第三十話 ハーン式訓練(本家)はやってやらせて
大変に、ご無沙汰しております。源五郎です。
何のお知らせもなく、長期に渡る休載をしてしまった事に対して、先ずはお詫び申し上げます。
私事においてゴタゴタしていたのと、続きとして書いていた内容が余りにもネガティブ過ぎるものだったので、どう直すか、どう手直しするかを手を付けられないままにスランプに陥ってしまいました。
恐らくですがスランプを抜けたと思いますので、また再開させていただきます。
最後になりますが、長らく待っていただいた皆様、誠にありがとうございます。また、これからもよろしくお願い致します。
(前回までのあらすじ)
ギルドとの契約に基づいて、ジギスムント帝立学院の夏期長期休暇の間、故郷であるガルクブルンナーに戻ってきたレオンハルト。
そこで、ディータとクラウディアを鍛えながら過ごしていたものの、暗き森の一件から伐剣者を鍛えるとは、という問題にぶち当たる。
悩むレオンハルトに、義両親であるゲオルグとヴァネサも手助けすることになったのだが、鍛える場所はとぐろ巻く大山。依頼は、採掘。
準危険領域での採掘依頼に、どんな結果が待つのか。
レオンハルトは何を感じ、ディータとクラウディアは何を得るのか。
お口にチャックをして見守るレオンハルトを前に、どこで採掘するかを話し合うディータとクラウディアの出した結論は――――。
(本日二話連続更新の一話目です)
踏み出した足に弾かれた大きめの石がガランゴロンと山の斜面を転がり落ちていき、足をとられバランスを少し崩したクラウディアは慌てて体勢を建て直す。
周囲を警戒し左手側の山壁に手を掛けながら、僅かに道と言える程度の山道を慎重に歩を進めていると、慣れない内はなかなか足元に目がいかないのでしょうがないかもしれないが、少しずつでも慣れて貰わないとな。
ここが準危険領域である以上、何時何時に魔獣に襲われるか分からないため、足場の確保は絶対にしておかなければならない事の一つだ。
まあ、万が一が起きないように二人の側にはお袋をおいて、最前列には親父が、最後尾には俺が立って周囲を警戒しているが、絶対とは言えない以上一歩一歩を意識しながら踏み出すように注意する。
注意するが、今までと違って具体的にこうした方がいいという事までは語らないように意識して、慎重に言葉を選びながら簡潔なものにした。
一つはロッホスさんがテオに渡した報告書の内容を読んだこと、一つは一から伐剣者に教えるという経験がないため、俺自身どう教えるかの迷いがあったためなんだが、まだまだ慣れないな。
必要最小限で要点をバシッと伝えるのか、ちょっとしたヒントに止めるのか場合場合によるんだろうが、本当に難しいもんだ。
まあ、今は親父達もいることで、言葉が足りなければ付け足してくれるからヒントに止めておいて、何か付け足されたならそれを基準にして覚えていけばいいと割りきっておくか。
そう考えながら、周囲に注意を払いながら進んでいくと目的のポイントに下っていくための入口にたどり着く。
昨夜、採掘ポイントまでの距離や危険度について聞かれたことを説明し、それを踏まえてディータとクラウディアが選んだのは、採掘で大物が出るかもしれないポイントだった。
大物が出なければ、そこそこの危険で普通の報酬となるのだが、ここを選んだということは何か大物を求めるというロマン的なものがあるのかな。
そう他愛ない事を考えながら、入口となる山壁にぽっかりと空いた薄暗い穴、それを前にして小さく開けた場所で背負ってきた荷物を下ろす。
「さてと、それじゃ入っていくが、ディータとクラウディアはこういう道具を使った経験はあるのか?」
背嚢を下ろし、くくりつけているツルハシやカンテラ、ザイルロープなんかを外しながら確認すると、こちらを見ながら同じように背嚢を下ろして準備している二人がこちらの方を向く。
