3話
しかし、終わりは来なかった。訪れるのは、迸る鮮血と何かが折れる音。
はっと我に返り目をやると、そこには隊長の姿が。
「諦めたら、そこで試合終r
「言わせないですから! この場面でそーゆーの言わせないですから!」
豪五隊長は仔犬の様な瞳でボクを見ていたが、仔犬の様な瞳になりたいのはボクの方だ。
「まさか……ボクを庇って……」
化物の振り下ろした腕を支えつつ、四肢からは骨と肉の軋む音。ボクを助ける為に隊長は……。
「まさか……は、ストップだぜサムライボーイ! 現実から逃げても、待っているのは後悔なんだぜェ?」
そう言うや否や、ジョーが走り出して隊長と共に怪物の腕を支える。それを見てカオリンは泣き叫びながら腰を振っていた。
「いやぁぁん! 死なないでパパァ!」
――パパ?
異質の言葉を理解できずに隊長を見ると、白い歯で爽やかな笑みをこぼしていた。
「カオリン、愛しの我が娘よ……幸せになるんだぞ……」
えっ、えっ、何を言っているのか分かりません。こんな耳、はじけてまざれ!!
「さあ、逃げろボーイ。俺っち達が支えてる間に、此処を離れてカオリンを! あいつを……俺っちの代わりに幸せにしてやってくれ……」
ジョーがおかしな呪文を呟く。しかし、この状況……どうすれば……ボクに力があれば……。
――力が欲しいか?
ドクン……
――我が名は大魔王ルシフェル
ドクン…
――力が欲しいのなら……くれてやる!!
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
突然聞こえた謎の声と共に現れる獄炎。その炎は渦を巻き、ボクを野獣の如く包み込む!
「ヌゥ……こ、これは……」
「ヒュー、やるじゃんサムライボーイ!」
……気が付けば、全裸になっていた。否、下腹部には真紅に染まる“ふんどし”一丁。
「あはぁん! アレは伝説の“赤ふんルシフェル”じゃないのぉぉ!」
何と云う事だ。何と云う事だ。もう色々混沌とし過ぎて、二回思ってみた。なに力が欲しいかって。なにこのふんどし。まさか、ボクも変態に……いや、まさかは止めだ!!
彼等を助けられるのであれば、使おう……この力を!!
・最終話
◆扉のムコウ
全身に漲る力。これが赤ふんルシフェルなのか……。自由自在に宙を舞い、化物を睨み付ける。すると、化物は先程まで隊長達を押し潰さんとしていた腕を離し、両の手で顔を隠していた。
「ふっ……あの使徒、勇気のセクシーな姿に照れていやがる……」
ナンダッテーーー!?
雌なのか! そもそもこの場面でそれですか! 求む緊迫感!
「チャンスよぉぉん! そして、アタイのお尻も疼いてるわぁぁん! ふんどし姿ステキぃぃ!!」
謎のヘルボイスを無視して、このチャンスを活かす!!
「やってやる! この力、感じて恐れ慄けッ!」
「待て勇気君! これを使え!」
隊長から投げ渡されたそれは……イスラエルIMI社製、短機関銃。名前はウジエル・ガルという製作者からとった非常に攻撃力の高いマシンガン。
「これはウージー! なんと心強い! よし、喰らえ化物!!」
スガガガガガガガガガガガガガガガン!!!!!!
吠えるウージーにより、使徒殲滅。木端微塵に粉砕され、見るも無残な姿へと遂げた。
「赤ふんルシフェル凄い! アタイ惚れちゃう!」
「そりゃないぜハニー、俺っちも頑張ったぜェ~!」
「あっはっはっはっは!」
そんなあたたかい光景の陰で独りほくそ笑む男。カズマ。
「ふっ……あの坊やが赤ふんルシフェルとはな……これは面白くなってきた……堕としてやるぜ……深淵の闇へ……な…」
意味深な呟きも、その時のボク達に届く事はなかった。
「勇気君よくやった! だが浮かれてはいられない。使徒はまだまだ存在する! 取り敢えず帰ってキミの歓迎会だ!」
「もォ、パパったら! 誰が一番浮かれているんだか!」
「あっはっはっはっは!」
「サムライボーイ! 次はもっとスマートに戦える様に、俺っちが稽古してやるぜェ!」
「ありがとうございますジョーさん! でもボク、ウージーあるんで大丈夫です!」
初めての勝利に沸くボクの知らぬ所では、闇の者達が蠢いていた。
果たして、世界に平和は訪れるのか!?
「ボク達の戦いは、これからだ!」
★長らくのご愛読、ありがとうございました!
先生の次回作にご期待ください!(編集部)