Dawn
はじまりはいつも白紙で
ときが経てば朝焼けのいろに染まる
だいだい というか
オレンジ のような
ほのおに灼かれたあたらしい
まさしく朝焼けのいろに染まる
そのいろどりの第一筆について
わたしはふと
おもいをめぐらしたけれど
つねにあいまいな――ただ夜明け前の……
ーーうす紫でゆらいでく空の……――
星がきえ
やみがうすまり
なにかたちどころにかわっていきそうな予感を孕んだ
夜明け前の空がみえる
じゃっかんのねむけにねこはのびをして
カーテンのうちがわにすべりこむ
八分二十秒の旅を終えたひかりは
こがねいろの毛並みを照らしている
ひげがくいっとうごき
やわらかい声で「ーー」と鳴く
きづけばわたしは目をさましている
しずむようなけだるさがある
そしてそのまま 原子的なレベルで
わたしが分解されていき そのまま宇宙へ放射され
ふかくまどろむ神様の
すずしい寝床にながれつき
体系化された神話のはしくれをおもいながら
神様のとなりでねこを抱き
いちまんねんまえの胡蝶になる
かしか にれか しらないけれど
とりあえずな森林をゆけば
いずれリンボクとか フウインボクとか
古生代までさかのぼれる
わたしはパンゲアをとびまわり
やがて原始海洋のうえをひらひらする
いつからか海はマグマになりはて
どころか地球は微惑星に
宇宙が熱を帯び
灼けないようにひらひらし
宇宙の晴れ上がりをついに逆行し
わたしは原子ですらなくなる
また目をさます
わたしはわたしとして
寝具によこたわっている
はじまりはいつも白紙である
ねこが鳴いて
コーヒーをいれようとおもう