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16話 初クエ

「ハハハハハ!お前が勇者か!俺はゼ…ファリナである!ただの田舎娘だ!」


「あ…わ、私はエリーゼです」


 田舎娘感を微塵も感じさせない挨拶に、警戒態勢だったエリーゼが正気に戻る。二人が自己紹介を済ませると、勇者は笑いながら立ち上がった。


「ファリナちゃんに、エリーゼちゃんか!うんうん、いい名前だね!いろいろ大変なこともあるだろうけど、まあ頑張ってね!それじゃ、俺たちはこれで…」


 挨拶をすませ、その場をあとにしようとする勇者だが、キョロキョロとあたりを見回す。


「あれ? ルーチェがいないな? まだギルドの中かな?」


 と、丁度その時、再びギルドの扉が開き、ローブを着た若い女性が出てきた。長身だが、年齢的には16、7くらいに見える。無表情で、少し冷たい印象を受ける。


「お疲れ、うまくいったかな?」


「‥‥」


 ローブの女は勇者にだまって袋と紙切れを渡す。勇者は紙切れを一瞥し、上機嫌に頷いた。


「……うん、うん、グッド!いいね! おっとそういえば!」


 くしゃりと握り潰した紙切れを袋に入れ、勇者は再びファリナ達の方に向き、ローブの女の肩に手を置く。


「この子はルーチェ、俺の大事な仲間だ! ルーチェ、この子はファリナちゃん、後ろの人はエリーゼちゃんだ。これから同じギルドで働く仲間だから、仲良くね」


 勇者がファリナ達を紹介すると、ルーチェは表情のない顔だけを二人の方へ向け、ピクリと痙攣のような動きをした。もしかすると挨拶をしたつもりかもしれない。


「それじゃ、俺たちは用事があるんでね!バーイ!またね!」


 そう言ってギルドを去る勇者達。どうやら王都から出るようで、ファリナ達の横を通り抜け───


「──む」


 一瞬感じた違和感。勘違いかとも思ったが、エリーゼの様子を見るに勘違いではなさそうだ。遠くなっていく勇者たちの背中を凝視しながら、混乱したようにエリーゼがつぶやく。


「──いったいどういう…?まさか、でも…」


 そう、一瞬感じた違和感──魔人の匂い。かなりの微量だったとはいえ、それは間違いなく魔人の匂いだった。


「まさか、勇者は魔人…?」


「いや、それにしては匂いが薄すぎる。もう一人の女も人間のようだし、日常的に魔人と接触していると考えるべきだろうな」


「で、でも、勇者の名は魔の國でも聞くほどの危険人物ですよ?魔人を何人も殺し、魔王軍幹部すら…あ、もしかして魔人を殺したときに匂いがついたとか?」


「違うだろうな。魔人の血は臭いからすぐにわかる」


 果たしていったいどんな理由で。魔人と手を組んで何やら企んでいるのか、それとも──

 ──まあ、いずれにしても。


「…ハハハハ!噂通り面白そうな奴だ…!」


──────────────────────────────


 …で。


「おや、早速お仕事とは熱心ですね。結構」


 ギルドに入ったファリナとエリーゼは、受付嬢から話を聞いている最中だ。


「冒険者には週ごとのノルマがあります。達成できなければ一点減点、五点減点で免許剥奪です」


「そうか。ところで前から思ってたのだが、なぜ俺が下級冒険者なんだ。最上級にしろ」


 突然の無茶ぶりに固まる受付嬢だが、ゴホン、と咳ばらいをし、真面目に説明をする。


「規則ですので。昇級したければ昇級試験を受けていただきます。中級、上級、最上級の昇級試験にはそれぞれ三つのクエストが指定されており、それらを達成すると晴れて昇級です。ちなみに週のノルマはクエストを三つ以上達成することなので、昇級試験をクリアすれば自動的にノルマも達成です。やりますか?」


「ふむ、じゃあそれで頼む」


「かしこまりました。準備をしますので少々お待ちください」


 そう言うや否や、カウンターの奥に引っ込んだ受付嬢は何やらごそごそと準備を始める。

 それにしても、ヘンデルとかいったか、あの受付嬢は中々の実力を持っている。命令に従わないところもそうだが、何よりそれなりの魔力を感じる。下手したらガルドナより上なのではないだろうか。


「へっくち!」


 ギルドの端っこでクエストボードを見ていたガルドナがくしゃみをした。


「おまたせいたしました。中級への昇級試験は『薬草の納品』、『ゴブリン10体の討伐』、『ブラックウルフ』一体の討伐です。道具入れとしてこちらのリュックを支給させていただきます」


 渡されたのはポケットがいくつかついた小さめのリュックサックだ。よく見ると空間拡張の魔法がかかっている。こんなものをホイホイと支給するあたり、人間の魔道具製造技術はかなりのもののようだ。


「討伐といっても何匹殺したかどう証明するんだ?まさかこの鞄に死体でも入れればいいのか?」


「ああ、そうでした。こちらを」


「また魔道具か」


 新たに渡されたのは薄っぺらい板のようなものだ。よくわからないボタンがいくつもついている。


「一番大きい丸を向けた状態で上のボタンを押すと目の前の風景が絵として保存されます。試しに撮ってみてください」


 そう言って目の笑っていない営業スマイルのままピースをする受付嬢。ファリナがいわれたとおりにボタンを押すと、パシャリ、と小さな音が鳴り、少したってから板の底から紙が出てきた。

 紙にはピースをする受付嬢の精巧な絵が描かれている。


「問題なさそうですね。それで冒険者免許と共に魔物の死体の絵を撮ってください。絵は無くすとクエストの達成ができませんので注意してください。それとブラックウルフは牙や爪などはそれなりの値で売れますので持ってきていただければギルドで買い取りします。ゴブリンは特に価値はありません。死体を持ってこられても迷惑なだけですのでやめてくださいね。何か質問は──ありませんね。結構。ではお気を付けて」


 こうしてファリナ達は初めてのクエストを受けるのだった。

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