「採掘はもちろんだけど、坑道に入るのも初めてかな。でも、道具の使い方は一通り分かるよ」
「私の場合は、坑道という場所は初めてですね。それに、恐らくですが、これらの道具も坑道特有の使い方をするのでしょう?なら、使い方という点でも初めての事も多いと思います」
「あっ、そうか。そういう事もあるよな。じゃあ、俺もクラウディアと一緒で初めてだわ」
そう言ってアハハと笑い声と共に答えが返ってきた。
あー、二人とも坑道を歩く経験はなしと。あと、道具の使い方も分からないものが多い…かもしれない、か。
えーと、ツルハシとかの使い方は実際に使いながら学んでもらうとして、取り敢えずは怪我とかの危険があるものだけ伝えるか。
「あー、ここの坑道の情報を簡単に説明すると、幾つかの分岐はあるけど、入り組んではいないから迷うことはないと思う。中は所々濡れている場所もあるから滑る可能性があるので注意してほしい。後は、坑道内部は当然に暗いのでカンテラに火を灯して一定の視界を確保するため片手が常に塞がる状態であることを考えてどう進むかを判断する。これくらいかな」
「んーと、滑らないよう注意する事と視界を確保する事、進む時の位置取りを考えるね。了解」
「カンテラですが、背嚢にくくりつけて進むことは出来ませんか?それだと両手が空いて便利だと思うのですが」
「ああ、背嚢を背負っていくつもりだったのか。万が一のために少しの食料類と必要な道具は持っていくけど、背嚢自体は持っていかないよ」
色々と道具を詰め込んでいる背嚢を背負ったままだと動きは制限されるし、何より帰りには採掘した鉱石やらなんやらを持っているのだから、行きは出来るだけ軽くしていくというのが一般的である。
中で一日以上過ごすとかなら話は変わるが、採掘場までの往復に約二時間。そして、本番となる採掘は長くても数時間と区切っているのだから、わざわざ大変な思いをしてまで持っていく必要性はない。
そう説明するのだが、何故か二人とも背嚢を置いて行くことを躊躇っていた。
「いや、でもさ。ここに置いてたんじゃ荒らされたりしない?魔獣とか…その同業者とかにさ」
しばらく悩んでいたが、自分だけでは結論がでないと思ったのか自信なげに聞いてきたことで、何を不安に思っているかようやく分かった。
クラウディアに視線を向けると、同じような疑問があったのかコクンと頷いてくる。
「二人の疑問は分かった。確かにここは魔獣達の領域だし、心配している事が起こる可能性はあるな。ただ、こういう場合には色々とやりようがあるんだよ。そうだな、せっかくだし聞いてみるか。二人だったら、どんな風に荷物を守る?」
その辺の対策は、親父達が準備してきているだろうが、おそらくというか、確実に自分達のやり方の準備しかしてきてないはず。
なら、それは自分達で試行錯誤した上での、Sランク伐剣者としてのやり方となる。
そんなものを、二人にこうやるんだぞと言って教えるのは、かえって害悪になるんじゃないかな。
それなら、二人にまず考えてもらって、その後に親父達は、高位の伐剣者のやり方を見せる方がまだいいだろう…きっと。
「そうだなぁ、俺ならこのザイルを使うかな」
「もう少し具体的に頼む。ディータは、そのザイルをどう使うんだ?」
「えっと、まず全員の荷物の肩ベルトにザイルを通して、それをそこの端から崖の方に吊っておくっておくかな。もう少し言うなら、金具かなんかも用意して岩場に打ち付けとけば、重さで落っこちることも減ると思うんだ。で、ザイルを括ってる部分をそこら辺の石で隠しておけば、よっぽど注意深く見なきゃ気付かれないかなぁっておもうんだけど」
「なるほどな。いや、その方法もアリだな。魔獣避けの香も調合師のとこに行けば売ってるだろうし、それを使えば気休め程度とはいえ、魔獣からも守れるな。うん、いいんじゃないか」
こういう場ならではのやり方だが、聞いてディータの言うような答が返ってくるってことは、他の場所でもディータなりに考えて出来るだろうし、経験を積めば自分なりにもっと応用していくだろう。
