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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第二章 教師生活一年目 ―夏期長期休暇
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第三十三話 ハーン式訓練(本家)、魔獣討伐2

 遅くなりましたが、魔獣討伐2の投稿になります。

 この話で魔獣討伐の話は終わりとなりますが、そのためやや詰め込みすぎたのか、話が長くなってしまいました。

 その点につきまして、媒体によっては読みにくくなっているかもしれません。



「悩んでてもしゃーないか。今の状態だと武器が通じないし、魔術を使うっきゃないんだから、やってみようぜ」

「分かった。私は右から行く。左は任せた」

「了解っと」

  

 視界の端から飛んでくるテンワカの尻尾を避け、クラウディアと交差するように駆け出した。

 しっかし、こいつの纏岩だっけかは、くっそ硬ぇな。

 俺の槍に魔力を通して、硬化の魔術をさらに強める付与魔術を使ってるのに傷一つつかないなんて、覇種の魔獣ってだけあるわ。

 てか、先生さ。これ、一体なら弱いって本気で言ってるの?


「まぁ、自分でやるって言ったし、弱音は吐いてられないか」


 自分に言い聞かせるように言うと、魔力を触媒へと向けようとするが、ここでふと父親に言われたことを思い出した。


『いいか、ディータ。これから、伐剣者を生業としていくというのなら、魔術は一拍の呼吸なく使えるようにしておくんだ』

『どうして?』

『そうだな。…例えば、私は長らく伐剣者として多くの依頼をこなしてきたが、その中には禁を破った伐剣者や道を踏み外した者の捕縛など、人に対するものもあった。その者達は厄介でな。大体が腕に自信があり、力への欲求が強い。そのため、ありとあらゆる戦い方を熟知し実践してきている。もちろん、魔力感知能力にも長けているため、こちらが魔術を使おうとすると、それを察知して動こうとする。だから、この者達との戦闘では、いかに魔術を早く発動させるか、いかに気付かせないかというのは、とても重要なんだよ』

『うーん。でも、それは人に対する場合でしょ?俺は魔獣相手を専門にしたいんだけど。それでも、魔術を早く使えるって大事なの?』


 幼かった自分は、父の教えに首を捻る。

 それが、あまりにも可笑しかったのか、父は笑って続きを語った。


『そうか。だが、魔獣を相手にするのであっても必要だな』

『えっと。魔獣って、でっかい獣で魔力を持ってるだけでしょ?それなのに、魔獣相手でも必要なの?』

『ああ、そうだ。魔獣、それが覇種であっても、魔力感知能力は持っていることが多い。ああ、その顔は納得してないな。いいか、魔獣とは魔力を持ち独自の生態を築いた獣。つまり、人と同じように魔力持ち、それを扱える存在だ。なら、人が出来ることが、魔獣に出来ない道理はないだろう?魔獣だから、人の使う魔術を理解できない、分からないと思うのは非常に危険だ。また、そのように、思い込むのも止めなさい。自己の思い込みを、他に当てはめることほど、自分の行動や思考を縛る足枷になるからね』


 そう言われて、頭を撫でられたっけな。

 こんな時になって、いやこんな時だから思い出したのか分からないが、やってみるか。

 

 テンワカの動きを注視しながら、射線上にクラウディアが重ならないような位置へと動く。

 普段触媒へと流す魔力は、…これくらいか。

 自分の中にある魔力を掴み取る感じで引き抜くと、それを一気に触媒へと流し込んだ。


 雷甲弾(ジオボルト)

 魔弾系の魔術、その中で最速の魔術を一拍の呼吸なく発動させる。

 外れるわけがない。そう思えるほどの手応えを持って放たれた雷甲弾は、果たしてテンワカに直撃し紫電を巻き起こしながら弾けた。


 やったか?

