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Paranormal World-パラノーマルワールド-  作者: mirror
一章 そして、霧が彼らの日常を侵し始める。
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第八話

 十一月八日 未成年集団失踪事件

 今までと違い前回のフラッシュ騒動から八日しか立っていないハイペースでの更新。

 東京都各所にて、十一月八日の夜間に子供が帰ってこないと多くの通報が入った。

 捜査を進めていくと、いずれも十六時前後に目撃証言が途絶えていることから、なんらかの組織による集団誘拐ではないかと考えられている。

 被害者にこれといった共通点はなく、未成年という点が唯一の一致点。

 被害者親族の元へは六百六十六万の現金が届いているが、出どころは不明。必ず室内に置かれる。

 現時点で行方不明者の少年が一人、死体で発見されている。

 手足を刃物で切りつけられたあとがあり、そのうち右手首は切断されていた。尚手首は未だ見つからず。

 死体近くに落ちていた刃物からは本人の指紋以外は確認されていない。また、服装に乱れ等は見られず、争った痕跡もないという。

 これは余談だが、死体の近くの路地には正体不明のゼリー状のなにかと制服等が落ちていたという話だ。


「あ、それとまたそっちに反映してないけど、この学校にも行方不明者の家族がいるって話があったでしょ。その女の子とアポ取れそうだから、近いうちに情報追加できるかも」


 二人が読み終わる頃を見計らって口を開いた。


「鏡夜よ……それは流石に」

「さいってーだよキョーヤ」


 二人から軽蔑の視線を向けられた。


「は? いや、ちょ、いやいやいや、別にこっちからアポ取ったわけじゃなくて、向こうから部活で使ってるブログにDM送ってきたわけで僕にそんな視線向けられても困るっていうか」


 必死に弁明するが二人は半信半疑のようだった。

 僕って信用なさすぎなのでは。普段からそんな信用失うような行動はしてない。はずなんだけど……。

 誤解を解くために僕は再び口を開く。


「それにその子、IronRabbit氏のブログにもコメントしてて、しらない? 『UI』ってコテハンで情報提供してた」


 そう言うと、二人は心当たりがある用で、小さくうなずく。


「あれでしょ? とおりゃんせーとおりゃんせーってやつ」

「そそ、流石。そのコメの人」

「まさか俺らのそんな近くに情報提供者がいたとは盲点だったな」


 ふう。と一息。

 とりあえず僕の名誉は守られたと思って良さそう。


「まぁ今は親に軟禁状態だから、体が動くようになったらむこうから出向いてくれるってことで、今の所面会の目処はたってないんだけどね」


 それでも話が聞けるならそれに越したことはない。


「さすがの鏡夜でも家に押しかける、なんてことはなかったか」


 和人が冗談半分にいう。


「僕だってモラルある人間ですし」

「キョーヤは偉いねぇ」


 遥にいわれるとバカにされてる感がすごいわけだが。それは飲み込んでおくことにした。

 そんなこんなで話初めてキーボードを打つ指が止まっていると。


 突如地面が大きく揺れた。


 震度五ぐらいだろうか、折りたたみ式の長机がひどく軋み、飲んでいたジュースの缶が床に落ちる。ほぼ中身の入っていない缶は床に打ち付けられてカラカラと音を立てながら部屋の隅に転がっていった。


「と、とりあえず机の下に!」


 僕の声を合図に三人で長机の下に体を詰める。

 体感一分ぐらい揺れていただろうか。

 最近この手の中規模の地震がよく発生している。

 そろそろ大きな地震が来て世界滅亡だなんてネットでは騒がれている。

なんなら未来人がTwickerに襲来して不安を煽るような発言をして去るなんて事件が数ヶ月前にあった気がする。ジョンタイターかよ。未来人の方は一体何の目的で現代の、しかもSNSという限られた場所に現れるんだろうか。危険を知らせるならもっと国の偉い人とコンタクトを取ればいいのに。

 揺れが完全に収まったのを確認してからゆっくりと這い出る。


「今回はまた大きいのが来たな。本当にそろそろやばそう」


 和人がMirageを起動しながら真顔でそんなことをいうものだから思わず吹き出しそうなのを抑えて冷静に一言。


「一体何年前からそろそろって言われてるのさ」


 事実、ここ数年はずっとそろそろ首都直下型地震が来るって言われてる。まぁたしかに最近の地震の多さは異常なレベルだけど、それだって自然現象だ。

 人為的なものだという声もあるが、根拠がない。昔あった大型の地震が人工地震だって話だけど、そのレベルの地震を起こそうとするなら、莫大なエネルギーが必要となり、現実的ではない。

 まぁオカルト思考の僕らからしたら人工地震って単語はなかなかくる物がある。が、所詮は妄想の域をでない。

 そろそろって言っているわりには一向に大型地震は起こらないし。

 まぁもちろん起こらないに越したことはないけど。


「へー、キョーヤはよゆーだねー。じゃあ大きな地震がもし起きても私の準備してる災害用グッズもいらないねー」

「それとこれとは話が別。備えあって困ることはないし。人間助け合ってこそでしょ」


 ケタケタと笑いながら言う遥に、僕は真顔で返す。

 まぁ遥に言われて僕もしょうがなく重い腰をあげて準備したわけだけど。


「まあいいや。そろそろ帰ろうかね」

「あれ? もうそんな時間?」

「遥聞いてなかったのか? 集団失踪事件に対する学校側の対応として速やかな下校が義務化されるって週頭に言ってたぞ」


 呆れたように和人がつっこむ。


「あー……言ってたような、言ってなかったような?」

「いや言ってたんだって……」


 反応が気に入らなかったのか和人の背中をペシペシと叩いている。


「じゃーなんで部室に来たのさー」

「あー、なんとなく? 習慣付いてるというか、それで部室に足を運んだら鏡夜が居たから少し寄って行こうかなと思ってさ。この後の予定もあるし、な?」


 しまった。UIのことで頭がいっぱいで和人との放課後の約束を完全に忘れていた。まぁ気づかれないだろう。


「あ、ちなみに僕はさっき言ってた『UI』氏を念のため待つのと、集団失踪事件のまとめ更新のために少し寄っただけ。こういうのは一回更新やめると次更新するとき腰が重くなるからね」


 言われる前に電子黒板を小さく指差して主張しておく。おっちょこちょいの遥と一緒にされたらたまったものじゃないし。


「えぇー知らなかったの私だけ⁉︎ うっそだぁ‼︎」


 遥の不満に満ち溢れた叫びを合図に、僕達は部室を後にした。

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