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第十三話 魔法使いベリト

「それで、ギルドマスターに頼まれた特別なクエスト、って


 一体なんなんだ?」


 ――マルグレットとのパーティ結成から、一晩あけて。

 首都東の門に向かいながら、彼女に尋ねた。


「それは、もう一人のパーティメンバーに合流してからね。


 門の外で待ってるらしいわ」


「俺たち二人だけじゃないのか?」


「そう、二人きりのほうが私も……って! 違います!


 ぎ、ギルドマスターが直属の冒険者を一人、


 加えてクエストに迎えとの指令で……」


 マルグレット、妙に顔を赤らめているな。

 確かに今日も暑くなりそうだが、先走り過ぎではないだろうか。


 首都の外に出るまえ、東門の門番にタグを見せる。

 もらいたてのタグなので、なんとなく見せびらかすようにしてしまった。


 門番はなんの感慨も持たず、「どうぞ」と言ったのみだった。

 まあ当たり前か。 


「……それで、外のどこに?」


「話では、街道沿い、三本並んでる木の近くとか……いたわ」


 マルグレットが指を刺した方向に、猫っぽいシルエットが見えた。

 猫にしては大きい。


 近づくと、猫耳がついたフードをかぶった、女の子の背中だと分かった。 

 体のラインが分かるぴっちりした服に、貫頭衣のような布をまとった

 魔法使いらしい格好だ。


「ベリト・グレヴィリウスさん。ギルドマスター直属の冒険者よ。


 ちょっと変わり者で、普段は自室に引きこもりっぱなしらしいわ。


 マスターは『特別な報酬』で釣って、なんとか彼女を動かす事が出来た、


 と言ってたけど」


 特別な報酬、ってなんだろう?

 マルグレットもそこまでは知らないようだ。

 

「あなたが、ベリトさん?」


 マルグレットが後ろから声をかけると、猫耳が立ち上がって振り返る。


「……そう」


 ギリ聞き取れるくらいの、小さい声で答えた。

 肩までの灰色の髪、そして片方が前髪に隠された翠眼は、

 なんだか眠そうだ。


「今度のクエストに同行させてもらう、マルグレットよ。


 よろしくね。一応、A級の聖騎士。皆の安全は可能な限り守るわ。


 ベリトさんは、索敵系魔法が得意らしいわね。頼りにしてる」

 

「……よろしく」


 二人が握手を交わす。


 しかしベリトは何となく、動きが非常に気だるげというか、

 何もかも面倒くさい……と思ってそうな印象を受けた。

 表情も乏しく、口数も少ない。


 しかし、B級というからにはマルグレットの次に

 実力があるということだ。

 彼女からも学べることがあるだろうか。


「俺はラルス。


 肩書はC級だけど、今日冒険者なり立てだし、実質E級なんだ。


 足手まといにならないよう、努力するので、


 先輩として色々ご指導ねがう」


 と俺も手を差し伸べた。


「……よろ」


 もう疲れた、と言わんばかりのゆったりした動きだ。

 ちょい、と手の先を掴まれる程度の握手。

 挨拶の言葉すら半分に省略された。

 

 しかし、その眠そうな目を良く見ると、言い知れぬ迫力がある……


 運動しなさそうに見えるが、その体はほどよく引き締まっていた。、

 胸はスライムが二匹ほど詰められているのか、

 と思えるほど大きくふくらんでいる。

 防御力が高そうだ。


 その胸をじっと見つめていると、ベリトがぷいっと後ろを向いてしまった。

 

「……へんたい」


 しまった、また何か間違っただろうか。

 スライムっぽさを感じて、親近感を持っただけなんだが……


「そうですよ! 何じろじろ見てるんですか!」


 横っ腹にマルグレットが肘を入れて来た。


 痛くはないが、予想外の方向からのピンポイント攻撃で、

 肺の空気が全部出てしまった。ごほごほ。


「まったく! あ、あなたも大きいのが良いのね!

 

 ますますウルリーカとは会わせたくなくなりました!


 男の人って、どうして……!」


 ブツブツ言いながら、マルグレットは自分の胸を見下ろしている。

 防御力に物足りなさを感じているのだろうか。


 あいにく、スライムスキルは個人用。

 他の人の問題は解決できない……

  



「えー、では、今回のクエストについて」


 東に向かう街道を歩きながら、マルグレットが説明に入った。

 今日も、遠くの山々まで見える快晴だ。


 クエストではあるが、また新天地に向かっているという

 ワクワク感は抑えるべくもない。


「ごほん! ラルス、聞いてる? 


 東の廃村にて、トロル退治に向かったA級パーティからの


 連絡が途絶えたのことです。


 その捜索、および必要であれば救助。


 ただA級が連絡を絶つと言うのはただ事ではなく、


 強力なモンスターとの遭遇をギルドでは想定しています」


 おいおい、そんな大事にたった三人で向かえと言うのか。

 それも、A・B・C級、それぞれ一人づつの混成パーティで。


 実力的にはA・B・Eなんだぞ……?


「昨日から異常脅威度モンスターとの遭遇が立て続いているため、


 今回はそういったモンスターとの戦闘は回避。偵察にとどめ、

 

 A級パーティの捜索が主眼となります。


 各々の命を守りを主体とした、オーダーです」 


 なるほど、それなら俺が混ざっていても問題なさそうだ。


 しかし、異常脅威度モンスターか。 

 そんな事件が起こっているとは、全く知らなかった。


「索敵はベリトに一任し、私とラルスは目的地までの道のりで


 襲って来るであろうモンスターの対処。いいですね」


「……あい」


 ベリトから静かないらえ。

 俺もマルグレットに向けてうなずいてみせた。


 ベリトは既に、索敵魔法を発動させている。

 さきほど、魔力の波のようなものを感じたのがそれだろう。


「ここ一帯のモンスターのレベルは、いくつくらいなんだ?」


 手を上げてマルグレットに質問する。


脅威度レベル3ほどね」


「なるほど。サイクロプスくらいか……気を引き締めないとやられるな」


「……え?」


 マルグレットが疑問の声をあげたその時、

 

「……索敵に感あり。ジャイアント・キラービー。脅威度レベル3。


 飛行系。数6。真っすぐ前方、2キロ。急速接近中……」


 と、ベリトが今日一番の文字数で発言した。

 ベリトが向いてる方向へと振りむくと、遠くに黒い点が六つ、

 確かに近づいて来ていた。

 

「早速来たようね……」


 ベリトの魔法、そうとう先のモンスターを探知できるらしい。

 ジャイアント・キラービーと言ったな。


 図鑑で見た情報だと、かなりの高速で飛び回り、

 尻尾の毒は、大人一人を即昏倒させるほどの強さがある。


「……素早い敵に、魔法を当てるのは難しい。あとよろしく……」


 ベリトがぼそっとつぶやき、猫耳フードを押さえてしゃがみ込んだ。

 

「私たちで守るわ。ラルスは彼女の背後を」


 周囲に身を隠せるような場所はない。

 マルグレットがベリトの全面へ、そして俺は後方へと陣取った。


 俺たちは剣を抜き、モンスターの到来にそなえる。

 ぶぅん、という音が徐々に大きくなり、巨大殺人蜂がその姿を現した。

 読んでいただきありがとうございます。


 面白かった、続きが読みたい、などと思われましたら、


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 ☆一つからでも、正直な評価をよろしくお願いいたします。


 作品作りの参考にもなりますので…… 


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