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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第二章 教師生活一年目 ―夏期長期休暇
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第二十九話 ハーン式訓練(本家)の実践…だよね


 麓付近にあった土肌の道は最早見えなくなって久しく、目の前には大小様々な石が転がり道らしい道はなくなっているが、平たく積み重なった岩を足場にしながら時に大股になりながら登っていく。


 ここは少し登りにくいな。

 そう思いながら取っ手になりそうな部分に手を置きつつ足を高く上げた瞬間、軸足となっている左足に嫌な気配を感じ、手に力を込め無理矢理に体を持ち上げる。


 すると、フワリと浮いた体の下、丁度左足があった部分からガギンとナイフが岩にぶつかり弾かれクルクルと回ったかと思うと、紐を引かれて投げた持ち主の手に戻っていった。


「オオー!!イテッ」

「集中を切らさない」


 俺のとっさの回避に感心したのか、集中を切らしたディータが本日何度目になるかわからない投石の被害にあっていた。

 とは言っても、しっかり(ヘルム)の一番硬い部分を狙って当てている辺り親父も一定の配慮をしているようだ。

 いや、本当に俺の時とは大違いだな。


「ディータ君。ここは表層とはいえもう中盤に近い場所だ。そんなところにいるんだから、もう少し集中しないといけない」

「すみません」

「ふむ。とは言え、慣れない場所ですでにかなり登ったし、陽も落ちてきた。もう少し登れば開けた場所があったはずだし、まだ早いかもしれないが今日はそこで休むとして、そこまでもう一頑張りしよう」


 えっ、…親父どうしたの?何か悪いものでも食ったのか?

 ここまでに隙をついたり足場の悪い場所で前後から同時に仕掛けるなど厳しい事をしては注意していたが、それでも伐剣者としてだがまだ常識の範囲内に止まっていた。

 その事自体でも驚いていたのに、優しい言葉…早い目に休憩というディータとクラウディアの様子をしっかりと見て判断した言葉が出てきてビックリする。


 まじまじと見ていたからか、俺の視線に気付いた親父はこちらの方を向いたかと思うとフイッと視線を外す。

 ……いや、確かに伐剣者について教えるという事を伝え直したいというようなことを言っていたし、俺から見ても納得できる範囲たから参考になるとはいえ、なんと言うかモヤモヤするぞ。

 そう思っていると、またナイフが飛んできたので慌てて避けると、親父やディータ達に続いて登っていった。


◇◆◇◆◇◆


 ゴズァーテン・ベァークの繋がる山々のうち、人の領域に接している第一の山の中腹辺りにまでくると平たくなった場所が見えてくる。

 ここまで来れば、後は採取場所をどこにするか決め移動するだけなので、一応の一段落ということが出来るだろう。


「ひぃぁー、疲れた。何だろう、単に登るだけに比べて気を使いまくったせいかな」

「そうだな。だが、石でよかった。ハーン教諭のようにナイフを投げられていたら私達は今頃再起不能になっていただろうな」


 兜を脱ぎ山下より少し冷えた空気を吸い込みながら、話し合っている二人を横目にしつつ、辺りをざっと見回し休むに適した場所を探す。

 そうして、少し奥まった場所で視界も開けている場所を見つけると皆に声を掛けてそちらに向かおうとすると、ディータとクラウディアは俺の休むという言葉に意識がいって出来た隙をついて放られた虹色石の直撃を肩に当たってたたらを踏んだ。


「あー、くそ。また、避けられなかった」

「ふふ。レーヴェの言葉に意識が向きすぎね。取り敢えずは一先ずおしまいという事で、続きは明日からにしましょうか」


 ここに来るまでで一度も避けたり弾いたり出来なかった二人は悔しそうに唇を噛んでいる。

 まあ、最初はそんなもんだと笑いながら話し掛け、背嚢を置くと休憩中に飲むお茶を入れるために火を起こし準備に入ると、皆も背嚢を置いて車座になるように座ると、ホッと一息ついた。


「ふう。さてと、ディータとクラウディア。親父達の訓練を俺と一緒に受けてみてどうだった」


 肩に手を置き首をぐるりと回しながら筋を伸ばしていた二人に問いかける。


「魔力を感知する以前の問題で、いつ石が飛んでくるのか全然分かんない。予備動作なしで、しかも指だけでなんであんなに早く投げれるのさ」

「同じですね。最初は、石くらいは避けれると思っていたのに、前から後ろからと絶妙の間で来るので、当たってから投げられたと分かるくらいです」


 悔しいというより、何故あんな風に隙をついて投げれるのかという疑問の方が大きいみたいで、仕切りに首を捻りながら答えてくる。

 なるほどな。まずはそこから説明した方がいいかもしれないな。

 そう思って、一応確認のために今回俺の教官である親父達の方に視線を移すとそっと首を横に振られる。


「ディータ君、クラウディアちゃん。私達が石を投げる動作ばかりに注目していたようだけど、それじゃあダメよ。もっと考え方の裾野を広げてみるの。そうすれば、何か見えてくる…かもしれないわ」

「それと、レーヴェ。お前も直ぐに説明しようとするんじゃない。この子達が考える時間をあげるのも成長のために、また必要なんじゃないか」


 そう言われて、説明しようと開けかけていた口を閉じる。

 今回は、ディータとクラウディアの訓練もあるが、俺が伐剣者に対する教え方を学びに来ているのが本筋である。

 そのため、このパーティーでの主導権は親父達にある以上それに従うのが筋なんだが、どうにもやりにくい。


「フフフ。そんな顔しないでレーヴェ。何も考えなしで言ってるんじゃないのよ。今日までに、ギルドであなたとロッホスが出した報告書を見せてもらってから、どうするかをこの人と話し合って決めておいたのよ。ねっ、あなた」