 自分から見ても、会心の魔術が的中したのだ。致命的とまでは言わないが、せめて纏岩を砕くなりの成果は欲しい。

 そう願って、テンワカの方を見つめるのだが―――。


 アイツ、ピンピンしてやがんな。

 まあ、ただの一発だけじゃあ分からないし、しばらくは続けてみるか。それに、クラウディアも援護してくれるだろうし、様子を見るか。


 そう思い、クラウディアと共に魔術を撃って撃って撃ちまくる。岩が雷が飛び交い、それを受けてもビクともせずに上下左右、空間を目一杯に利用しながら縦横に駆けるテンワカ。


 その状況がしばらく続いて思う。

 ダメだこりゃ。俺とクラウディアの魔術が当たってるのに、まるで意に介さないように動き回ってるし、これじゃあ埒が明かない。

 このままじゃ、先に俺の方が魔力切れしそうだし、そうなったら素の力で武器を振るうことも、今まで通り動くことも出来ないから、かなりヤバイな。

 なら、どうするか。その答えは全くといって浮かばないまま、時間だけが過ぎていく。

 

 ちっ、ここからじゃ、岩が邪魔で雷甲弾が当たらない。

 魔獣相手だと、考えながら動くってこんなしんどいのか。

 加えて、アイツはアイツで暗がりの方にばかり移動してるし、足場の確認がしにくいったらありゃしない。


 イライラとしつつも、テンワカが射線上に来るように、移動しようとした時、先生が言った言葉が頭に響く。

『固定観念を捨ててアイツの動きをよく観察し、考えながら戦うこと。そうすれば、二人ならなんとかなる』

 先生は、俺とクラウディアの装備や持ってきた触媒を知っているはず。その先生が二人なら何とかなるって言ったんだよな。

 武器も、雷と土の魔術も効かなかった。…なら、火の魔術?


 そこまで考えて一つ閃くものがあった。

 テンワカは、回り込んで襲い掛かってくることはあっても、今まで一度たりとも俺の背後に位置取る事はなかった。何故か。俺の、俺達の後ろには、先生と…広範囲に炎壁があったから。

 コイツは、キチンと分かった上で火のある場所を避けている?

 普通、岩に火は全く効果がない。だけど、それが固定観念で自分の思い込みで自分の行動を縛っているとしたら?


 そこまで、順々に思考を巡らせると、火の触媒の方に魔力をぶちこみ火炎弾を撃ち叫ぶ。


「ちくしょう!何で、岩に炎なんだよ。おかしいだろうがよ!!」


 少しイラつきながら魔術を撃ったせいか、通常より多目の魔力を込め発動した巨大な火炎弾は、唸りを上げてテンワカに迫る。


 クラウディアの火炎を避けて体勢は崩れたままだ。確実に当たる。

 だが、当たるかと思った瞬間、テンワカは四肢に力を込めて飛びすさり、壁を蹴ると体を捻りながら着地してくる。

 そう上手くは事が運ばないか。こちらを睥睨(へいげい)する相手を睨み返しながら、どう攻めるかを考える。


 このまま、俺とクラウディアで火の魔術を使い追い詰めるか?

 …いや、今みたいな動きをされたんじゃ、俺達のやり方じゃ追い詰めるまでいかない率の方が高い。


 なら、一方が魔術で、もう一方が囮も兼ねて武器をメインに攻める。…そっちの方がいいか。射程なら俺の火炎弾が、範囲で言えばクラウディアの火炎がいいんだが。


 チラリとクラウディアの方を見るも、テンワカに対してある程度接近しつつ、火炎の魔術を放ちながら立ち回っている。

 ただ、テンワカのみに意識を割いているのか、こちらの方は完全に意識外という様子だった。


 あー、あの中に割り込んでいくのは、かなり勇気がいるな。何より、こっちに意識が向いてないのと、突然に俺が接近戦をやりだして、クラウディアのリズムが崩れるのが怖いんだけど。

 …まっ、前期に先生にあんだけコンビやチームを組んでの訓練を受けたんだ。相手が魔獣ってだけで、ぶっつけ本番って訳でもないし、何とかなる…と思いたい。

 それにいざとなったら、先生が助けてくれるだろうし、やれるだけやろう。


 腹をくくり、両の掌に力を込めると、足に力を込め一気にテンワカの懐近くまで駆け抜け、右腕に渾身の力を込め喉に赤槍(アンシュティーグ)をブチ込む。


 第一はクラウディアの方に誘導。それが出来なきゃ、一瞬だけでも足を止める。

 気力を振り絞り、テンワカから視線を外さずに、必死に動く。クラウディアの動きは分からない。分からないが、きっとこう動いているだろうと信頼して、一切言葉を吐くことなく相手だけを見続ける。

 

