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ぉ
お・・・に
・・・て
ん?何か聞こえるような...まあ、いいか。
ま・・・・よく・・・・・き
俺はまだ眠いから、昨日のことでまだ眠いんだ。
昨日いつ寝たか覚えてる?
そ、そりゃあ、あれだ。台座に合った本を触った後...あれ?俺触った後どうしたっけ。
だから、その後起きた事を説明するから起きて。
い、いや、俺は寝る。昨日の疲れがまだ取れてないんだ。
「あっ、そう。召喚『死海の水』」
と、俺の顔に水がかかった。水...違う海水だ。
「ゴホッゴホッ、しょっぱ。いや、しょっぱすぎないか。前に行ったことある海でもここまでしょっぱくないぞ。」
俺は咽ながら跳び起きた。すると、そこは落ちた場所の執務室であった。そして、俺はそのソファーの上で寝かされていたのだ。
「そりゃそうだよ。だって、世界で一番塩辛い海の死海だからね。まったく君のおかげでまったく困ったことになったよ。」
と、呆れたような怒ってるような感じの声出しながら俺と対面に座っている金髪の外国人の男の子がいた。そして、その横には白髪のザ・バトラー的な感じの人が佇んでいた。
「まあ、まあ、ネリンさま彼まだ意識が覚醒したいばかりなのだから、そういう小難しいことは後でよろしいでしょう。」
「いや、しかし、これは彼が原因で起こったことだぞ。」
男の子...ネリン君が俺を指差しながら言ってきた。
「あの、俺が何かしたんでしょうか。」
俺がそう聞いた瞬間、ネリンの顔がトマトのように赤くなった。
「何かしただって、ああ君はとてつもない罪を犯してしまった。僕がここに来たのはその罪を償わせるために来た。」
おう、俺は何かとてつもないことをしでかしたようだな。でも、その記憶がないな。
「それで具体的に何をしたんでしょうか。」
「それは君が禁書に触れてしまったからだ。そして、それだけではなくその禁書をどこかにやってしまったことだ。」
禁書?そんなのがあったのか。その前にこの人たちどうやってここに来たんだ。あの穴から紐も垂れ下がってないし。
「それで君禁書はどこにやったんだい。」
「すいません。その禁書っていうのが分からないですけど。」
「なっ。おおおい、フィアなんで彼禁書のこと知らないの?」
「はい、それは簡単です。禁書に通づる道の結界の効果が切れていました。また、禁書の接触禁止の看板の文字が霞んで私でさえ読み取ることが出来ませんでした。」
バトラーの人...フィアさんが報告を重ねていくごとに、ネリン君の顔がどんどん先程の真っ赤な顔から青ざめていくのが見て分かった。
「えっ。それ本当!?だとすると、この罪に関しては、僕も償わなくちゃいけない感じだとね。」
おっと、なんか俺の罪が何となくだが減刑されたような感じがするな。
「はい、4:6でネリン様が悪くなります。」
4:6か...それは俺が4なのかそれとも6なのか、どっちだろうな。
「それは僕が...」
「6です。」
よし、俺は4か。でも、誤差の範囲だろうな。
「そうなんだ。まさか、こんなことでしっぺ返しが来るとは。」
「まあ、毎年毎年この図書館の設備をちゃんと確認していなかったネリン様が悪いですからね。」
「いや、だってさ。この世界の人間たちはさ、化学が進んで本とか紙類は完全に利用することが無くなったじゃん。だから、大丈夫だって思ってたのに。」
「いえ、それは違います。ネリン様はお気づきになられてなかったようですが、彼は4年前からこの図書館に通っています。それも毎晩のように。」
「それ報告してなくない僕に!?」
「はい、聞かれませんでしたもので。」
と、俺の目の前で二人はコントのようなことをしている。
「あのそれで禁書というのは。」
「はっ、だから...ムガッ。」
ネリン君がまたどなろうとした瞬間、フィアさんが口をふさいだので詰まってしまった。
「はい、それは私が説明いたしましょう。えっと名前は...」
「あ、ああ、俺の名前は本田 綺羅だ。」
「はいでは、キラ様と呼ばさせていただきます。で、キラ様は昨日どうやってここに入られたのでしょうか。」
「えっ、そこの穴から落ちた。腐ってた床を踏み抜いちゃってな。」
「はい、その時何かおかしなことは起きませんでしたか。」
おかしなことか...ないな。あれでも、あの時何かあったような。何だっけ。
「えっと、あまり詳しく思い出せないです。」
「やはり、あなたはその後何をしたか覚えていますか。」
「はい、出る道を探そうとこの部屋を見回ってましたね。」
「で、その後はどうしましたか。」
「・・・・確か...」
何をやったけか、確かスマホのライトで壁を見て歩いて、それでそれで...
「思い出せませんか。」
「えっ、いや。えーっと、確か...」
俺はぽっかりと開いたままの小部屋に続く壁を見た。そう言えば...何であの壁にあんな穴が開いてるんだ・・・・!
