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8話 ギルドとは

「なんなんなんなん何の御用でしょうか……?」


 壁にへばりついた受付嬢らしき人間が話しかけてくる。今にも失禁しそうな顔で震えており、とても話ができそうな雰囲気ではない。

 さすがのファリナも少し引き気味になりながら、とりあえず要件を伝える。


「冒険者登録をしたい」


「あ、ああぁ、は、ひゃ、はい、ぼぼぼ冒険者登録ですねっ!?ええええっと、あ、あ、あ、そのっ身分証明書はお持ちですかっ!?」


「いらないと聞いたから来たのだ」


「そそそそそうでしたっ!ああああすいません、えっとえっとえっと……!」


 混乱しすぎて文字通り目が回りだした受付嬢。発狂寸前といったその様子にファリナが少し申し訳なさを感じ始めたその時、ギルドの奥から声がかけられる。


「リナ、下がりなさい。私が対応するわ」


「へ、ヘンデルさん…!」


 顔面蒼白の手本みたいな顔をした受付嬢とは打って変わって、落ち着いた雰囲気の受付嬢が出てくる。ヘンデルと呼ばれた受付嬢は、カウンター越しに冒険者達の様子を見て一瞬凍り付くも、即座に気を取り直し営業スマイルを浮かべた。


「冒険者登録の希望とのことでしたが、失礼ながら文字の読み書きの方はできますか?--そうですか、ではこちらの用紙に必要事項を記入してください」


 ファリナは用紙を受け取ろうとするも手が届かず、仕方なしに魔力を使い宙に浮き、用紙を受け取る。そした名前や年齢などを記入した。


「終わりましたら用紙をこちらへ。……はい、結構です。それでは冒険者ギルドについて説明をさせていただきます。まずはギルドの成り立ちの話をしましょう」


「長くなるならしなくていいぞ」


 脳筋なファリナが即座に断るが、ヘンデルは何も聞かなかったかのように話を続ける。


「もともと魔獣の討伐は騎士団が行っていたのですがーー」


「こいつ強いな‥‥」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーー元々魔獣の討伐は騎士団と傭兵が行っていました。しかし騎士団は他にも仕事が多く、魔獣に対応しきることができませんでした。また、当時の傭兵は依頼料が高く、力のある商人や貴族しか雇うことができなかったのです。

 そこで、創始者アルムスが半ば慈善団体として創設したのが冒険者ギルドのもととなった団体、「冒険者パーティー」でした。

 冒険者パーティーは失業者や捨てられた奴隷などに「冒険者」という仮の職業を与え、平民のために少額の依頼料で護衛や魔獣の討伐をしました。当時は不景気によりそういった者たちが急増していたため、冒険者パーティーは次第に人気と勢力を高めていき、ついに正式にギルドとして結成されたのです。ーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……ん?終わったか?」


 受付嬢の長話をぼーっと聞いていたファリナはハッと現実に戻ってくる。最も、聞かなくても全部頭の中に入ってはいるのだが。


「はい、成り立ちの歴史の話は終わりました。ついでに冒険者免許も作っておきました。紛失した際はすぐに申し出て下さいね」


 そういって渡されたカードには名前と共に「下級」という字が書かれていた。


「下級、中級、上級、最上級と位が上がっていきます。上級以上は指名の依頼がくるなど、扱いが特別になりますので上級目指して頑張って下さい……では次に、冒険者ギルドの歴史~特権階級の苦悩~について‥」


「まだ続くのか…」


 受付嬢を魔王軍の幹部よりも危険に感じたファリナだった。



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