 一拍の呼吸の間に縦横から来るテンワカの爪、牙、尻尾を掻い潜り何とか食らいついていく。

 肩を掠り、胴辺りに唸りを上げて過ぎていく影を避け、前に前にと打ち進む。

 呼吸は少し前から荒くなり、視界には酸素不足からか金色の粒子が舞っている。


 その状態がどれだけ続いたか、ただ自分の息づかいだけが響くなか、唐突に耳の奥に異音が割り込むように入ってくる。

 その瞬間、異音が何かと意識する間もなく、その音に導かれるがままに赤槍を薙ぐ。

 空を切り、音のしたであろう場所にぶつかった瞬間、手にはまるで固めのバターを切るかの感触が残ったかと思うと、必要以上に出してしまった自分の力に引き摺られ、体が泳いでしまう。


 ヤバッ!!

 体勢が崩れた。このままだと、攻撃を避けられない。


 とっさの事に、内心慌てながら流れた上半身に力を込めて、体勢を戻そうとする。

 同時に足から硬さを抜き、攻められた場合に前後左右どうとでも動けるように備える。

 だが、そんな心配は杞憂に終わった。今まで眼前にいたはずの相手は、何故か俺達から距離を置く位置に陣取っていた。

 

 助かった。そう思うと同時に俺達から距離をとった理由、さっき感じた手応えの答えを探すために目を凝らし、テンワカを見つめる。

 さっき居た俺の立ち位置、それと槍の攻撃範囲と高さから見て、テンワカの右手方向のはずだけど、どこだ?

 鋭い爪の先端から徐々に上に視線を上げていくと右足の爪と手甲部分の色が変わっていて、そして…。


「纏岩が剥がれてる。それと、あれは血…か」


 今まで、どんな攻撃をしてもびくともしなかった纏岩、その一部がなくなっており、その下から流れる血が炎に赤く反射していた。

 部分的にはごく一部。しかし、確実にダメージを与えた。そう、俺の槍が届いた。

 その事実を理解すると、猛然と突っ込んでいく。今までの疲れは、湧き上がる高揚感の影に隠れ、視線は相手だけを見つめ離れない。


 まずは、色が変わっている場所の纏岩を穿つ。

 ただそれだけ。それ以上の事は頭から剥がれ落ちたかのように、ただひたすらに槍を振るう。

 技もなく、ただの力業のみ。剥き出しになった弱点、その一点をただひたすらに狙い続ける。

 そんな俺の勢いに、テンワカも抗うように動くが。


「そっちには、クラウディアがいるぜ」


 いて欲しい場所。そこに、言葉をかけずともいてくれる。その事に、思わず頬が緩む。


 動いた先いたクラウディアが火炎の魔術を放つと、その炎は纏岩に当たり異音となって木霊し、煙を漂わせながら岩の色を変えていく。

 クラウディアの方に意識を移した、その隙を見逃さず一気に詰め寄り、僅かに残っていた右足の纏岩を凪ぎはらい青槍(ウォーフォルグ)で貫くと、持てる魔力を全力で注ぎ込んだ。

 左右からの、ほぼ同時ともいえる攻勢に、たまらないとばかりに引こうとするテンワカだが、右足は地に縫いつけられたように動かない。


「悪いな。この槍は穿ち縛り付けるんだ」


 格好つけて言ったけど、加減が分からないから結構魔力を使っちまったし、間に合うか。

 徐々に重くなっていく槍と身を守る鎧から、自身の魔力が残り少なくなっていることを悟る。

 だけど、だけどな。


「そんな事、気にしてらんねっつーんだよ!!」


 この好機に、ぐちぐちと弱音を吐いてられるかってんだ。

 通常より多くの魔力を触媒に通し、テンワカを見上げる。狙うは喉。炎を受けた纏岩だと、それほどの硬さはない。だから、俺の槍なら貫ける。


「ディータ!!閃光を使うぞ」


 クラウディアも、ここが勝負と見たのか、俺が何をするのか分かったかのように閃光の魔術を使うことを告げてくる。

 思わず口の端が上げ、視界を守った直後に、爆発するかのように輝く閃光がこの広い空間を埋め尽くした。

 視界を守った俺に対して、至近距離で閃光の魔術をまともに受けたテンワカは視界を塞がれ混乱したように暴れるが俺の槍が地面に縫い付け離さない。


 かなりの魔力を使ってんだから、効いてくれよ。

 そう願いつつ、暴れるテンワカに狙いをつけ、かき集めた魔力を込めた火炎弾を喉に放つと、同時に駆け出す。

 纏岩に当たり舞い落ちてくる火の粉を、視界を曇らす煙を、全てを無視し懐奥に飛び込んでいく。

 すべては、ただ一点。ただ一点のみを穿ち貫くために。


 雄叫びとともに繰り出す全身全霊の突き。

 槍先は纏岩に当たると岩を突き通し、そして咆哮が響く。もう、自分の雄叫びなのか、テンワカの咆哮かが分からなくなった時、その巨体から力がなくなったかのようにゆるりと崩れ落ちた。