「あっ、そうだそうだった。確かあの壁の一部に汚れがあってその部分を押したら小部屋にがあって、それでなんて書いてあるか分からない本に触れようとして、その後は思い出せない。」
「そうですか。でも、そこまでの記憶に何か思い出せないことはありますか。」
「いえ、多分ないと思います。多分...」
「そうですか。では、キラ様はその本に触れた感覚はありましたか。」
「はい、意識が消えそうになった時、変な声が聞こえながらも触った感触はありました。」
「変な声とは、どのような声ですか。」
「えっ、どのような声...か。女性の声だったような感じがします。」
そう、あの時した声は女性の声だったはず。で、こう言ったんだけ。
「ナチャロコントサだったけな。そう女性が言ってたはずだ。」
俺が「ナチャロコントサ」と言った瞬間、ネリン君が驚きの顔をし、フィアさんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「なっ、何で君今の言葉が喋れるの?」
「いや、ただ女性の声がそう言ってたんだ。」
「というと、継承されたという事ですか。はあ、まさか彼女の代で完全には断ち切ることが出来なかったようですね。」
「ああ、そのようだね。で、それが彼に引き継がれた。そして、その意味することは彼が呪われた運命を断ち切ることのできる可能性があるって言う事か。」
呪われた運命を断ち切る...って、どういう意味なんだ。それに禁書って、
「じゃあ、キラ。君に頼みたいことがある。」
「はい、何でしょう。」
多分責任として、その禁書とやらを集めさせられるんだろうな。
「君に禁書を探し出して、破壊してほしい。」
「はい、分かりました。探し出し破壊...えっ、破壊!?」
俺の聞き間違いだよな。
「そうだ。破壊してほしい。あれは世に動乱を巻き起こす呪いが封じられてるんだ。だから、他者の手に渡る前に、破壊しなくてはならないんだ。」
「いや、だからって破壊するんですか?」
「断固として、破壊だ。」
「理由を伺っても。」
理由があれば俺も納得できるかもしれない。それい、破壊せずとももっと良い方法があるかもしれないしな。
「・・・いや、これはあまり語りたくない。」
「では、私が話しましょう。」
と、ネリン君が渋っているとフィアさんが代役として話してくれるそうだ。
「まず、その禁書が創られたのは今から2000年ほど前です。この本が創られた理由としては、まあ、人間が抱く望まれた世界を神に成り代わり作ろうとしたのです。まあ、それで成功したのが偽・神書『ユートピア(理想世界)』です。それは、本に書かれた世界をこの世界に再現しそこに暮らすことが出来るという創作物です。」
「が、偽・神書『ユートピア』がなんで禁書になったんだ。」
「はい。それは簡単です。最初はうまく回っていたようなのですが、途中から欲に駆られた人間たちが自分で創作した世界を作り始め、本が穢れてしまうという事態が起こったのです。まあ、その時は欲に駆られた者達もさすがにやり過ぎたと考えたのでしょう。一時的に、誰も使わずに浄化されるのを待つことにしたのです。しかし、その浄化が完全に完了する前にどこぞの王族がその話を聞き、なにがなんでも、手に入れようと軍を派遣しその偽・神書を奪って行ったのです。そして、その後はご想像の通り偽・神書は穢れが酷くなり最終的、その王族は自らの欲に喰われ滅んだのです。それも無残に食い散らかされた状態でね。その時、偽・神書は元の純白に包まれていた表紙は漆黒に包まれてしまっていたのです。」
「ああ、それが禁書になったってことか。」
「その通りです。王族滅亡後その本はいくつもの国大陸を渡り、その間も持ち主の望みを叶えては滅亡に追い込むことをしていたのです。そして、露西亜に渡りそこでも同じようにしていたのです。そして、300年ほど前ついに禁書を封印することのできる少女が現れたのです。名前はまあ置いときましょう。で、その少女は今まで溜められていた邪の欲望にどうにか打ち勝つことができ、その本を封印することが出来たのです。しかし、その代償は大きかった。禁書との戦いで寿命を全て使い切ってまったのです。」
ふむ、封印の代償は命ってことか。でも、それだと破壊したところでその邪の欲望が破壊者に向くことになるのかな。
「で、それが何で日本にあるんだよ。」
「それは彼女が最後に極東の国の地下に封印したからです。この国の澄んだ力が溜まりやすいから、っと言ってましたね。」
「それで浄化させるってことか。」
「はい。ですが、それは上手くいかなかったのです。浄化するどころか封印から出て邪の欲望を取り込み始めたのです。現実には影響を及ぼさずにその本の中だけでね。」
嫌な予感がする。それが今ここに存在してないってことは世界のどこかに行ってしまったのかもしれない。だとすると、その禁書を持った人間の欲望が現実に現れるそれも、300年間溜まりに溜まった邪の欲望をその人を襲うかもしれない。
「で、禁書での名前はなに?」
「はい、禁書『ユートピア』です。本の名前は名づけられてからは変わることはなかなかないので『ユートピア』はそのままで、まえに付くのを偽・神書から禁書に変えただけです。」
「そうか。『ユートピア』は変わらな...」
と、俺が『ユートピア』と言った瞬間、目の前の空間が歪みそこから漆黒の本が俺の手元に現れた。
そして、周りでその光景を見ていた二人は唖然としているのが分かった。
「えっ?なんで、ここに『ユートピア』が...」
「・・・キラ様これは大変なことになりましたね。この本の正当な持ち主として認識されてますよ。」
と、フィアさんに呆れ顔で言われた。一方ネリン君の方は頭を抱えていた。
「えっと、それって大問題ですよね。」
と聞くと二人は首を力強く縦に振った。
はあ~、何だろうか。訳の分からん人たちに絡まれるわ、本を探せと言うは、持ち主になったは昨日今日でないよう詰めすぎだろ。