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さくらのさくら  作者: YUQARI
第2章 楓真
24/96

5.外部受験。

「高校って言っても、そんなにメンバー変わんない

 から、ピンと来ないよね」

 休み時間、隣の席から身を乗り出して、キョータロが

 そう言って微かに笑う。いつもと変わらないこの笑顔に

 (いや)される。


 教室を見回しても、中学の頃と違う顔ぶれは

 約三分の一と言ったところかな?

 他のクラスだと半分弱ほどが、外部入学になるらしい

 けど、オレたちのいる三組は特進クラスになる。

 学力が見合わなければ、そもそもこのクラスには

 入れない。言わば先鋭(せいえつ)(そろ)っているわけなんだけど

 キョータロには、その自覚はない。


「……そだね」

 机で頬杖(ほおづえ)をつきながら、オレは呆れながら答える。

 ホント、なんで気づかないんだろ? こんなにも

 みんな必死なのに。

 教室の隅では、既に教科書をひろげ、さっき習った

 ことを教えあっているグループもいる。中学と違って

 高校の授業ともなると高度になるから、一つ一つ確実に

 内容を把握(はあく)する必要がある。

 復習組はいつも変わらないメンバー。

 そして、そのグループに入りたそうにしている外部

 入学者。


 わかるなぁ。最初はドキドキするんだよね。

 憧れの城峰(しろみね)学院。入ってみるとやっぱり空気が違う。

 嫌な空気じゃなくて、当たり前のように勉強できる

 雰囲気。だけど強制じゃない。

 みんな自然に自発的に、したい事をする。

 グループの中に入りたければ、素直にそう言えばいい。

 みんな快く仲間に入れてくれる。

 でも……その一歩が踏み出せないんだよね。


 内部入学者と外部入学者。

 見ていると、その違いはすぐに分かる。

 顔見知りかそうでないかもあるんだけど、まず緊張の

 度合いが全く違う。


 内部入学者は、純粋に新しいクラスを楽しもうと

 しているヤツが多いけど、外部入学者は、その気持ち

 プラス不安な気持ちがあるから、少し挙動不審になって

 いる。要は、オドオドしてる。

 ふふ、オレも中学校の頃はそうだったのかな?

 あの時は傍にキョータロがいたから助かった。すぐに

 話し掛けてくれたし。そのせいで教室はザワついた

 けどね。『人見知りの恭太郎(きょうたろう)が、新入生に声を

 掛けたぞ!? 』って。

 ……まぁ、キョータロがここにいるから、追い掛けて

 来たとも言うけれど、ね。



「なんだよー。お前、興味ないの?」

 キョータロはオレの気のない返事に、ガッカリ

 したみたいで残念そうな声を出す。


「ほら楓真は、今回初めての内部受験だろ?

 感想はどうなの? やっぱり中学受験とは違った?」

 ニヤニヤと笑いながら、感想を求めてくる。

 オレは苦笑いしながら口を開く。

「うん。

 少し……気恥しいよね? オレも、三年前は、あんな

 だったのかなーなんて思うとさ」

「ふふ。楓真はね、結構内部入学者に近かい反応

 だったよ?

 結構、堂に入ってた。だから、ちょっとつまんなかった

 けどね」

「え、そんな事ないだろ? 結構不安抱えてたんだけど

 な?」

「は? あれで!?

 お前、そーとー肝っ玉太いよな」

 言ってキョータロは笑う。オレも笑う。

 ひとまず、まだ一緒にいられる。



 見知った風景、見知った仲間が新しい環境の中にいる

 というのは、ちょっとした安心感と満足感があって

 心地いい。


 ずっとそれが続くんだと思ってた。

 高校入学したばかりで、向こう三年間はずっと一緒だ

 なんて。……でもそれは間違いだ。ずっと同じなんて

 有り得ない。


 確かに、日々変わらない日常がずっと続くと思って

 いたし、そうであって欲しいと願った。


 だけどそれが今日、少しずつ崩れていく──。

 

 

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