 残っていた力を振り絞り槍を抜くと、押し潰されないよう慌てて下がる。

 下がって、どっと押し寄せる疲労感に押し潰されかけ、槍を地面に突き刺し、体重を預けながらなんとか立つ。

 そうして、ようやく立ちながら目の前に横たわる巨体、その事実を認識する。


「…やった」


 信じられない。いや、信じられないじゃないや。えっと、その、やった…んだよな。

 俺とクラウディアで、この覇種の魔獣を倒したんだよな。

 

 疲れ、喜び、自信。ありとあらゆる感情が湧き上がり、それに浸っていると、視界の端に影が映る。

 なんだと、顔を動かし影の方を見ると、巨体を横たえながら動く気配はなかった目の前の魔獣。それが、嘘だったかのように、自身に迫りくるテンワカの尻尾。

 魔力のほとんどを使い果たし、満足に身体能力強化も掛けられない今、自分の槍と鎧が重くのし掛かる。


 避けないと。

 重い体に鞭打って何とか回避しようと意識するが、思考に反して言うことを聞いてくれない自分の体に、思わず目をつぶった瞬間、すぐ近くで金属にぶつかるような音が響く。

 恐る恐る目を開けると、盾を両手で抑え、地に足をめり込ませるクラウディアがいた。


 助かった。

 ゆっくりと盾から落ちていくテンワカの尻尾を見ながら、心の底からそう思い息をつく。


「助かったよ。ありがとう、クラウディア」

「なに。コイツが万全の時なら無理だったが、今の状態なら私でも何とかなりそうだったからな。それに――」

「それに?」

「言ってただろ、『危なくなったら、助けてくれ』と」


 あー、コイツとやる前にクラウディアに言ってたやつか。

 あの時は、クラウディアが緊張してるようだったから、和ます感じで言ったんだっけな。まぁ、俺自身も魔獣とやるのは初めてだったから、緊張してたし人の事は言えないか。

 

「やったな、クラウディア」

「ああ、やったなディータ」


 とにかく、何とか無事に終わった。ヤバイこともあったが、お互いに五体満足で乗り切った。

 結構やれるじゃん、俺達。

 そう思うと、自然とクラウディアと拳をぶつけあった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「なかなか、いい動きじゃないか」

