表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/59

第二話 スライムスキル獲得

「スライムって、最強じゃん!」


 幼少の頃――5、6歳くらいか。


 魔女の森で一緒に生活している仲間のスライムたちに初めて、

 【スキル】を披露してもらった俺はそう確信した。



 自分の何倍もの高さにまでジャンプできる【軟体特性】。

 殴られたり斬られたりしても平気な【物理無効】。

 

 そして、いま見せてもらった【溶解】。


 スライムが使える固有の技法【スライムスキル】はまさに

 強さの象徴としか思えなかった。



「そうっスか? そんな事言われたの初めてっス!」


 岩の上からぴょんと飛び降りた青のスライムは、照れ臭そうにそう言った。

 岩には、拳ほどの大きさの穴が開いている。


 【溶解】によって溶かされたのだ。


「だって岩が溶けてるんだぜ!? すげえよ!」


「じゃ、じゃあこれはどうっスか?」


 灰のスライムが、うーんと唸ってスキルを発動させた。

 とたんに彼の表面が光沢を帯び、きらきらと光りはじめた。

 【硬質メタル化】だ。


 俺は拳や石を使って叩いてみた。


「うおっ、硬って! つるつる、かちかちだ!」


「ぼくたちは攻撃魔法に弱いけど、こうすれば全然平気になるんス!」


「やっぱ無敵じゃん! すっげー!」


 俺の賞賛に、うれしそうにフワフワと揺れる、青や灰、黄色や赤のスライムたち。   

 しかし、


「……でも、ぼくたちはモンスターの中では最弱なんっスよね」


「そうなんス。外の世界のモンスターや人間は、とてもとても強いらしいんス」


 と口々に言いだした。スライムの口がどこにあるのか未だに分からないけど。


「俺も本で見たけど、とても信じられないな……」



 最近、なんとか読み書きができるようになった俺は、

 住み家である『魔女の小屋』の本棚をあさるようになった。


 なかでも俺は、『モンスター図鑑』という本を繰り返し読んだものだ。


 ドラゴン、ワイバーン、グリフォン……

 世界中のモンスターの情報がつめこまれた、モンスター図鑑。


 人間に対してどのくらい脅威となるか、という基準で格付けされており、

 ゴブリンが脅威度レベル2、オークが3。

 ワイバーンなどは35とケタ違いであり、ドラゴンが頂点の100である。



 そしてスライムは……脅威度レベル、「1」。

 1のモンスターはスライムだけ。


 まさに、最弱……


脅威度レベル1の『最弱種』。


 それがぼくたちなんス」


「すごいスキル持ってるのに……」


 俺は草むらに座りながら、周囲を取り囲んでいるスライムの一匹の頭をぽむぽむと撫でた。

 

「ここに居るスライムたちは大人しいもんな。だからじゃないか?」


「昔はスライム種も、けっこう狂暴だったらしいっス。


 積極的に人間を襲ったりしてたみたいっス」


「でも、冒険者たちにとっては楽な相手らしかったっス。


 良い攻撃の練習台だとか言われて、どんどん狩られていったっス」


 冒険者。

 モンスターを狩るのが職業の人たちをそう言うらしい。


 こんな強いスライムを、楽々狩るなんて。本当に自分と同じ人間なんだろうか?


「で、でも剣で斬られてもなんともないんだろ? 


 攻撃魔法だって、硬くなれば」


「【硬質メタル化】も永遠に持続はしないっス。


 効果切れを狙われたらお終いっス」 


 そうやって、狩られまくったスライムたちは、自然とこの森に集まるようになった。

 魔女が張った結界というもののせいで、人間はこの森に入る事が出来ないのだ。


 せいぜいジャイアント・ボアが居る程度の、外敵が居ないこの森で

 スライムは平和な時を過ごしている。

 ちなみにボアはこの森にしかいないため、今のところ脅威度は示されていない。




「今日、スライムたちにスキルを見せてもらったよ!


 ほんとにすごいんだぜ! じいちゃんも使えるの?」


 その晩、スヴェンじいちゃんとの夕食時。

 じいちゃんの手料理を味わいながら、俺はじいちゃんに聞いてみた。


「むぅ、【スライムスキル】か……使えるぞい。


 どれもこれも、大したスキルじゃないがの」


「そんなことない! めっちゃ強いじゃん!


 スライムが最弱扱いされてるの、絶対おかしいよ!」


 俺は憤慨して言ったが、


「むぅ。外の人間の基準じゃと、そうなるのじゃ。


 わしらは誰も気にしておらんよ」


 と軽く流された。


「それに、冒険者たちが、わしらの祖先たちを狩りまくったことからも分かるじゃろ。


 実力的にも、そういう判断を下されても仕方ないことじゃ」


 冒険者……なんだか、極悪な顔をした人間がスライムを片っ端から狩りつくす、

 恐ろしい光景が目に浮かんだ。


 冒険者って、悪魔か何かではないだろうか?


「おまえもいつかこの森を出て、人間世界の仲間入りをする時がくるじゃろう。


 その時にいろいろと、分かるじゃろうて」 


「つまり、冒険者を見たら敵だと思え、ってことか……」


「むぅ、そうは言っておらん……どういう解釈をしたんじゃ!?


 そもそも冒険者もおまえと同じ、人間じゃろ」


 同じ人間か……どんな修行をしたら、冒険者になれるのだろう。

 外の世界に住む、スライムの二倍、三倍、それ以上の評価をされている、

 とてつもない強さのモンスターを狩る『冒険者』。


 正直、こわい。

 しかし……それ以上に外の世界を見てみたい、という気持ちは日に日に強くなってくる。



 外の人間と対等になるためには、少なくともスライムに並び、

 そして超える強さを持たなければならない。


 そのために、俺はまず何をすべきか。


 いろいろ考えた結果、【スライムスキル】を学ぶことにした。

 そして、スライムスキルは本当は強い事を、この身を持って示すのだ。



「むぅ? 【スライムスキル】などのモンスタースキルは、人間には使えんぞ……

 

 先天的なものじゃし、人間には人間の固有スキルがあるはず。


 全員が持つわけじゃないらしいが」



 とじいちゃんは言ったけど、俺は仲間のスライムたちに協力してもらって、

 数年間の修行の末、全てのスライムスキルを使えるようになった。

 

 そのことをじいちゃんに報告したら、「そんな馬鹿な!?」と叫んで、思い切りひっくり返った。

 スライムの裏表は見た目じゃ分からないから、たぶんだけど。

 読んでいただきありがとうございます。


 面白かった、続きが読みたい、などと思われましたら、


 下にある☆☆☆☆☆で、応援お願いいたします。


 ☆一つからでも、正直な評価をよろしくお願いいたします。


 作品作りの参考にもなりますので…… 


 ブックマークしていただければなお嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