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「やっぱり頁が足りない。それも、全項目について所々抜き取れている。これは...」
フムフム、やっぱり彼は約束より自分の従者の方を
「キラ様が呼ぶ前に誰かが抜き取って行ったってことですね。だとすると...」
と、二人は難しい顔をしながら話し合っていた。その間に俺は昨日の読み途中だった『ジュール ヴェルヌ著:80日間世界一周』を読み込んでいた。
「って、キラお前も話に参加しろ。これはお前にしかできない事なんだぞ、そんな本後からでみょめるだろ。」
「うぐっ!!痛いところついてくるな。それはそうだけど俺が聞いてても何のことかが分からないんじゃ意味ないだろう。」
「まあ、一理ありますね。」
「おいっ!そこは納得するなよ。」
「ですが、考えて見て下さい。キラ様は本のことについては教えましたけど、我々自身のことは言ってないのですよ。」
と、フィアさんがネリン君を宥めながら話している。
「う~ん、でもな~。・・・・僕たちの身分はまだ明かさない方が良いよな。」
身分という言葉が出てくるとはもしかして政府の役員の息子さんとかかな。でも、こんな整った顔の子供なんていたかな。
「ああ、君が考えてるみたいに僕は政府の役員の息子とかじゃないから。」
じゃあ、孫?!
「いや、それも違うから。って、君何で政府に結び付けようとするのかな。」
「いや、まあ。想像ぐらいしたっていだろ。」
「まあ、いっか。じゃあ、今から話すことに関しては、これから君の仕事になる事なんだちゃんと聞いておくように。」
えっと、メモしたいけど、ペンと紙がない。
「キラ様これを。」
と、フィアさんがどこからともなく万年筆と羊皮紙を差し出してきた。
「あ、ありがとうございます。」
年季が入ってるな~、持つ部分がどの様に持たれてたか手に取るように分かるよ。
「いいな。まずこの『ユートピア』は頁が一部抜き取られてるんだ。それだとこの本を破壊したところで意味がないんだ。残った頁から再現されてしまうんだ。だから、君には抜き取られた頁の回収をして、本を完成させてほしい。そして、最後に破壊だ。それと、多分抜き取られた頁の一部はというか一頁はこの図書館にあると思う。」
「それはどういう意味ですか?」
「先ほどから、上が騒がしいと思わないか。」
と、ネリン君が言って来たので、耳を澄ましてみると...
『お・・・』
「ん?」
『・・・れ・・・・・ぁ』
「何か聞こえますね。」
なんか甲高い声が聞こえるような聞こえないような。
「フィア見て来てくれ。多分頁の取り合いをしているはずだ。」
「了解しました。」
と、フィアさんが穴に向かってジャンプし、そのまま上の階に行ってしまった。
「すげえ、あの高さを軽々と飛んで行きやがった。」
「ん?ああ、フィアは特殊な訓練を積んでるからな。このぐらいの高さなら簡単に飛び越えることが出来るよ。」
出来るのかよ。見た感じ10メートルぐらいあるんだぞ、その高さを簡単に...とか常人を逸してるだろ。
「あと、君にもフィアと同等ぐらいの身体能力を兼ね備えてもらいたい。あと、護身術も覚えてもらいたい。」
「えっ!そ、それはどうしてですか。」
「ふぁっ!そんなの分かり切ってるだろ。本の持ち主が君なんだよ、それが意味していることはその本を奪いに来る奴がいる、その時に君が自分の身すら守れないんじゃダメだろ。」
「やっぱり狙われますよね。」
「100パー狙われる。第一に本の頁を奪われている時点で想定できるだろう。」
と、何を当たり前な事を言ってるんだという感じの顔をされた。
「そう言えば、この本ってどんな話が載ってるんだろう。」
「読むのは良いけど、望み、願い、とか聞かれても答えるなよ。それは」
「禁書だからだろ。分かってるって何か聞かれたとしても何も言わないよ。」
第一に今も言われてるからな。『お前の望みを言え~~~』って、しわがれた婆さんのような声がずっと耳元で聞こえてるしな。
「・・・まあ、それがわかってるならいいんけど。」
『お前の望みを言え~~~~』
『ああ、うるせぇ!黙ってろBBッ!』