「ああ、そうだな。それに、俺達自身の過去の反省も踏まえて今回の訓練はやっている。訓練の長所や短所を踏まえて練り直してきたから、少しでも参考にしてもらえるとありがたいな」


 お袋はディータとクラウディアに、親父は俺に聞かせるように言葉を考えながら喋り終わると自然と微笑む。

 あっ、この顔は鍛えがいのあるって考えてる時に見せるものだ。


 そう思っていると話の一区切りに、タイミングよく火に掛けたポットからピーと湯気が立ち上る。

 それを見ると、いそいそと人数分のカップを用意しつつ、湯気の上がるポットを傾け珈琲を注いでいった。

 砂糖とかは好みで入れてもらうとして、取り敢えずは全員分入れてしまうか。


「あれ?いつの間に珈琲入れたの?」


 水しか入れてないはずなのに、注ぎ口から珈琲が出てきたことに不思議に思ったディータがカップを受け取りながら聞いてくる。

 直火式の珈琲メーカーは初めてか?


「ディータ。これは火を掛ける前に珈琲粉を入れておいて、内部で蒸気圧によって抽出する物だ。私の母国、グラフベルンでは一般的なものだがジギスムントにはないのか?」

「へぇー、そんなものがあるんだな。うちの国じゃ、お湯を掛ける方が一般的なやり方だけど、こういう場合は便利だな。てか、先生はなんで持ってんの?ガルクブルンナーでも一般的なもんなのこれ?」


 へぇー、グラフベルンでは一般的なのか。

 てことは、クラウディアの母国では珈琲文化が盛んなのかな?

 ガルクブルンナーでは、どちらかと言えば紅茶文化の方が盛んだから、この直火式の奴を手に入れるのには苦労したよ。

 いっそのこと、大体の仕組みを伝えて作ってもらうかという無茶振りをしようかと思ったほどだ。


「フフ。レーヴェはね。何故だが、紅茶より珈琲の方が好きなのよ。それで、この直火式のポットを欲しがったのだけど、当時はそんなもの見たことも聞いたこともないから探すのに凄く苦労したわ」

「ああ、全くだ。まあ、結局は北の方から流れてきた商人が僅かに持っているのを譲ってもらったりしたのだが、そのやり取りも大変だったな。そのせいか、今では私達まで珈琲派になったな」


 当時を思い返したのか、珈琲を飲みながら染々と語っているが、そこまで大騒ぎはしてなかったと思うよ?

 しかも、使ってみれば便利だって言って俺よりも多く使ってなかったっけ。


「ハーン教諭は色々なことを知っているのですね」

「まっ、知ってるだけだな。それも、詳しくないものも多いから自分では作れないし上手く伝えることもできないがな」


 そう苦笑しつつクラウディアに返して、俺も一口珈琲を飲むとこれからどうするか話し合う。

 採取するのは鉱石。それも、贈り物や縁起物として使える宝石の類いを見つけるのだが、ここから向かえて表層に付近のポイントとしては三ヶ所ある。

 全部回ってもいいし、一ヶ所を重点的に採掘するという方法もある。


 さて、どうするか。

 せっかくだし、今回はディータとクラウディアがどう考え、それによってどのような結果になるのかを経験してもらうためにも、二人に選んでもらおうかな。

 そう考えると、ゴズァーテン・ベァークの表層部を拡大した地図を広げて、今現在いる場所と候補となる採掘ポイントを指で指し示しながら二人に聞く。


「採掘場所としてはこの三点あるが、二人はどういった採掘手段を採りたい?」

「うーん。依頼の日程じゃ、ここにいれるのも明日だけでしょ?それなら、一番近い場所を重点的に採掘した方がいいんじゃない?」

「しかし、それで目的のものがでなくては意味がないだろう。それなら、近場で採掘してみてダメそうなら次の場所に行った方がいいのではないか?」


 ディータは一点を重点的に、クラウディアは一つに拘らずに回ってみるというところか。

 ただ、採掘場所に行くまでの時間とか道程、危険な場所を通るかなどを伝えようとすると、義両親から視線を感じてそちらを見ると、またもやそっと首を横に振られる。


 ああ、聞かれてもいないことを直ぐに教えようとするなってところかな。

 実際、親父達はなに食わない顔で珈琲を飲みながら、二人の話し合いが終わるか、何かしらの質問が来るのをどっしりと待っていた。

 その姿からは、二人が選んだ選択がどんなものであれ、それに付随する危険なんかは引き受けるって態度で示している。


 なるほどな。これが、伐剣者に対して教えるってことの姿勢の一つなのか。

 そう思うと、グッと口を引き結び二人の話し合いが終わるのを待つ事にした。

 しかし、親父たちを見ていてなんだが、夏期長期休暇の間に俺もこんな風な態度が身に付くのか不安になってきたな。



 そう自分の中でまとめると、親父達同様にどっしりしているように見えるような態度で座り直し、珈琲を飲みつつ、二人の話し合いが終わるのを待つ。

 ……凄く喋りたいんだが、我慢我慢っと。

 本来は昨日投稿予定でしたが、書きかけのものが消えてしまったことと、残っていた部分から続きを書いていてあまりに不自然に鳴ったことから、一から書き直していたため遅くなってしまい申し訳ありませんでした。


 また、重ねて申し訳ないのですが、少し私事が忙しくなってきたことから、次回投稿の予定が立てづらく、数ヶ月の間は不定期投稿になります。

 

 誠に申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いいたします。

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