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さくらのさくら  作者: YUQARI
第8章 ワタシのオモイ。
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2.返事。

 見上げた咲良の反応は、思っていたのと違った。

 きっと嫌がられるって思った。

 突き放される……とまでは思っていなかったけれど

 きっと困った顔をするとか、顔をしかめるとか

 苦笑いするとか、きっとそんな反応なんじゃ

 ないかなって思ってた。

 でも、目の前の咲良は──。

 

 はじめ、少し驚いた顔をして、私と目が合って

 そして慌てたように目を逸らして真っ赤になって。

 ……あれ? なんだろ。この気持ち。

 どう考えて見ても、私よりも咲良の方が照れている

 ように見えた。

 

 

 

 可愛い──。

 

 

 

 そんな言葉しか浮かばない。

 そっぽを向く咲良を(いじ)りたくなる。

 

 ホント変わったなぁ。

 小さい頃の『咲』じゃ、こんな風にはならなかったと

 思う。

 だけど嫌じゃない。

 むしろ前よりも好き。

「……咲良」

 私は咲良の頬に手を伸ばす。

 触れられて、咲良の肩が跳ねた。

 その反応に驚いて、私も手を離す。

「えっと、あのね。あの……その、へ、返事は?

 返事が……聞きたいかなって……」

 声は尻つぼみ。

 返事。聞きたいようで、聞きたくない。

 YESじゃない言葉以外なら、言わないで欲しい。

 そんな風に思っていたら、咲良が言った。

 



「た、宝箱……ここの近くだね」

 

 

 

「え? ……あ。そ、だね」

 話、ずらされた。

 

 真っ赤になった咲良は、ベンチから滑るように

 飛び降りて、私に背中を向けた。

「太郎ちゃんがね、言ってたの。確か栗の木の近く

 だったって。

 ここに栗の木とかって、あったかな?」

「あ、うん。ちょっと探してみる」

 言って咲良から顔を背ける。

 

 あぁ、コレってあれだ。私はフラれたってことだよね。

 そう思うと目頭が熱くなる。

 だけど待て。泣くんじゃない!

 私は自分に言い聞かせる。

 今泣いてしまったら、咲良に負担を掛けてしまう。

 泣くなら帰ってから。

 でももう、耐えられない。

 

 明るく『探す』って言いながら、背中を向けて

 ボロボロと泣いた。

 零れ落ちる涙も、拭いてはダメだ。

 手の動きで泣いてるってバレるから。

 

 公園の木が、思った以上に多かった事に救われる。

 私は手頃な気を見つけてそこに隠れて、声を殺して

 泣いたのだった。

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