表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/80

三十一話

 手にした力とその責任を再確認したレオン、今ならばとバフは話し始めた。


「儂の先祖はな、こいつを鍛えた第一人者だったのさ、だから儂の一族にはこいつについての話が語り継がれてきた」

「あんたそんな凄い人だったのか」

「レオンは素直な奴だな、儂が凄いのではなく祖先が凄いんじゃ」


 そう言ってバフは笑い声を上げる。


「その剣が持つ本来の力と言うのは、五神と星神の力を持ち主に与える事が出来る事だ」

 本来土地の神の加護と力を受ける事が出来るのは、そこに住む者達だけで、一人の人間にすべての神の力を宿す事は不可能だった。しかしエクスソードを持つ者は違う、神々の加護と人々の英知が合わさり作られた剣は持ち主に繋がりを持たせそれを可能とした。

「儂の動きが年不相応だと不思議だっただろう?」

「それはまあそう思う」

「あれはな、火神様の土地を巡る魔力を活用しているんじゃ」


 それを聞いてレオンは疑問を投げかけた。


「でも今火神様は…」

「そりゃ神秘の火種は今奪われて力は弱まりつつある。だけど土地に深く張り巡らされた魔力は長い年月を経て培われたものだ。弱まる事はあっても無くなる事は無い、そこに生きる人がいればな」


 そう言えばとレオンは思い出した。フィオフォーリに入る前の村でソフィアが結界を張る時に言及していた事、フィオフォーリでリラが土地の浄化の為に大地に種を植えて周っていた事、どれも土地の魔力を用いていた。


「皆その力を無意識のうちに使っておる、そうさな、フィオフォーリのエルフ達は妙に身軽ではなかったか?」

「確かに、木の上に登ったり枝から枝へ飛び移ったりと身体能力が高かった」

「森に生きて、木神様に祈りを捧げ、土地の神と共に生きるうちに自らの魔力と混ざり合い力を授けられる。これが神のご加護という訳じゃ」


 バフの説明を聞いてレオンは感心していた。神は願う者を救うのではなく、常にそこに生きている者と共に生きているのだと思い至った。


「この力はな、無意識下でも強力だが使いこなす技術を覚えればもっと強力だ。この老いぼれた体でもお前さんの相手が務まるくらいには体を動かす事が出来る。そしてお前さんはもう木の加護を得たお陰で、どこに居ようともその力を使う事が出来る、土地に流れる火の力と木の力、使いこなしてみたくはないか?」


 その問いかけの答えはレオンにとって聞かれるまでもなかった。


「是非とも教えてもらいたい」


 力の使い方を覚える事が出来たなら、自分はもっと強くなれる。その予感がレオンの気持ちを昂らせた。


 レオンの修行は次の日から始まった。事情を聞いたクライヴはバフが何者であるのかが気にかかったので、バンガスの元を訪れていた。


「おお、レオンはバフ爺に会ったのか」

「バンガス様、バフ様とはどの様な御仁なのですか?何でもレオン様に修行をつけるとの事ですが…」


 クライヴの心配そうな顔をよそにバンガスは言った。


「心配ねえさクライヴ、あの爺さんは気難しい人で滅多に人と関わらないが、見込まれたと言う事には意味がある」


 バンガスは作業の手を止めてクライヴの方へ向き直る。


「バフ爺さんはな、ベリルの父方の祖父だよ。今はすっかり世捨て人のような生き方をしているが、ベリルとはちょくちょく顔を合わしてるそうだ」

「ベリル様の、成程そうでしたか」

「とんでもねえ長生きだけど怪しい人じゃねえさ、爺さんとは思えない程軽快な人でな。レオンに目を付けたって事はエクスソード絡みだろう」

「宝剣と何か関わりがあるのですか?」


 バンガスの言にクライヴが問う。


「あの爺さんの祖先がエクスソードの金属を鍛えた人物だったのさ、それで多くの伝承が残っているそうだが、一族が打った剣はそれが最後でそれから一族から鍛冶師になる者は現れなかった」


 究極の剣を生み出した事で満足してしまったのか、はたまた別の理由があるのかまでは定かではないとバンガスは付け足した。取りあえずクライヴは、レオンが怪しい人物に騙されている訳ではないと安心した。


