Episode1ーⅱ
怪しい男達を追って二人が入った酒屋は何人もの危険そうな連中が集まっていた。
「マジでヤバそうだな。」
竜崎が呟く。
そこは大抵の奴が危険そうな雰囲気を持っていた。しかし、虎西の思考回路は一般人とは違った。
「大漁ね。来た価値があったわ。」
この女は少し頭がおかしい、と思いつつも竜崎も自分がさして変わらない頭を持っている事を知っていた。事件が近くにあれば、やはり喜んでしまう自分がいる。
「おい、オッサン。」
先程からつけていた男の1人に竜崎が声をかけた。
「何だ?誰だよ?」
『オッサン』呼ばわりされた『オッサン』は、かなり不機嫌だった。騒然とする空気からこの男達がこの店の中でも、かなり危険な部類に入る事を虎西は察した。そして、ニヤつきを抑える。
相手を『オッサン』などと呼ぶのは竜崎の昔からの決め台詞の様なものだ。他にも『ニイちゃん』、『バアさん』、『嬢ちゃん』などがある。
「お前ら、サツか?」
「惜しいけど違うわ。」
相手は4人。かなり体付きが良い。だが、ノーチャンスでは無い。
「惜しいってんのはどうゆう事だ?」
「こうゆう事だ。」
そう言った瞬間、竜崎の拳が1人目の男の顔面をぶん殴った。男は呆気なく気絶する。
「テメェ…ウギッ!?」
もう1人はいつの間にか背後にいた虎西に股間を蹴り上げられ、倒れ込む。その手から出そうとしていた拳銃がこぼれ落ちる。
あと2人。
「何も悪だくみしてませんってのは通用しそうにないな。」
竜崎に倒された男のポケットから白い粉の入った小さな袋が覗いていた。
「バレちゃ仕方ない…。」
一際素早い男が虎西の方に、デカい男が竜崎の方に襲いかかる。
周りはというと、「喧嘩はいつもの事」という様に気にしていないか、面白がるか、だった。やはり、集まっているのは普通に酒を飲みに来た連中では無いのだ。「嬢ちゃん、ブッ殺す!」
「『オッサン』、棺桶まで案内してやるよ。」
男達が恐ろしい声で言って襲いかかる。
「優しくしてね…。」
虎西はいつもの台詞を吐いた。
「誰が『オッサン』じゃワレェェェェェ!!!!!!!
まだ27じゃボケェェェェェェ!!!!!!!!!」
『オッサン』呼ばわりされた竜崎はヤクザよりヤクザらしい台詞を叫びながら怒り狂って大きな男に殴り掛かった。
酒屋にいた何人かは「その喋り方が『オッサン』だろう。」といかにもな事を思った。