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第八話 初心者講習

「ラルス様。冒険者タグをお渡しします。Eランク、戦士で登録しております。


 一カ月、クエスト受注をしないままでいるとタグは無効となります。


 その場合、再発行には罰金と手数料がかかりますので、お気を付けください。


 その他のルール等については、この冒険者手帳をお読みください」


「ありがとう」


 受付嬢から冒険者タグと手帳を受け取った。

 色々あったが、とりあえずは冒険者登録が出来たようだ。


 結局、冒険者になるしかなかったか……

 ん? でも、これで身分証を持ってる事になるのだから、

 他の職にもつけるんじゃね?


 などと考えていたら、マルグレットに顔をのぞき込まれた。

 

「考えてる事、当ててみましょうか。これで他の所で働けるぞ……


 そんなところでしょ?」


 うっ……A級冒険者、心が読めると言うのか。凄すぎる。


「顔に出てたわよ。でも残念、それは無理なの。


 冒険者タグって、その人間の身元を完全に保証するわけじゃないから」


 むう、いきなり逃げ道をふさがれた気分だ。


 身元が不確かな人間でも、冒険者になれるわけだからな……

 このタグが結局、ほかの場所で通用しないのも仕方ないか。


「それなら、何か簡単そうなクエストでも受注してみるか……」


 と掲示板に向かおうとしたが、マルグレットに肩をつかまれた。


「待って待って。ちゃんと手帳を読みなさい。


 『冒険者に登録した者は、クエスト受注の前に初心者講習を受けること』」


 初心者講習!?

 いきなりクエストは受けれないのか。


「右も左も分からない新人が、クエストを受けた早々に亡くなる……


 なんてことを防ぐための措置よ。


 5人くらいの新人に、1人から2人のA級冒険者が付き添って、指導を受けるの」


「指導? ルールとかは手帳に書いてあるでは?」   


「まあ、実地訓練みたいなものね。近くのダンジョン地下一階をぐるっと巡るの。


 そこで何度か、戦闘も経験してもらうわ。


 地下一階に出没するモンスターは脅威度レベル2程度だし、初心者でもどうにかなるわ」


 冒険者ギルド、思ってたより手厚いサポートしてくれるな。

 それだけ人員不足、いや欠員がしょっちゅう生じているのかもしれない。怖いなあ。

 

 つかダンジョンモンスターが脅威度2程度、といってもスライムの2倍も強いんだぞ。

 初心者で本当にどうにかなるんだろうか? 


「あと30分後に講習会が始まるから、あなたも参加するのよ。


 ふふ、今回は私が指導員をすることになってるから、よろしくね」


 おお、マルグレットが付き添ってくれるなら……これは安心していいな。

 

「ジャイアント・マンティスを真っ二つに出来るほどのあなたなら、


 私のサポートなんていらないと思うんだけど」


 あれはたまたま最後の一撃を横取りしてしまったって事、未だに信じてもらえてない。


「ダンジョンでの行動いかんによっては、冒険者に不向きと判断されて……


 資格を取り消される場合もまれにあるから、気を付けてね」


 むう、用心しよう。




 そして三十分後。

 ギルドの一室に、初心者五人が集まり……

 指導員からの説明がいくつかなされた後。


 街の近くのダンジョン入口へと、向かう事になった。



「ここがダンジョン……」


 街から徒歩五分程度でついたダンジョンは、小屋程度の大きさをした石造りの建物だった。

 小っさ!


 と思ったらそれは単なる入り口で、建物の中には下へと通じる階段が設置されていた。


「はい整列。初心者講習、ダンジョン実地訓練をただいまから開始します」


 マルグレットがぱんぱんと手を叩いた。

 彼女の隣には、もう一人のA級冒険者が立っている。

 

 黒髪にとこどころ白いものが混じっている、中年の男だ。

 彼の装備している鉄鎧には、あちこちに修繕痕やへこみがあり、

 いかにも歴戦の戦士……といった出で立ちだ。


 名はマグヌス。A級冒険者として名を連ねる中でも、トップクラスの実力者らしい。

 今回、初心者の中にちょっとした重要人物が混ざっており、

 その関係で追加されたと説明にあった。


「やれやれ! わざわざこの俺が、歩いてこんな所まで来なきゃならんとはな!


 しかも下賤の者たちと肩を並べて! なかなかにうんざりさせられる!」


 遠慮のない騒々しい声を上げたのは、その重要人物とやらだった。


「申し訳ない、決まりですので。なにとぞ……王子」


 マグヌスが渋い声でたしなめる。


 重要人物の名前は、トルド・ハクヴィニウス。

 この国――フィグネリア王国の第一王子だ。


 なんでそんな人が、冒険者の初心者講習に来てるんだ……と思ったのだが。

 この国の王位継承権は、冒険者として積んだ功績に左右されると聞いた。


 国王自身が、いち冒険者から始めて勇者となり、

 この国の王と成り上がった経緯から出来た制度らしい。


 なんとも大変な制度だ。王子本人もたぶん嫌がってるだろう。

 しかし、確かに重要人物には違いない。

 ゆえに警護を固める意味でも、A級冒険者が通常より一人増えた……ってわけだ。


「しかし、ハクヴィニウス、か。なーんか、聞き覚えがあるような気がする」


 おぼろげな記憶がよみがえってくるような、そうでないような。

 うーん、と頭をひねって思い出そうとするが……

 雲をつかむように手ごたえは感じられなかった。


 思い出せないって事は、重要な事ではないのかもしれないな。

 そもそも、王子様と俺に、関係があるはずもない。

 魔女の小屋にあった本のどれかに、名前が載ってたとかなんだろう。



「では、私について来てください。


 この六人のパーティでダンジョン、地下1階に降ります」


 マルグレットが先だって階段を降り始めた。


 トルド王子がフンと鼻息を鳴らしながら続く。

 その後に、少年と少女がついていく。

 名はエクトル、そしてユリヤ。二人とも軽戦士ふうで、

 同じ講習を受ける初心者だ。


 そして俺が続いて、最後にマグヌス。

 背中に感じるプレッシャー、圧倒されるものがある……

 さすがA級。頼もしい。



 そうして、俺は初めてダンジョンへと足を踏み入れ、

 初めてパーティを組んでの探索へと乗り出したのだった。

 読んでいただきありがとうございます。


 面白かった、続きが読みたい、などと思われましたら、


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 ☆一つからでも、正直な評価をよろしくお願いいたします。


 作品作りの参考にもなりますので…… 


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