表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/59

第十一話 パーティ結成

「マルグレット! 見てくれた?」


 俺は倒れているマルグレットへと駆け寄る。

 彼女は身を起こし、


「ご、ごめんなさい。あなたの戦いに思わず見とれて……


 私自身に回復魔法をかけて復帰できたのに、一人で戦わせるような目に……」


 と頭を下げる。

 まだ、『演技』は続いているのか。徹底しているな。


「そうだ! マグヌス、みんな……!」


 マルグレットは倒れているマグヌスたちの元へ駆け寄る。

 試験が終わった事を報告しに行ったのだろう。


 次々と、倒れていた面々が起き上がって集まって来た。


「こ、このサイクロプス。ラルス一人でやったのか……!?」


 マグヌスが茫然といった面持ちで聞いてきたので、

  

「まあ、一応。お二人のおぜん立てがありましたから」


 と答えると、


「おぜん立て? 二人……?」


 と聞き返してきた。


「マルグレットとマグヌスさんが、あらかじめサイクロプスの弱点を知らせる、


 切り傷を入れておいてくれたおかげで、倒せたんだ」


「弱点だと……?」


「私たち、そんな事はしてないわ……?」 


 マグヌスは首を傾げ、マルグレットも腕を組んで微妙な表情。


 またまた。

 

 あくまで、「知らないフリ」をして、

 こちらに自信をつけさせようという算段なんだな。


 なら、こっちも空気を読んで、合わせるべきだろう。


「いや、まあ。なんとか一人で、倒せた……よ」


 エクトルとユリヤが「すごーい!」とぱちぱち拍手を送ってくれる。

 この人たちは「褒め」担当と見た。

 

「バカな! たった一人で、脅威度レベル13の巨人を、


 冒険者なり立てのコイツが倒せるわけないだろ!」


 トルド王子が叫んだ。

 なんか王子だけは、純粋に初心者組っぽいな。

 脅威度レベル3のモンスターを、13とか勘違いしてるし。

 

 おそらく彼が最初に気絶したのは、マグヌスの仕業だろう。

 そうやって逆に、王子自身をサイクロプスから守ったのだ。


 下手に動かれると危ないし、俺の試験の邪魔になっただろう。

 王子は飛び入り参加みたいだし。


「私が一部始終を見ていたわ。間違いなく、ラルスの仕業よ」


 マルグレットが断言した。

 そう強く言われると、本当にそんな気になって来るな。

 だが、あくまでおぜん立ての結果。

 A級の強さを、しっかり胸に刻んでおくべきだろう。


「そうか……驚くべき腕のようだな……


 しかし、地下一階にこのような強さのモンスターが現れるのは、本来異常事態だ。


 マルグレットが遭遇したという、地上での脅威度レベル5のモンスターの話もある。

 

 なにか、つながりがあるのかもしれん……早く帰ってギルドに報告せねば。


 今回の初心者講習はこれで終了とする。皆に問題が無ければ、即時帰還だ」  


 そうして、俺たちはマグヌスの先導にしたがい、

 ダンジョンを後にしたのだった。



 

 ダンジョンでの一部始終が報告されたギルドは、大騒ぎとなった。


 騒ぎの半分は、出現するはずのない脅威度のモンスターについて。

 もう半分は、俺についての話題だった。


「異様な打たれ強さ」


「はるか格上を仕留める剣技の冴え」


 の話でもちきりとなり、冒険者たちに囲まれて色々聞かれるのだが、


 【スライムスキル】のおかげだと言うと、

 必ず冗句ジョークとして受け止められる。


「わははは! おかしな事を言う奴だ!」


「確かに物理無効っぽい感じはするが、

 

 人間がモンスターのスキルを使えるわけないだろ!」


 完全に持ちネタの一つ、として認識されてしまった。

 そうしてさんざんイジられた挙句、


『サイクロプス殺しのスライム剣士』


 とあだ名をつけられる事になった。




「ラルスさん、私とパーティを組みませんか?」


 ようやく冒険者たちから解放され。

 ぐったりと机に突っ伏していると、マルグレットがそんな提案をしてきた。


「は? A級のマルグレットと、俺が?」


 冒険者手帳によると、パーティを組む際にいくつか決まりがあった。


 その一つが、パーティメンバー間のランク格差は二つまで、というものだ。

 つまり、A級の冒険者と組む場合、最低でもC級でないとパーティを組む資格がないのだ。


 あえて下級ランクの冒険者を引き入れ、奴隷のように扱ったり、

 酷い時には盾や囮とされ、命を落とす初心者が頻発したことへの対策らしい。


「俺はEだろ。マルグレットと組む資格に、全然足りないぞ……」


「さっき、ギルドマスターと話してきたんだけど、


 ラルス、あなた今日からC級よ」


「はあっ!?」


 マルグレットの話によると、サイクロプスやジャイアント・マンティスを倒した功績を考慮し、

 二ランク特進とする処置が行われたらしい。


 とんでもない飛び級だ。


 どっちとも、マルグレットのおぜん立てがあってのことじゃないか。


「そんな資格、俺にはないはずだが」


「私が保証するわ。あなたには十分、C級の資格がある。


 それどころか、戦力的にはA級だっておかしくないのよ」


 うーむ。

 この誤解、いつになったら解けるのだろう。

 

「俺と組んで、何がしたいんだ?」


「ギルドマスターから、ちょっと特別なクエスト依頼を受けてね。


 それで、あなたの力が必要になったの」


 マルグレットは何か、申し訳なさそうな顔つきだ。

 大したことのない俺に、そんな態度を取らなくても良さそうなものなのだが。


「力なんて。とんだ買いかぶりだよ……」


「いえ。あなたなら、絶対私の助けになってくれる。


 確信してる」


 むう、そこまで言われたなら、断り辛いというものだ。

 マルグレットの瞳にじっと見られると、余計に。


「ううん……俺でいいなら、力を貸すのに問題はないが。


 マルグレットと一緒になれるのは、俺も嬉しくはあるしな」


「えっ!? そ、それはどういう意味――」


 ぼんっ、とマルグレットの顔が赤く染まった。

 

「真のA級冒険者の戦い方を、間近で見ることが出来るんだ。

 

 色々と学ばせてもらいたい。


 マルグレットを師匠として、俺も真のC級になれるよう、努力するよ」

 

「あっ……そ、そういう……


 ごほん。わ、わかったわ。


 じゃあ、これからよろしくね。ラルス」


 こちらに向けられた手を、握り返す。


「こちらこそよろしく。マルグレット」

 読んでいただきありがとうございます。


 面白かった、続きが読みたい、などと思われましたら、


 下にある☆☆☆☆☆で、応援お願いいたします。


 ☆一つからでも、正直な評価をよろしくお願いいたします。


 作品作りの参考にもなりますので…… 


 ブックマークしていただければなお嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