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さくらのさくら  作者: YUQARI
第2章 楓真
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3.秘密の気持ち。

 いつも怖くて仕方なかった。今だって怖い。

 キョータロが本気を出したら、いったいどうなるん

 だろう? って。

 そしてこの気持ち。

 この気持ちだって、知られてしまったらどうなるか

 分からない。キョータロが本気で俺から離れようと

 したら、もうどうしようもない。

 先生だって言ってたじゃないか。もっと上を目指せる

 のに、なぜ本気を出さないのだろうって。


 だけど今ですら、ギリギリ追いついている状況なのに

 キョータロに本気を出されたら、もうホントに追い

 つけない。手が届かなくなってしまう。

 自由奔放(ほんぽう)で、少し天然が入っているキョータロ。

 だからオレはまだ、かろうじて追いつける。

 このままでいて欲しいって思う。

 このまま一緒にいたいって。

 でも──キョータロは、……キョータロはどう思っ──


「──楓真?」


 呼ばれてハッと気づいて見てみると、物憂げな

 キョータロの双眸(そうぼう)とバッチリ目が合って俺は

 息を呑む。

「う……わぁっ!」

 思わず()()った。


 近い! 近い近い近い……っ!! なんなの? さっきは

 自分の席に座ってただろ? なんで目の前にいんの!?

 そして運の悪いことに、俺は仰け反った瞬間

 バランスを(くず)す。

「ひっ──」

 イスごと後ろにひっくり返りそうになって、変な声が

 出る。

 

「うわっ! 楓真──」

 何やってんの! と叫びながら、キョータロは慌てて

 立ち上がって、俺の(そで)を掴んで助けてくれた。

 バクバクと心臓が音を立てる。

 うわ……どうしよう。

 掴まれた袖が、なんだか嬉しい。すごい。心配してくれ

 てるとか。親友冥利(みょうり)に尽きる。


 あぁ、好きだ。やっぱり好き。これはもう、どう

 しようもない。

 なんで……何で、よりにも寄って相手がキョータロなん

 だろ? だって同性なんだよ?

 最初はもちろん、気のせいだって、必死に思おうとも

 した。思春期にありがちな勘違いだって。

 だけど、多分違う。

 見た目がキョータロにそっくりな乃維ちゃんを見ても

 ときめく事なんかなかった。純粋にキョータロが

 好き──。



 いったいキョータロのどこが好きなんだろう?

 いや、そもそもこの感情って、恋愛感情なの?


 自分で自分が分からない。だから、それなりに分析(ぶんせき)

 してみた。

 分析はやりやすい。だって、キョータロと瓜二つの

 乃維ちゃんの存在があったから。彼女は女の子だ。

 本当ならキョータロじゃなくって、乃維ちゃんを

 選ぶべきだと思う。

 だけど俺が選んだのはキョータロ。

 なんでキョータロ? どうして彼を選んだの?

 でも、乃維ちゃんとキョータロの違いを分析すれば、

 この気持ちの本当の正体が、分かるかもしれない。


 例えば見た目。

 さすがはふたご……二人はとても良く似ている。

 二人を見ていると、男女差って意外とないんだなって

 思い知らされる。

 あ、そりゃ筋力の差とか体の線は当然ちがうよ? でも

 二人はどちらかと言うと中性的で、どの性別でも

 違和感ない。

 ボーイッシュな乃維ちゃんに、柔らかなイメージの

 キョータロ。

 キョータロだって、もっと愛想良くしていてたら

 女の子にもモテたかも……なんて思うけど、これは絶対

 本人には教えちゃいけないやつ。

 ま、教えたところで、キョータロには興味ないかも

 しれないけれど。


 とにかく俺は、見た目でキョータロの事が好きになった

 わけじゃないとは思う。それだったら乃維ちゃんでも

 良かったはずだ。でも俺は、乃維ちゃんにはときめか

 ない。

 例えば同じ笑顔でも、キョータロのそれ(・・)は独り占めに

 したくなる程、好き。


 

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