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13話 図書館ではお静かに

「おおー!すごいぞ!」


「お嬢様、図書館ではお静かに」


 早速図書館に足を踏み入れたファリナ達を、濃厚な本の香りが包み込む。まるで永遠に続いているのではないかと思われるほどにずらりと整列する本棚に、大小さまざまな本が所狭しと詰め込まれている。階層構造になっているようで、建物の中心からは螺旋階段が天井に伸びていた。天井の装飾もこれまた見事なものだ。豪華だが、決して煩わしさや安っぽさをを感じさせることはない。まさに圧巻、リシータは人の國最大の図書館だの、智慧の宝殿だのと言っていたが、実際に見てみればなるほど、名前負けしない素晴らしい場所だということが誰でもわかる。


 それにしても、外観に対して不自然に空間が広く感じたが、どうやら魔法によって空間を拡張しているらしい。誰がかけた魔法かはわからないが、かなりの高等技術だ。魔人でもここまでのことができる者はなかなかいない。


「ふむ…」


 さて、とファリナはとりあえず一番手前の本棚の前に立つ。いつまでも感動している場合ではない、さっさと宝剣についての資料を見つけなくては。と、そうは思うものの、はたしてこれだけの本の中から目的のものを見つけることができるのだろうか、と早速面倒になってくるファリナ。エリーゼにやらせようかとちらと横を見ると、小さな水晶玉が目に入った。


「…? なんだこれは」


 そっと顔を近づけるファリナ。すると、水晶玉がわずかに光を放ち、文字が浮かんだ。


『お求めの本を思い浮かべて下さい。』


「…?」


 よくわからないながらも、水晶の指示通りに宝剣のことについて思い浮かべるファリナ。すると、水晶にその本の場所が浮かび始める。


「2階の199番‥‥3階の15…おお、これは便利だな!」


「占術の応用ですね。これは魔道具の一種なのでしょうか?」


 ご丁寧に映像まで浮かべる水晶玉に描かれた場所を目指し、ファリナ達は図書館を歩き始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 天地開闢と共に創られたとされる四振りの剣ーー『天ノ剣』は天の國に、『冥の剣』は死の國にそれぞれあるとされているが、『王の剣』と『混沌の剣』についてはーー


「その所在は不明であるーーか」


 宝剣について記された古い資料に目を通しながらぼんやりと呟く。『天ノ剣』は今おそらく神の手を離れ、魔王であるレナータが所持している。そして二本は行方不明。となれば、まず狙うは死の國にあるという『冥の剣』か。しかしそれにも問題がある。それは、


「…死の國か…実態が無く魂だけの存在が集う世界と聞いているが…どうやって行ったものか‥」


 そう、死の國はあらゆる世界の中でも異質であり、実態も持つ者は入ることも存在することもできないーーというのが、もっぱらの噂である。もちろんファリナにもそんな世界の入り方などわからない。


「そういうと思いまして、持ってきましたよ」


 どこへいっていたのか、本棚の陰からひょこりと現れたエリーゼの腕には数冊の本が抱えられている。どれもこれも古臭い本だが、その題名はーー


「死の國についての本か?随分と小汚いが」


「役に立ちそうなのはこれくらいですね。あとは御伽噺とかよくわからない哲学的なものばかりです」


「おとぎ話はまだいいとして…哲学?」


 疑問を抱きながらもパラパラとページをめくるファリナ。エリーゼもまた別の本を読みながら疑問に答える。


「死の國の住人たちはそのすべてが死んだ人間らしいですよ。魔の國でもその手の噂は聞きましたが、資料を見る限りどうやら本当らしいです。死んだ人間は死の國に転生し、そして死の國で死んだ者は記憶を失い再び人間として生まれると。…死の國で死ぬというのは何かの比喩表現…?」


「ーーあまり参考にならないなー…念のため哲学やらおとぎ話やらも読んでみるか…」


 どうやら数冊あった本をもう読み終えたらしいファリナは別の本を探しに本棚の奥へと消えていった。

 その無駄に高性能な頭脳を普段から使ってくれればーーと、そう思わずにはいられないエリーゼだった。



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