白い部屋
ふと目を開けると自分は白い部屋に立っていた。広さは教室くらいだろうか、辺りを見渡せど何もない。白い部屋に自分1人、頭がおかしくなりそうだ。
はぁ退屈だ。せめて暇が潰せるものでも落ちていたらと、あり得ない状況で暇を持て余そうとしてるところ自分はとっくのとうに頭はおかしくなっていたのかもしれない。
ガサガサッ
そう考えながら床に手をついて座ると突然四つ折りにされた紙が落ちていた。先ほどの音は紙が擦れた音だった。
さっきまでただの白い部屋だったのにどこから現れたんだろうか。そう思いながらも暇だったためその四つ折りにされた紙を拾い上げ中身を見てみた。
77点、そう書かれた紙には自分の名前も記されていた。これは小学生の時の自分の漢字テストだ。なぜ今こんなところに落ちていたのかわからないがこのテストには思い出がある。
今まで容量が悪く漢字テストは30点台しか取ったことがなく勉強しても勉強しても点数は上がらなかった。だけどある時、点数が跳ね上がり家族全員で喜び、お寿司を食べに行った思い出がある。
クラスの最低点が77点だったことは後で知ったが自分にとっては両親が喜んでくれたことがとても嬉しかったためよく覚えている。
物思いに耽っているとまた何か落ちている。今度は自分と女の子が浴衣を着て写っている写真だ。中学生の時とても仲の良かった女の子である。
小学校からの付き合いで中学に上がっても仲の良さは変わらず色々なところに家族絡みで出かけていた。この写真は一緒に花火大会に出かけた時だ。
今、思い返せば自分はこの子の事が好きだったのだろう。無邪気に笑う子で自分はよく揶揄われていた。しかし、中学生の自分は思春期真っ只中で告白が中々出来ずにいた思い出がある。
ドサッ
鈍めの落ちる音がした方に目をやると数十冊のノートがばら撒かれていた。これは高校時代の時、担任の先生に勉強を教えてもらっていたノートだ。
最初にも言ったが自分は要領が悪く人一倍勉強をしなければならなかった。高校3年の時、担任の先生が放課後色々と教えてくれたそのおかげで志望していた大学に入る事ができたのであった。
今考えても生涯を通して恩師と言えるのはこの人だけだろう。それくらい感謝してもしきれない。
さっきから懐かしい心温まる物が自分の目の前に現れるが一体なんなのだろうかこの部屋は。
コトッ
次は小さな音が聞こえてきた。音の方に目をやるとそこには結婚指輪が置かれていた。その指輪を見た瞬間全てを思い出した。
◇◇◇
次に目を覚ますと白い部屋は無くなっていた。それもそのはず、その部屋は自分の潜在意識の中にある思い出を濃くはっきりとした思い出にしてくれる最新技術らしい。
白い部屋の存在を忘れていた事を話すと昔のような無邪気な笑顔で揶揄われてしまった。
いよいよ明日だね。両親へ手紙でも書こうかな。先生に久しぶりに会いたいな。なんてくだらない話をしながら思い出話に耽っていた。
白い式場では記憶を無くさないようにしないと。白い綺麗な服を着た彼女に隣できっと揶揄われてしまうから。