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さくらのさくら  作者: YUQARI
第6章 乃維、再び。
59/96

5.ケーキバイキング。

「さてそろそろ、恭ちゃんのご要望の宝物探しに

 行きましょうか……って言いたいところではあるの

 ですが」

 雑貨屋さんを出ながら、私はふふふと笑う。

 そう。恭ちゃんからも教えて貰ったけれど、今日は

 今からケーキバイキングが始まるのだ。

 土日にある……とは言っても、それは期間限定。年がら

 年中このバイキングがあるわけじゃない。開催される

 のは四月と七月、それから十月と一月の土日限定と

 決まっている。


 そして今日は年に四回しか開催されない、テリジア

 ホテルのケーキバイキングの日でもあるのです!

  悪いけれど恭ちゃん? そんなの既にチェック済み

 ですのよ。おほほほほ。本当は、誰と来ようか

 悩んでたくらい。

 恭ちゃんと行っても面白くないし、かと言って楓ちゃん

 まで誘うとなると、ゆっくり食事を楽しめない気もする。

 女友達と……とも思ったんだけど、そんな事したら後輩達

 までもがついてくるに違いない。

 わいわいガヤガヤと楽しむのもいいけれど、食べるのにも

 集中したいのが私の本音。がっついてる姿は、さすがに

 見せられない。


 その点、目の前の咲良(さくら)と一緒なら問題ない。

 事前に『ケーキバイキングに行くよ!』とか言って

 いないけれど、私は知ってる。

 咲良は大の食べ物好きだ。

 子どもの頃もそうだけど、楓ちゃんからの情報だと咲良は

 相変わらずの大食いらしい。特に甘いものには目がない。

 ついでに言うと、外部入学を果たした直後で、うちの学校

 の生徒との繋がりもまだ薄い。

 みんなの知っている人物を誘うと角が立つけれど

 外部入学の咲良を誘うんであれば、そんな事には

 ならないしね。

 意外に穴場な人材なのである。


 私がふひひひひと笑っていると、咲良が困ったように

 口を開いた。

「の、乃維(のい)……? それは、とても魅力的な

 お誘いんだけれども、その……ー宝探しはいいの?

 しかもわたし、お砂場セット持ってるんだよ? この姿で

 ホテルのケーキバイキングなんて、有り得なくない?」


 不安げなその顔が可愛い。

 ふふ。だけどよくぞ聞いてくれました!

 大丈夫よ! 咲良!

 さっき雑貨屋さんで、可愛い風呂敷を見つけたもの!

 エコバッグもあったけれど、悲しいかなサイズが

 合わない。けれどこの風呂敷は別!

 何も考え無しに散財したわけではなくってよー! と言う

 わけで、私はさっそく風呂敷を袋から出して、手提げを

 作る。


 三角に折って、それから端の二箇所を結んでクルッと

 返す。すると──

「ほら! バックの出来上がり」

 見せると咲良は目を丸くする。

「すごい、乃維。そんな事も出来るのね」

「ふふん。すごいでしょ。お母さんに教えてもらったの。

 これならお砂場セットも隠せるから」

「でも汚れちゃわない?」

「いいのいいの。洗えばいいんだから。

 それにあれだよ? ケーキバイキングの話は、恭ちゃん

 からしたんだよ? お土産にいくつかケーキ買えば

 いいって。ああ見えて恭ちゃん、甘いものには目が

 ないんだから。

 ついでに言うと、多分恭ちゃんも宝箱が見つかるとか

 思ってないよ。

 だってもう、九年は経ってるよ? 自分でも無茶振り

 したって思ってるはずだから」

「そうかなぁ」

「そうだって」

 それにね、と私は続ける。

「公園には行くよ? 問題の缶々が今もあるのか興味

 あるし、ちゃんと探す。

 ふふ。恭ちゃんの宝物って、なんだろね? 楽しみ

 だよね」

「うん。そ、だね……」

 咲良は頷く。

 その時少し咲良の元気がなかったように見えたのは、

 気のせいかなと思って、あまり気にも止めてなかった。

 

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