

葉月「待って!」

瑠依「なに?」

葉月「レーダーが反応している」

瑠依「まさか」

葉月「飛行物体だ」

瑠依「人間以外の生物が?」

葉月「わからない」

  前方に黒い小さな物体が。

  それがだんだん近づいてくる。

  ズンズン迫ってくる!。

瑠依「デカい!」

葉月「何だ?」

  近づいてくる物体。

瑠依「宇宙船?」

葉月「分からない」

もの凄いスピードで迫ってくる!。

葉月「まずいッ。離れてッ!、つぶされるッ!」

  ギューンと90度上へ!。

上昇し巨大物体から離れる。

  巨大物体の頭上に上がる戦闘機。

  モニターで全体像を把握する葉月。

葉月「空母だ!」

瑠依「どこの!?」

  見つめる2人。

  空母から巨大な旗が掲げられる!。

  インドの国旗!。


〇 中国船と日本宇宙軍の戦闘写真

T「この事件はコスモロード紛争と呼ばれた。これにより国連は5次元空間の存在を正式に発表」


〇 宋の写真

T「宋義和ソーイーホー、本名ルイス・オルガド。コスモロード紛争で戦死。フランス政府は病死と発表。中国政府は自国民であることを否定」


〇 ジャンの写真

T「ジャン・ルーベット。コスモロード紛争で戦死。フランス政府は軍の飛行訓練中に事故死と発表」


〇 楊の写真

T「楊紫龍ヨウシリュウ。コスモロード紛争で戦死。中国政府は失踪と発表。林田修一との親子関係は否定」


〇 林田修一の写真

T「林田修一。日本政府により国家反逆罪で国外追放。中国が身柄を保護。卓球界から引退」


〇 趙の写真

T「趙思涵チョウスーハン。コスモロード紛争で5次元空間に逃れる。消息不明。中国政府は、現在も中国宇宙軍において勤務中と発表」


〇 黄の写真

T「黄欣怡コウシンイー。コスモロード紛争で5次元空間に逃れる。消息不明。中国政府は訓練中のケガにより軍を退役と発表」


〇 葉月と瑠依の写真

T「古城葉月と志田瑠依は5次元空間にて日本宇宙軍により救出される。現在、国際司法裁判所にて中国政府と係争中。復帰のめどは立っていない。」


〇 インドの国旗

T「コスモロード紛争の5年前に5次元空間を発見。秘密裏に開発を始め、資源発掘、穀物栽培を進める」


〇 国連の旗


〇 国連・総会ホールの写真

T「国連安保理によってインドの5次元空間における独占行為の是非が国際宇宙法にのっとって審議されたが、アメリカ、イギリスが賛成、中国、ロシアは反対、フランスは棄権。結論は出ず、依然インドの実効支配が続く」


〇 エンドクレジット

(了)


AIでマンガを描くために創作した作品です。でも、残念ながらまだAIにはマンガを描くスペックはありません。かなり粘ってソフトを探したのですが本格的なマンガを描くのはまだ無理でした。1コマのイラストなら完璧なのですが、連続するコマの統一性を考えた場合、完成度を考慮すると技術的な問題が非常に多く、まだ実現には遠い話です。早い開発が待たれます。作品を眠らせておくことも考えたのですが、内容に手ごたえがあったのでシナリオ(設計図)だけでも公開しておこうと考えました。小説ではありませんが読み物として充分たのしめる作品だと思います。

この作品はやはりマンガ化かアニメ化が理想的ではないかと考えます。実写の場合、日本映画では近隣諸国の国際情勢を描くことはタブーとされているので企画が通らないと思います。バチバチに中国とインドとフランスが絡んだ経済戦争の話になっていますので……。『パトレイバー2』が好きなのですが、あの企画は今では危険すぎて通らないと思います。辛辣に国家に疑問を投げかけていますから……。でも、30年経った今でも私たちの胸に生々しく突き刺さってきます。早すぎた内容だからこそ公開できた天才的で幸運な作品なのだと思います。キャメロンを始め世界中のクリエイターが今も熱中し嫉妬するのが理解できます。あと大友克洋の『童夢』ですね。どちらもいろんな意味で“やばい”です。やはり日本ではマンガかアニメになりますね。ハリウッド映画では堂々と中国とロシアを敵国として描いているのに、日本ではそれが出来ないのが悔しいです。仮想国家の話ではリアリティと切迫感と説得力を出すのに限界があります。悔しいです。

ネタとしては、5次元空間に新たな銀河系があって、そこに未開発のエネルギーが眠っているという発想は昔から自分の中にありました。でも、それをどうやって物語にするか迷っていたところ、2019年に世界の天体観測チームがブラックホールの撮影に成功しアインシュタインの一般相対性理論が証明されたというニュースが飛び込んで来ました。それで重力を縦軸にしたストーリーが展開できると思いました。そこに日本では少ない女性バディ物。こうなるとあとは落語の三題噺ですね。SFに経済問題を絡ませるところが私の個性と言えるのかもしれません。あとは“めでたしめでたし”にしないところ。あくまでもリアリティにこだわって書いていきたいと思います。なんだかこんなことを書くととてもお堅い作品のように思えてしまいますが、いたって単純なSF女性バディアクション劇なので気楽な気持ちで読んで頂けると幸いです。楽しく読んで頂けましたら、ブックマーク、高評価のほう、よろしくお願いいたします。すみません長くなりました。失礼いたします。(作者)

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