これなら大丈夫だなと思い、次はクラウディアの方を見るとしっかりとこちらを見返してくる。
おっ、これは自信ありってところかな。
「今のディータの考えを聞いて、クラウディアはどう思う?同じような感じかな?それとも別の方法かな?」
「別の方法です」
間髪いれずに返事が返ってきたので、クラウディアの考えを聞くために水を向けて、具体的に話を聞いてみる。
「私なら、このような場ではそこらの山壁に適当な穴を掘り、そこに荷物を纏めて放り込みます。その上で、穴を塞ぎその上に目印を付けます。その程度なら、採掘用の道具でも土系統の魔術でもそれほど労力を使わずに出来ますし、元々持ってきている道具か軽い触媒で済みますので準備という点でも手間とは言えませんから」
「それに、魔獣とかに荷物を荒らされる心配が吊るすより低いから…かな?クラウディアの考えもアリだな。あえて付け足すなら、纏めるときに革布か何かで包んでいれば、荷物の中身が傷む事も少ないかなと思う。二人とも、この場所にあった考えを直ぐに思い付いたのは良かったぞ。さて、それじゃあ高位の伐剣者である親父達はどんな方法をするかだが…」
そう言って親父の方に視線を向けると、心得たとばかりに背嚢から折り畳まれた物を取り出し、バサリと大きく広げる。
広げられた物は革製の大袋で、俺達が背負ってきた背嚢すべてを丸々と入れるだけの大きさがあった。
その大袋に、まず親父達が背嚢を、続いて必要な物を取り出し終わった俺のと二人の背嚢を入れて縛ると、最後に口部分にちょっとした細工をして完成する。
「後は、覚えやすくて知らない人間が間違っても触らないような場所に置いておくだけだな」
「いや、…え?それだけで大丈夫なの?」
あまりに簡単な作業を見ていた二人は余計に不安になったのか、納得いかないって顔でこっちを見てくる。
「ああ大丈夫だ。この袋の口部分に付けた石。これは雷石といって、込めた魔力の分だけ電撃を発するって性質のものだ。そして、この袋。これは、雷を纏うとある竜種の皮で作ってあってな、袋の表面全体に電撃を通し続ける優れもので、雷石から発せられた電撃を流し続けてくれるんだ」
「ハーン教諭。確かに、それなら魔獣や不逞の者からは守れるかもしれませんが、予定より早く切り上げた時は私達も触れないのではないですか?」
仕組みを説明し終えると、まあ出て当然の疑問と言えば疑問が出てくる。
「クラウディアの疑問に答えると、雷石と対になるこの鳴石を当てることで溜め込んだ魔力を吸い取ってくれるので、俺自身が触れなくなるなんて事はないから心配しないでくれ」
そう言って、親父が取り出した鳴石を見せるとへーと感心するような声を上げてしげしげと石を見る。
少し待ったが、さらに質問が飛んでくる様子もなさそうだし、一応は納得してくれたかな。
さてと、じゃあ荷物を置いて魔力を込めるか。
しかし、この世界は魔力があって触媒さえあれば誰でもこんな事ができるんだから本当に便利だよな。
雷石に魔力を送り続けながら、かつて居た世界との違いに耽っていると、「置いていくわよー」というお袋の言葉が聞こえ我にかえる。
目を落とすと、すでに雷石に魔力は満ち、徐々に稲光を発しながら革袋の表面を覆い始めている。
いかんいかん。こんなところで何を呑気なと思い、荷物を背負うと皆に続いて坑道に足を踏み入れていった。
◇◆◇◆◇◆
カンテラに火を灯し坑道を進んでいく。
坑道の入口付近は、まだ外とそれほどの温度差はなかったが、進むにつれて涼しくなり、ついには肌寒さも感じるほどになる。
「迂闊だった。まさか、坑道内がここまで冷えるとは。暗き森に行く際に買った外套を持ってくればよかった」
「そうかな?俺はまだ大丈夫だけど。…まあ、こっから先がもっと寒くなるんなら確かに必要だったかもな」
