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第一話 魔女の森のラルス

「……よし。これで今日の分の食べられる野草確保っと。


 今日も暑いなー」


 俺は額に流れる汗をぬぐって、周囲を見回す。

 あたり一面、緑の世界。


 ここは魔女の森の、東端あたりだ。


「後は肉だけど……お、いたいた」


 遠く、木々の間に見え隠れしているのは、ジャイアント・ボアだった。

 この森に住む、イノシシが巨大化・狂暴化したものだ。


 こいつを一匹仕留めれば、一カ月は肉に困らない。


「ほいっと」


 石を拾って投げつけると、怒りの鳴き声をあげ、こちらを見つけた。

 周囲の巨木を次々になぎ倒し、深い森に道を開きながら突進してくる。

 やつの突進は、大岩に穴をうがつほどの威力がある。


「まさに猪突猛進……でもその足元をすくえば」


 俺は地面に触れ、【スキル】を発動させた。

 目の前の地面がどろりと溶ける。たちまち5立方メートルほどの

 落とし穴が出現した。


 俺が使える【スライムスキル】の一つ、【溶解】である。

 

 ジャイアント・ボアは即席の落とし穴に落ちて、動けなくなった。


「ぴったりハマったな」


 ひょいとジャイアント・の背中に飛び乗る。

 そして手のひらを首の後ろに当て、再度スキルを発動。 


 ボアの首から先が瞬時に消え去り、力を失った体がどすんとくずおれる。

 

「いっちょ上がりっと。おーい。みんなー」


 呼びかけると、森の奥からわらわらと現れたのは、スライムの群れ。

 枕ほどの大きさをした、丸っこい水色のモンスターだ。

 

 と言っても、人間には一切危害を加えない、平和主義者だったりする。

 森で平和に暮らしている、世界で唯一の無害モンスターである。


 『外の』人間は最弱種と言ってバカにするらしいが、俺の大事な仲間たちだ。


「大物っスね! ラルス!」


「また凄いのを仕留めたっスね!」


「ラルス、スキルの使い方が上手いっスからね!」


 きゅーきゅー鳴くような声で話しかけてくる。


「んじゃ、この肉、家まで頼むよ」


「いっスよ!」


「ありがとう、助かる」


 スライムたちは、死んだボアの下に潜り込むと、

 その体を伸びあがるように変形させる。


 すると落とし穴から、ボアの死体が外へと押し出された。

 そしてまた死体の下に潜り込み、頭で担いでGボアを運んでいくのだった。


 その様子は、昆虫の死骸を運ぶアリの群れを思い起こさせる。


 俺は野草を詰めたカゴを背負い直し、彼らの後ろからついていった。




「むぅ、おかえりじゃ」

 

 森の中心にある、『魔女の小屋』で俺を出迎えたのは、

 老スライムのスヴェンだ。

 俺の育ての親である。


 16年ほど前……魔女の森の近くに、俺は捨てられていたらしい。


 それを拾って、育ててくれたのがスヴェンなのだ。

 森に住むスライムたちも、快く俺を受け入れてくれた。


 森の真ん中にある、かつて恐ろしい魔女が住んでいたという小屋を、

 住み家として日々過ごしている。


「むぅ、またデッカイのを仕留めたもんじゃな。


 当分、肉三昧の日々じゃのう」


「じいちゃんの料理の腕に期待だな」


「この体に腕は無いがのう!」


 いつものスライムジョークだ。

 確かにスライムには腕も手もないが、器用に体を変形させ、

 家事をこなすことに何も支障はない。


「聞いたけど、またスキルの腕を上げたみたいじゃのう」


「みんなの教え方が上手かったからね!」


 俺が使う【スライムスキル】の全てはこの森に住む、

 スライムのみんなに習ったものだ。


 普通、スライムスキルを人間が使えるなんて、ありえないらしい。

 しかし俺は適性があったのか、吸収力があったのか。

 それなりの年月をかけた修行のかいあって、問題なく使えるようになった。


「むぅ、しかし忘れるでないぞ。我らスライムは人間の言うところの『最弱種』。


 その最弱種が使うスキルなんて、たかが知れてるのじゃ。


 くれぐれも、」


「調子に乗らない、だろ。分かってる」


 己を知れ、背伸びしない、などがじいちゃんの口癖だ。 



 外の人間は、俺なんか比べ物にならないほど、強いみたいだからな。

 ジャイアント・ボアを倒すのに使えるスキルを持つ、

 スライムを『最弱種』よばわりするくらいだし。


 日々の修行は怠ってないつもりだが、ますます研鑽にはげまないと。


 俺はいつか、魔女の森から出て、外の世界を見て回りたい。

 そのためにも……せめて、外の人間と同じ程度には強くならなければ。

 読んでいただきありがとうございます。


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