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Paranormal World-パラノーマルワールド-  作者: mirror
二章 安息を求め彷徨い、そして嗤う。
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第一話

 夢なのか現実なのか。

 それとも霊界なのか異世界なのか。

 僕は何もない空間に一人、地べたに寝そべっていた。

 何も見えず、聞こえず、触れられない。地面というものが本当にあるのかもわからない。

 本当に何もなくて、どれぐらいの広さの空間にいるのかもわからない。

 完全な闇が僕を取り囲んでいる。

 ひどい孤独感に襲われ、今にも心が折れそうだった。

 感覚遮断実験で見られる手法だ。大半の被験者は十五分もすれば幻覚を見始め、耐えがたい苦痛を味わう。

 都市伝説でいう五億年ボタンなるものに、人間は耐えられるわけはない。所詮は都市伝説だ。

 あと何日、何ヶ月、何年こんな生活が続くのだろうか。そもそも何年僕はここにいるのだろうか。それ以前に、何年もの月日が本当に経っているのだろうか。正気を保っている時点で、僕はこの場に来てまだ数分なんじゃないだろうか。

 もうなにもわからない。

 自分の名前すら、今はもう覚えていない。名前なんて、誰とも関わらない者には必要ない。ただの記号でしかない。

 死ぬこともできない、でも生きてるとも言えない。そんな現状。

 初めは抗おうとも思った。この無慈悲な世界に。

 彼女のような被害者をこれ以上出さないように。

 全てが見える。全てが聞こえる。全てを感じる。そんな能力。それは果たして良いことだろうか。

 これは呪い。世界に干渉した者への呪い。

 彼女は、一体どれだけの時間こうしていたのだろうか。

 耐え難い苦痛、虚無といくらの時を過ごしてきたのだろうか。



 ――あれ、彼女って……誰だっけ?



 虚ろな瞳にふと光が灯る。

 先ほどまで真っ黒だった空間に一筋の亀裂が走っていき、そこから何日かぶりの光が世界を照らす。しかし、それは決して恵の光なんて物じゃないことは、僕が一番それを知っている。


「あぁ……ここももうだめか」


 鈍い音が空間に響き渡る。

 空気が振動し、僕の髪が揺れ、長い前髪が僕に一時の暗闇というなの安らぎを届けてくれる。

 どこからか人の声が聞こえる。

 僕は青いパーカーのフードを深く被り、暗闇に溶け込む。

 長く伸びた耳先が、強く赤く輝いている。


「次の場所を探そう」


 大きな地鳴りがした。

 僕の世界が音も立てずに崩れ去る。

 鏡でも割れるかのように、暗闇が崩れ落ち、世界に光が満ちた。

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