「バンガス様にお伺いを立てて正解でした。ありがとうございます」

「相変わらず堅苦しいな、少しくらい気を緩めたらどうだ?」

「これが私の性分でして、ソフィア様にもよく言われますが中々」


 クライヴが困った顔で頬を掻く、その様子を見てバンガスは豪快に笑って言った。


「レオンもそうだが、嬢ちゃんも立派になったもんだ。俺が見てた頃は豆粒に思えてたが、成長ってのは早く感じるな」


 クライヴも同意して頷く。


「お二人共悩み迷いながらも前に進む事を諦めません。とてもご立派になられました。あのお方達をお守りするのが私の使命です」

「そうか、うん。お前もまだ立派な王国騎士団の一員だな」


 バンガスはそう言ってクライヴの肩を叩く、そして腕の長さを測り始めた。突然の行動にクライヴが困惑していると、よしと言って机の上に横長の箱をドンと置いた。


「開けて見なクライヴ」


 訳が分からないまま、クライヴは促されたままに箱を開けて中身を見た。


「これは…」

「細かい調整はこれからやるが、概ね完成しているよ。慣れるまでには時間がかかるかも知れんが、役には立つ筈だ。俺が作った自慢の一品よ」


 箱に仕舞われていたのは金属で出来た義手だった。黒く鈍く光る全体に、所々赤い魔石がはめ込まれている、見ただけで圧倒されるような重厚さにクライヴは目を奪われた。


 クライヴの義手の取り付けの為に何人かの職人が集められた。集まった職人は義手の制作に携わった者達だった。


 取りつけながらバンガスはクライヴに義手についての説明をする。


「この義手に使った金属はマヴィア鋼と言って魔力との親和性が高い、はめ込まれた魔石は赤晶石と呼ばれる。クライヴのもつ魔力をマヴィア鋼で作られた義手が取り込み、駆動部にある赤晶石がそれを効率よく動かす。動かすだけなら魔力消費はほぼ零だ」


 バンガスの説明が終わると同時に、ガチリと音を立ててクライヴに義手が取り付けられる。義手から甲高い音が響いている。


「今お前の魔力を取り込んで赤晶石に送り込んでいる、もうちょっとで…」


 バンガスが言い終わる前に赤晶石が発光しはじめた。互いを繋ぐように赤い線が石と石の間に走り、すべての線が繋がった瞬間クライヴの体にビリっとした衝撃が襲った。


「ぐぅ…ぅ!」


 クライヴは苦悶の声を漏らす。


「もう少しだ。もう少しだけ我慢しろ」


 バンガスの声はクライヴの耳には届いていない、体の中を引っ掻き回すような感覚に、眩暈と吐き気で汗がぼたぼたと大量に垂れた。しかしクライヴの精神力はこの程度の事では揺らがない、奥歯を噛みしめ耐える内に何処か懐かしい感覚が体に戻ってくるように思えた。


 クライヴは汗を手で拭った。その瞬間、周りの職人たちとバンガスから歓声が沸き起こった。


「おい!クライヴ!成功だ。成功したぞ!」


 何の事だと思ったクライヴが汗を拭った手を見ると、それは戦いで失った筈の左手であった。取りつけられた義手がクライヴと完全に繋がって動いた。確認するように手のひらを開いたり閉じたりして、本当に動いていると驚きの表情を浮かべた。


「バンガス様、この義手感覚まであるのですが」

「そりゃそうよ!俺様達が技術を結集して作った代物だからな!」


 バンガス達は嬉しそうに笑い合っている端で、クライヴは驚きを隠せぬまま手の動かし続けていた。諦めていた腕が戻ってきた事の喜びを確かめるように義手で拳を握りしめた。


「クライヴよ、この義手はただ動くってだけじゃねえぞ!あっちに向けて手のひらを広げてみな」

「こうですか?」


 クライヴは左腕を上げて手のひらを広げる。


「そうそう、それで集中するんだ。手の先に向けて体の力を流し込むように」


 よく分からないままにクライヴは言われた通りに集中する。すると義手の手のひらにはめ込まれた赤晶石から発光する魔弾が撃ち放たれた。魔弾は建物の壁を突き破る威力で、当たった場所は高熱で溶解していた。


 何の説明もなしに話を進めるバンガスにクライヴは驚愕しっぱなしだったが、作った本人達は自分達が作った物が上手くいったことを喜び合っている。クライヴは壁の向こうが何もない場所で良かったと思いながら、歓喜に沸くバンガス達を見て苦笑いをするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