表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくらのさくら  作者: YUQARI
第3章 恭太郎
30/96

5.ダンジョンのボスモンスター。

「……ふふっ、てことは、なんですか? キョータロの

 感覚的には、教室のモンスター的な? グワーッて牙の

 生えた教室みたいな。そのダンジョンのボス的な?」

「なにそれ、ゲームのやりすぎ」

「いやいや、キョータロさまには勝てませんし」

「ちょっと待て。お前、そんな事言うけど、オレは

 知ってるんだぞ。お前ってさ、某MMORPGで結構

 高ランクにいるんだろ? えっとなんだっけ?

 グラディアス ギリア? だっけ? なんなの? 課金でも

 してんの?」

「えー、それデマだからね? 誰に聞いたの」

「金田が言ってた」

「なにそれ。あいつ前からお前とゲームの話したがって

 たから、俺ダシに使われただけじゃないの?」

「え? そなの?」

「そう。

 お前、ちょっとは他のやつとも話してやれよ? 顔

 強ばってて怖いぞ?」

「怖く……ないし」

「も少し、笑えば?」

「……可笑しくないのに、笑えないだろ?

 てか、笑ってるよな? オレって」

「まあ、ね。仲のいいヤツ限定だけどね」

「仲のいいヤツって。……それ誰だよ」

「……」

 楓真は答えない。

 意味もなく訪れた沈黙に、オレは少し焦る。

 えっと、なんの話しだったっけ? 仲のいい友だちの

 話? ゲーム? あれ? ……ちょっと違ったよね?

 そんな事を考えてたら、楓真が窓の外を見ながら

 ポツリと言った。

「──で、どうなの?」


「ん? どうっ……て何が?」

 聞き返しながらオレは楓真を見る。

 でも楓真は、こっちを見ない。

 楓真のその行動に、オレは少し……不安になる。

 楓真は続けた。




「キョータロはさ、咲良(さくら)の事が好きになったの……?」




 ──は、何それ?

 その言葉に、頭の中が真っ白になる。


 え? ちょ、待って待って、なにそれ。何でそうなるの?

 思わず聞き返すと楓真は、だって、気になるんだろ?

 咲良のこと。だからずっと見てるんだろ? って、

 相変わらず外を見ながら楓真はオレに、そう言った。

「……ばっ! ちょっ、何でそうなる? 違うって! そんなこと

 一言も言ってないだろ?」


 でも(ほお)が熱い。

 あぁ、絶対に赤くなっている。顔が。

 楓真がこっち見てなくて良かった。


 オレは焦って否定したのけれど、それが余計に楓真の

 言葉を肯定しているようで、どうしたらいいのか

 分からなくなる。

 で、だよ。そんな時に限って楓真がこっちを見るわけだ。

「──っ、」

 思わず息を呑む。

 うわ。なに、このタイミング。

 オレは慌てて顔を背け──ようとした。

 いや待て待て、ここで顔背けたら、余計肯定したことに

 ならないか?

 オレはそう考え直して、腕で顔を隠すことにした。

 けど……結局、どっちも一緒じゃね?

 これってさ。

「……」


 楓真が一瞬目を見開いて、そして笑った。

 笑ってたけど、でも微かに眉間にシワが寄ってる。

 えっと、楓真さん? ホント誤解ですって。

 だけどそんな事、楓真は信じない。

「うっふっふっふっふ。分かっているよ、キョータロ。

 キョータロの気持ちは、俺が一番分かっている」

 そう言って、バンバンとオレの肩を叩く。

 楓真、その笑顔、怖いって。


『分かってる』って何が?

 いや、分かってない。

 絶対に分かってないだろ?

 それ絶対、勘違いしてるやつだから!


 オレは、軽く頭を抱える。

 どうやって信じてもらおう? だいたいオレは、説明

 するのが苦手だ。しかも今のオレは、いきなりの事で

 動揺してる。今の状態で、言葉を重ねても、逆に墓穴を

 掘りかねない。

 なに、このめんどくさい状況。


 本人気づいてないかもだけど、新しい環境になって、

 楓真のテンションだって例外無く、みんなと同じで

 上がってたんだなって、そう思った。


 今更気づいても、遅いんだけどね……。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