・・・よし黙ったか。えっと、ほ~。いろんな話が入ってるな。目次を見る限り『不思議の国のアリス』に『星の王子さま』に『人間失格』などなど数千を超える話がこの一冊に詰め込まれてるみたいだな。にしては薄すぎないか。
「なあ、この本に載ってる話の数にしてはページ少なすぎないか。もしかして、抜き取られたってめちゃくちゃあるんじゃ何のか。」
「いや、それはない。その本はその持ち主が読みたいと思った本の内容が出てくるんだ。そして、そこからこちらの世界に本の世界を取り出すこともできるんだ。」
「ん?じゃあ、なんで抜き取られてるってことが分かるんだ。だって、本の内容によってはページが増えるんだろ。」
「いや、そこは違うんだ。問題なのは、その本に直に書かれた話なんだ。それは、昔の人間が自分の望みだけを書いて世界に取り出したものが描かれてるんだ。だから、人によっては私利私欲な話があったりするんだ。例えば、世界征服する力が欲しいとか、神のようになりたいとかな。」
ふ~ん、そんなこと書いてた奴もいるんだな。でも、何でそんな遠回しで言ってんだ。簡単にこの世界の支配者にしてくれとか書いちゃえばいいのに。
「それは出来ないよ。支配者にしてくれなんて書いたら対価が大きすぎるからね。」
「そ、そうなのか。」
と、俺は対価さえ払えばできちゃうのは問題だろうっと、思っていながら、フィアさんが入れてってくれた紅茶に口を付けようとした瞬間、俺の背後にある壁が『う~にゃあぁっ!』という掛け声とともに崩れ落ちた。
「やっと、人がいるところを見つけたニャ。そこの黒髪の青年このマオ様に魚を献上するが良いニャー。」
「えっ、っと、どちら様でしょうか。」
と、振り向くとそこには桃色の猫耳に桃色の尻尾を生やした
「むむっ。黒髪の青年よ、先も言ったニャ。マオはマオだニャ。そして、格闘書:『猫拳法外伝』のたった一人の住民だニャー。」
「へ~、そうなんですか。俺は本田 綺羅。で、マオさんはどんな魚が食べたいですか。」
「いや、キラいまはそこを気にしてる場合じゃない。というか、これは本当に大変なことになったな。彼女の願いの部分が世界に影響を及ぼし始めてるみたいだな。」
「えっ!彼女の願いって...「おお、ホンダ。主はマオのこと見てくれるニャー。マオはカジキマグロが食べたいニャー。」
と、俺の言葉をさえぎって横からかなりの勢いで抱き着いてきた。そして、抱き着いたかと思うと、俺の膝の上に桃色の猫になり寛ぐように座ってきた。
『やっぱり、人のぬくもりは良い感じの暖かさニャー。ホンダ魚のことは頼むニャー。』
「それだったら俺から降りてくださいよ。」
『嫌だニャ。ホンダはマオの椅子なのニャー。』
と、マオさんは俺の膝の上を踏み踏みした後ゴロゴロっと、喉を鳴らした後完全に寝る体勢に入っていた。
「おい、ガチ寝するな。」
『スー、スー』
「寝るの早いな、おい。」
と、寝息を立てて寝てしまった。って、よくよく見るとめっちゃ癒されるんだが、うちじゃペット禁止で生き物を飼ったことないからこういうのも新鮮かも。
と、俺はマオさんの背中を撫でた。
「オフモフするな。毛並みもいいし。何というか可愛いすぎないか。」
「只今戻りました、ネリン様。っと、おや、そこに居る猫は。」
「ああ、フィアさんこの猫はマオさんで格闘書:『猫拳法外伝』の住民だと言ってたよ。」
「なんと、本の住民と言っていたのですか。これはまずいですね。彼女の夢が完全に世界に影響を及ぼし始めていますね。」
と、フィアさんは俺の言葉を聞き悩みこんでしまった。
「だよね。で、上の状況はどうだったの。」
「はい、それが上に合った本が半分以上持ち出されていました。それも、原本が多いようです。」
「・・・これはまずいね。そう考えると誰かが彼女の願いを抜き取り世界を支配か混乱させようとしていることがすぐに分かるよね。」
彼女の願いか...そう言えばさっき聞こうとした時マオさんに邪魔されたんだよな。
「その、すいません。彼女の願いって何ですか?」
「彼女の願いとは、『ユートピア』を封じた少女の最後の最後に掛けた願いが、本の中の住人と世界の人が協力して生きていけること、っと願いを掛けたのです。そして、それが最後の頁となり、純粋な願いとなり本の浄化を促したのです。」
でも、それが失敗してしまったってことか。大体の流は読めたのかな。これで...