気温の違いについて考えていなかったのか、二人はそういった話をしながら進む。
今回は、依頼を受ける段階から二人に完全に任せるという形を取っていた。
それは、交渉の仕方はもちろん、ここに来るための準備について足りない物があっても、命や怪我に繋がるものでない限り口出ししないというものだ。
まあ、交渉依頼については偶然のものだったが、いい機会という事にして任せたんだけどな。
「ディータ。クラウディアは装備が主に金属だから俺達より寒く感じるんだよ。クラウディアも、次回からは行く場所がどんなところか想像しながら、考えて準備するようにな」
「本当ですね。しかし、自分の付けている鎧でここまで差があるとは考えてもみませんでした」
そう言って苦笑するクラウディアに相づちを打っていると、ほの暗い空間からシュッと何かが飛んでくる気配がした。
視線だけ横にズラすと、それがお袋が投げた虹色石が飛んでくるのだと分かったが、何か言う暇もなくクラウディアに当たってしまう。
俺と話していたことで周りに意識がいってなかったためか、鎧の肩口にカンと当たったことで、ようやく気付いたとばかりに虹色石に視線を向けるが、その時には微妙に鈍い音を立てて地面に落ちていた。
「クラウディアちゃん。話していても、ちゃんと周りに意識を置いておく。ここは外と違ってただでさえ暗くて目だけに頼れないから、全身の神経を常に研ぎ澄ませて、まずは自分の周囲を把握するようにね」
「申し訳ない。しかし聞いていた通り、外と違って目だけに頼れないので訓練の度合いは段違いですね」
訓練が続けられている事がさも当然というような会話が繰り広げられているが。…あれ?そんな話してたっけな?
「えっと、いや…。その訓練ここでも継続してるの?」
「何言ってるのよ。さっき、坑道に入る前に二人にキチンと説明してたでしょ。聞いてなかったの?」
「ええ。言っていましたね。魔獣が近くにいる時や滑るような危険な場所ではしないとキチンと説明して、私とディータの質問にも答えてくれてましたよ」
そう言われるとほぼ同時に前方からディータのイテッという声が聞こえる。
どうやら、ディータはディータで親父から虹色石を投げられて直撃したようで、なにやら注意を受けていた。
漏れ聞こえてくる内容はクラウディアと同じようなもので、それに対してディータは少し考えてから返事をしていた。
返事を受けると親父は頷き返してこちらの方を窺い、お袋と視線を合わせると分かっているとばかりにクラウディアを促して俺を置いて奥へとさらに進んでいった。
………あれ?何このアウェー感?
いや、まあ伐剣者としての教育法を見せてくれてるんだから、今は俺も親父達の生徒と言えば生徒だから問題ないよな…よな?
悶々とするものはあるがそう自分を納得させて、皆の後を少し足早に追いかけていく。
そうして坑道を進み、時にザイルロープの使い方や足元が不安定な場所での移動術を教えながらどんどんと奥へと入っていく。
まあ、それらも全部親父とお袋がしてくれたんだけど。
ただ、俺は俺で何もしないと言うわけではなく、どこまで説明するかの上限というか、上手く考える方に誘導するような会話法をしっかりと聞いておく。
夏期長期休暇が終われば、また学院で教えていくのだから、ここで積極的に聞いて覚えて、自分なりの言葉として定着させておかなければならない。
だから、決して俺が喋る隙がないとか、親父達の弟子みたいになってる雰囲気のせいで教えるタイミングを逸したとかではない。
「しっかし、視界と足元が悪くて移動しづらいな」
「ああ、全くだ。と言いたいんだが、ディータは私より上手くやれてるじゃないか」
「そう?ヘヘっ、もしかしたら、慣れてきたってのはあるかな。って痛い」
指で鼻の下を掻きながら自慢げな笑顔でクラウディアと会話していたディータの鎧に親父からの投擲が見事にヒットする。
