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さくらのさくら  作者: YUQARI
第7章 咲良再び。
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11.わたしも好きだよ。

 なんのご褒美なんだろ?

 思わずそんな事を思ってしまう。

 嫉妬? 乃維が?

 あの誰にでも優しい乃維が、嫉妬してる?

 そんな事、あるのかな?


 目の前の状況が計り知れなくて、わたしは答えに困る。

 どうしたら、こんな思考になるんだろ? だって

 わたしと太郎ちゃんは犬猿の仲で、二人っきりに

 なりたいなんて思考、これっぽっちもなかったし、

 そんな素振りは見せるはずもない。

 それなのに、なんでこんな勘違い──。


「ねぇ、咲良? 聞いてるの?」

「え。あ、うん。聞いてる。聞いては、いるけど……」

 見ると乃維は、今度は真っ青になってわたしの胸に顔を

 埋めた。

 微かに、──震えてる?

「えっと、乃維?」

 顔を覗こうと体を捩る。

 けれど乃維がそれを許さない。

 ぎゅっと腕に力を入れて、わたしを抱きしめた。

「イヤ」

「……え?」

「嫌。嫌だから。

 咲良が恭ちゃん好きになるのはイヤ。

 私、私ね──」




 ──咲良が好きなの。




 何を言われたのか、理解するのに時間が掛かった。


 え?

 今、なんて言った?

 恭ちゃんが好きって言った?

 文字通り、頭が真っ白になる。

 兄妹で? ふたごで?


 違う。

 恭ちゃんじゃなくて、私?

 私を好きって言った?

 あ……そっか、友だちとして? 友だちとしてか。


 わたしは納得する。


 そ、だよね。

 こんな変な想い抱えるのなんて、わたしくらい。

 乃維はただ、友だちとして、わたしが好きって言った

 だけ。

 だけど心が傷ついた。

 わたしの気持ちは、そんなんじゃない。

 そんなの求めてなんかいない。

 いずれ消えてしまう関係なんていらない。

 でも──わたしは思う。

 そんな消えてしまいそうな関係でも、傍にいたいって

 思う。


 その自分の汚い心が浮き彫りになって、わたしは

 乃維を引き剥がしに掛かる。

 あぁ、嫌なヤツ。わたしって、ホント嫌なヤツ。


 口に笑みを浮かべて、わたしはセリフのような

 言葉を吐く。

「ん、知ってる。わたしも乃維、好きだよ──」

 軽い言葉。

 そんなのが言いたいわけじゃない。

 でも、これは自分を守るための言葉。

 自分の想いを知られないためと、乃維を繋ぎ止める

 ためのズルい言葉。

 

「がう──」

 乃維は唸った。


『ガウ』? えっとそれは、犬の真似?

 そう思っていたら乃維が急にこっちを見た。

 すがるような、苦しそうな顔。

 こっちが泣きたくなるような、そんな顔。

「違う。

 違うよ、咲良。

 ねぇ、咲良。私、どうしたらいいの?

 私は咲良が好きで好きでたまらない。

 私はおかしいの? これって思春期にありがちな

 思い込み? いつかちゃんと忘れてしまえるものなの?」

「──」

 悲痛に訴えるその言葉が、わたしの想いと重なって

 言葉に詰まった。


 答え?

 答えなんてあるわけない。

 だって好きなんだもん。諦めようと思っているのに

 諦められない。

 離れれば忘れられる?

 ううん。そんなのウソだ。

 友だち同士でいるから、近くにいるから諦めきれない

 訳じゃない。

 だってわたしは、乃維と九年間も会えなかったんだよ?

 だけどやっぱり好き。忘れる事なんて出来なかったし

 諦めきれなかった。だからこうして傍にいる。

 だったらこの想いは、『本物』なんじゃ

 ないのかなぁ……。


 

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