【すぐ読み終える】平静を装う
「好きな人ができた」
そう言われて、数時間後。
私は仕事をしている。
体はここにあるけど、心がここにいない。
あの数時間前で立ち止まったままだ。
「仕事…仕事しなきゃ」理性的な自分と、
「次だよ次!前向いていこ!」必死で励ましてくる自分と、
「何があったんだろ…なんでこうなったんだろ…」呆然としている自分が、
「なんで私がフられなきゃいけないのよ!せっかく久しぶりに会えたと思ったら別れ話?!冗談じゃないわよ!!」と喚いている自分を抑えている。
頭の中はぐちゃぐちゃだ。
ふぅ、と息をついて、デスクにある両手をだらんと下げた。
ーーーーそこにある重さがない。
たった、指輪1つ分の。
ここは会社だ、泣いちゃだめ、泣いちゃだめ。
離れていても大丈夫だと思っていたのは、どうやら私だけだったようだ。