「多少上手く動けてるからといって、肝心の周囲の警戒を怠ってはいけない。それに、今回の訓練は最初に言ったように、魔力感知のきっかけを掴むというものが主軸だから、気を抜かずしっかりと集中するように。さて、それはそうと……」
親父が手を伸ばして前方の方にカンテラを伸ばすと、通路の終わり、採掘場となる空洞の入口がほのかに見えた。
そして、カンテラで前方を照らしたまま、俺とお袋に視線を向けて確認してくる。
こういう採掘場は、大体が大きな空洞になっている事が多く、今から入るのも同様な形だったはず。
ここで、なぜ空洞になっているかという疑問が出てくるが、理由としては自然に出来たものともう一つ。魔獣の餌場になっている二つの可能性があった。
今のところはだが、俺自身の目で実際に魔獣が鉱石やらの食事をしつつ空洞になっていくという場面に出くわした事はないが、伐剣者としてはどんな場所であっても入る前に確認するということが一般的である。
今回は魔力感知の技能を持っているものが三人。俺と親父、お袋と揃っているので、全員に確認するために視線を向けてきたと。
親父の視線を受けて、俺も前方を細心の注意を払って窺うが、魔獣の魔力はもちろん、人の気配さえ引っ掛かることはなかった。
そこまで確認し終えると、そっと首を横に振り大丈夫だという事を親父に示すと、少し遅れてお袋も同じ仕草をする。
三人が三人とも魔力を感じ取れないってことは、大丈夫そうだな。
「ディータ、クラウディア。一応、採掘場の中に魔力の反応はなかった。だけど、魔力感知が出来なければ、そんなことは分からない。だから、二人は危険があるかもしれないという体で周囲を警戒しながら入る体でいくぞ」
「入る体?」
「ああ、魔獣だけでなく伐剣者もいないが、居るかもしれないという体裁をとるってことだな。順序としては、入口付近から中に明かりがあるか確認する。明かりがあれば、先に来た者がどんな人間かに注意しながら近づき、無ければ入り口が安全かをまず見る。こんな所かな。よし、カンテラの明かりを消すから、目が慣れてからゆっくり進んでいくぞ」
「ちょっ、ちょっと待って」
そう言って明かりを消そうとすると、ディータが慌てて声を出す。
そして、声は出さずともクラウディアも、こっちの方を注視しているようだ。
はて、何か言い忘れがあったかな?
「いやさ、別にカンテラの明かりを消さなくても、このまま入ればいいじゃない。その方が、先に中に入ってる人にも、誰か入ってきたって分かって下手に攻撃されなくてすむし、安全じゃない?」
「ああ、そういう事か。いや、この場合は消す方が安全なんだ。これは、どちらかと言えば、他の伐剣者に対するものではなくて、魔獣から襲われないようにするための用心て方が強い」
「魔獣?用心?」
魔獣に対する用心という事と明かりを消す事がどうしてもピンとこないのか、首を傾げる様子にもう少し突っ込んで説明するか。そう決めるとディータとクラウディアのほうを向く。
「正直、魔獣は恐ろしい」
「恐ろしい?先生でも?」
「ああ、恐ろしい。魔獣は人の領域にいる大型の獣と違って、その身に魔力を有して独自の生態を持っている。人間が触媒を持って行使する魔術をその身一つで、またはそれ以上の事をする個体も存在するんだぞ。それに、種ごとに差はあれど、十分に高い知能を持つ奴もいる。そんな奴らは、こういう暗闇で人が来るのをじっと待ち構え、油断しているところをバクリといく。入口付近で待ち構えてな。そんなところに、明かりを持って、『ここにいますよ』なんて入っていけないだろう?だから、明かりを消すんだ。…まっ、習うより慣れろだな。親父達が始めにやるから、それを見ながら二人もやってみようか」
俺が妙に魔獣の怖さについて熱弁をふるったので、ディータとクラウディアはやや引きながら頷く。
ま、まあ、変に油断しているよりはいいよな。
そう自分に言い聞かせ、カンテラの明かりを消すと辺り
は完全な闇に溶けていった。