「そうなんですか。そうすると、彼女は悲しいでしょうね。自分の願いが誰かによって穢されて行くなんてね。」
多分その彼女は平和的に本を使われるように、そして、無意味な争いを起こさないようにと、いう意味で願ったんだろうな。本の住民が話からの教訓を、人々に活かしたいが為に。
「そうですね。でも、良かったこともあります。」
「良かったこと?」
「はい、それはこの本が我々の手元にあり、敵はそのすべてを奪おうとしてくるでしょうから、自ずと相手から近寄ってきますからね。」
「やっぱりそうなりますか。そう言えば、本のページは見つかったんですか?」
「はい、一枚は見つかりました。これです。」
と、フィアさんは内ポケットから一枚の紙を取り出してきた。その紙は薄黒く鈍く光っていた。
「うわっ。ページが真っ黒すぎませんか。汚れた場所に落ちてたような黒さですよ。」
「違います。これは人間の欲望が作り上げた頁です。人間の邪の欲望がこの頁を変質させてしまったのです。」
ほ~、これが邪の欲望が詰まったページってことか。覚えておかないとな。
『むっ!この気配はやだニャー。ホンダさっさとこの気配をなくしてくれニャー。マオが起きるまで...スー、スー。』
と、マオさんは寝ぼけ眼でそう言いながらまた寝に行ってしまった。
「あ~、フィアさんそのページを『ユートピア』に戻しますから。」
「どうぞ。しかし、気を付けてください、並の人間じゃ欲望に飲み込まれてしまいますから。」
聞いた瞬間、俺は伸ばしていた手を一度止めてしまった。
「え!飲み込まれちゃうんですか。」
「はい。完全に飲み込まれてしまいます。ですが、キラ様なら大丈夫ですよ。多分...」
いや、最後の言葉で急激に不安になった。
『う~ん。まだ嫌な気配がするニャ。』
と、俺の膝の上で寝ていたマオさんが目を覚まし、俺の膝から降りすぐに猫の特徴を残した人型になった。そして、俺の横に座って俺の顔をまじまじ見ながら
「キラなぜ早くこれをその本に戻さないニャ。さっさと戻してマオのご飯を作るニャー。」
言ってきた。
「いや、欲望に飲み込まれちゃうのマズいんだよ。」
「それなら、マオと契約する?」
と、マオは顔を俺に近づけながら言ってきた。その目は
「契約?」
「それはダメですよ。契約するってことは、本の住民が完全に世界に顕在してしいます。」
「それなら、抜き取られたページから現れた住民たちが他の人間と契約したら同じニャ。」
と、マオさんが言うと、フィアさんは苦虫を嚙み潰したかのような顔になった。
「そもそも前の持ち主はオリュンポス十二神のアポローンと契約していたではないか。それなら、マオでもいいじゃないのかニャー。」
「し、しかし、あの時でさえアポローンを戻すのに苦労したんですよ。」
「それは、彼女が自分の身を守るすべを持たずにいたからニャー。いつもアポローンの強さの影に隠れているからだニャ。でも、マオはホンダを鍛えてちょっとやそっとじゃ死なない体を作って見せるニャ。」
マオさんって何歳だろう。それに、猫拳法って初めて聞いた言葉だな。あとで、調べてみようかな。
「フィア、マオの言葉に一理あるぞ。どうせキラのことは鍛えるつもりだったんだ。それアすぐに見つかって、自分から契約したいって言ってるんだ。好都合じゃいないか。」
「・・・それもそうですね。分かりました。では、キラ様そこのマオさんと契約をお願いします。」
「どうすればいいんだ。」
「本に手を置くニャ。」
「は、はい。」
俺は『ユートピア』に手を置いた。そしたら、マオさんが俺の手の上に手を置き、
「マオは『ユートピア』の持ち主本田綺羅との盟約を結ぶニャ。」
と、言うと『ユートピア』から白い糸のようなものが伸び俺とマオさんの繋ぐように糸がかかり、金色に輝いたかと思うと何事もなかったかのように消えていった。
「これで契約完了ニャー。これからよろしくニャ、ホンダ。」
「ああ、こちらこそよろしく、マオ...さん?」
「マオでいいニャ。これでも一応は対当にゃんだから。」
「じゃあ、よろしくマオ。」
「では、キラ様この頁を戻してください。」
「ああ、分かった。」
と、俺はフィアさんから黒い紙を受け取り、本に戻した瞬間、その紙が白色に光輝きながら本におさまった。そして、これがきっかけとなり俺の運命の歯車は回りだすのであった。世界を巻き込みながら...