「ええ、本当に。ディータ君もクラウディアちゃんも、結構(さま)になってるわね」


 ディータとクラウディアの動きを、微動だにせずに視線を巡らし追っていると、後ろから二人の声が聞こえた。


「終わったのか、親父お袋。てか、魔術が切れる前にあそこから出てこれるんだな」

「当たり前だ。自分の使った魔術で縛られるなんて間抜けなことはしない。キチンと出る方法は用意してるさ」


 視線は外さず前を向きながら親父に語りかけると、呆れたような返事をされる。

 それもそうかと、適当な相槌を打つと苦笑するような声が返ってくる。


「まあ、俺の魔術の事はいい。それよりも、思ったよりも善戦出来てるな。何より、二人の息が上手いこと合っているところを見るとかなり鍛えたな」

「一応、学院の前期って言うのかな。ここに来るまでに、体力と連携しての戦い方はみっちり仕込んだからな」


 そう、本命だった瞬時強化を教えるのを後回しにしてまで、その土台となる体作りを徹底的に鍛え上げたんだからな。

 かつて、自分がそうだったように、鍛えた体力と魔力を限界まで使い、その状態でも戦えるように教えてきた。


「ほう。ディータ君は、魔獣との戦いで必要な魔術行使法を知っているみたいだな。まだまだ荒削りで魔力を多く使ってるようだが、あれもお前が教えたのか?」

「いや、あれは時間がなくて教えてないな。…多分、ディータの親父さんが伐剣者だから、そこから聞いてたんじゃないかな」

「その様子だと、知らなかったようだな。ということは、今まではしなかったのか、それとも出来なかったのがここに来て花開いたのか…。とにかく、これからが楽しみだな」


 そう楽しそうにお袋と話すのを耳にすると、確かにと思う自分がいる。

 『伐剣者にとって、実戦に勝る訓練なし』

 昔、親父に言われたことだが、こうして目の当たりにすると、そうなのかも知れないと思ってしまう。


「レーヴェ。お前は、あの子達の今の戦いぶりを見て、どう思うんだ?」

「ん?ああ、正直言って、あの二人がここまで上手く立ち回れるとは思っていなかった。だから、ビックリしている、かな」


 本当、予想以上に上手くやっている。

 ほとんど無傷で接近戦をこなし、武器が通用しないと判断すると即座に魔術を使うことに切り替えた。

 さらにヒントを、いやヒントではなく固定観念を捨てろという言葉を与えただけなのに、もう纏岩の弱点である火の魔術を使おうとしている。

 二人で息を合わした戦い方、魔獣を相手にしっかりと観察し行動を決める決断力、そのどれをとっても学院での授業とは段違いの成長を見せている。


「これは、俺の失敗を踏まえての助言だが、教える相手のギリギリを見極め、その少し上の場を作ってやれ。その時、出来るか出来ないかは関係がない。出来なければ出来るように、出来ればまた少し上を場を用意すればいい」

「それが、今回でいうとこの準危険領域ってことか?だけど――」

「いや、今回は俺とヴァネサ、それにお前がいたからここにしただけだ。レーヴェ一人なら、ここまでする必要はないさ」


 意外。そう、意外な答えが返ってくる。てっきり、あの二人は一頭なら覇種の魔獣を相手にできるから、普通のとこでは訓練にならないだろうと言われるかと思った。

 視線を二人には向けていないにも関わらず、俺の内心が伝わったのか、苦笑される。


「だから、言ってるだろ。俺の失敗を踏まえた助言だと。俺は、お前の伐剣者の技術だけを高め、場を整えることを怠った。それなのに、お前を危険領域に連れ出し、結果として死線を潜らせてしまった。それが、今でも尾を引いてしまっている」


 そう、あの時は本当に死にかけた。伐剣者という職業に、恐怖と嫌気がさしたのは事実だ。

 だけど、結局は流されるまま伐剣者になり、また危険領域での依頼をこなしていた。

 だからか、そんな状況から逃げ出すために、国を離れ教師って職業になった。なったのだが、教えているのは伐剣者になるための、生徒達の夢である最高位の伐剣者になるためのものだ。

 俺は、一体どうしたかったんだろうな。


「あの子達も、やがてはお前の手から離れる。だから、今のうちに、お前の考えうる最高の場を用意し経験させてやれ。それが、伐剣者に教えるということの最も大事なことだと、今ならば言える」


 出来る無茶は無茶ではない、か。

 この戦闘が始まる前に親父が言っていた言葉が甦る。確かに、将来を考えると、何時までも俺が付きっきりというわけにもいかないし、学院は三年という期限もある。

 だからこそ、色んな経験はさせなくちゃならないんだろうな。


「あなた、レーヴェも、どうやら決着がつきそうだから、話はその辺にしておいたら」

「そうだな。伝えたいことは伝えた。後は、レーヴェが考え、自分なりの方法を模索してくれ」


 そう話を纏めると、親父達は黙り俺と共にディータとクラウディアを見守る。

 その視線の先で、ディータが今まさにテンワカの喉元に槍を突き立てようとしていた。

 終わった。見ていても、そう思えるような会心の突きを放ち、そしてテンワカがその身を横たえる。


「最後に少し危ないところがあったけど、上手くクラウディアちゃんがフォローに回ったわね」

「さてと、最後の仕上げに二人のところに行ってやれ。こっちには当たりがなかったが、もしかしたらってのがあるからな」

「ああ、分かってる」


 今は俺の悩みより、二人の成長と成果を祝おう。

 そう自分の思考に区切りをつけると、拳を合わせる二人のもとに向かって一歩を踏み出していった。


◇◆◇◆◇◆◇◆

【魔術情報13】

・雷甲弾[ジオボルト]

 魔弾系において、最速の魔術。

 その性質として速度を利用して、相手の防御を貫く事を目的とした魔術。

 

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