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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第二章 教師生活一年目 ―夏期長期休暇
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第二十四話 シュラフス料理とこれからの事


 目の前には、熱く熱せられたミニフライパンが置かれ、魚肉や海老と共に炊かれた米料理から湯気がたっていた。

 実は、ガルクブルンナーは西方諸国第一の米所であり、米料理も多く存在している。

 ただ、米と言っても日本の米とはまったく異なる品種であり、食感や味、料理の仕方も当然に違っているので初めて食べたときは美味しいのだが少し残念でもあった。


 まあ残念でもあったがこの世界にも米料理があったことは嬉しい誤算だった。

 確かに、前世においても米作りは日本独自のものではなく、世界でもまた米作りがされていた上に、国の特色を表す料理が作られていたので不思議でないと言えばそうなのかもしれない。

 例えば、中東・西アジアであるサウジアラビアではカブサ、南アジアのインドではビリヤニ、西欧ではイタリアのリゾットにスペインのパエリアなどに代表されるように世界各地のそれぞれの地域での料理があって知れば知るほど米の奥深さを知る。

 米作りについても、まだ義務教育を受けていた頃に、イタリアが西欧第一、スペインが西欧第二の米所であった事を知った時には、てっきり輸入しているものとばかり思い込んでいた俺はビックリしたものだ。


 その知識を持って、目の前の料理に目を向けると、魚と米を同時に炊くという点ではスペインのパエリアに近いが、香辛料をふんだんに使っているのでビリヤニやカブサにも通じるものがあるか。

 いや、ここで前世と比べること自体がナンセンス。これは、紛れもないガルクブルンナーの料理であってそれ以上でも以下でもない。

 つまり何が言いたいかと言うと、この世界で子供の頃から食べている国民食とも言える料理を頼んだために俺とお袋の料理が他より早く来てしまい、ディータとクラウディアの料理待ちになってしまった。


 炊きあげてから熱々のミニフライパンの上に置かれ熱せられた米から、吸っていたであろう香辛料の香りが鮮烈に鼻孔をくすぐり食欲をこれでもかと刺激してくるのだ。

 ジギスムントでは米料理がなく、少なくとも俺の知る限りはなかったので、戻ってきてからもう幾度も食べているにも関わらず早くスプーンでガッとすくい上げて頬張りたい欲求にかられる。


「ハーン教諭にご母堂も。別に待っていただかなくとも、先に食べていただいて結構ですよ。その、せっかくの料理も冷めてしまいますし」

「クラウディアちゃん、ありがとう。でも大丈夫よ。ハーン家では全員揃ってからの食事が基本だらか気にしないで。ほら、レーヴェ。あなたも、チラチラと料理に目をやらない」


 グッ。いや、そんなにチラチラとは見てないでしょ。

 ちゃんと会話にも参加してるし、視線も下に固定なんてしてないんだから、クラウディアの言葉は社交辞令的ななにかだよ、きっと。


「いや、先生。俺にはよく分かるよ。こんな生活してたら、食うことと寝ることが最高の贅沢なんだよね。だからこそ、熱々の飯が来たならそのままガッツリといきたい気持ちにもなるよね」

「そうだろ!旨い飯が目の前にあったらついつい目がいくのもしょうがないよな」


 そうだよ。しょうがないんだよ。

 軽く湯気だっている料理が目の前にあれば、人間食欲には勝てないもんだよ。

 さっき思ってたのはどうしたかって?

 言葉に出していないから問題なし!!


「フフ、なんだかんだ言ってもまだまだ子供ね。そういうところは、うちの人によく似てるわ。…あら、そういってる間にディータ君とクラウディアちゃんの料理も来たわね。さっ、食べましょうか」


 二人の料理が置かれると、待ってましたとばかり手を合わせた後にスプーンを持ってまずは米だけを一気に頬張る。

 すると、口のなかに香辛料の辛味と一緒に炊かれていた魚介の旨味が広がる。

 そうして、咀嚼を続けると最後には米自体が持つ微かな甘味が出てきて、辛味や旨味と共に混じり合う。


 ああ、やっぱり美味しいな。

 一口目を飲み込み、次は魚と合わせ、その次は魚と海老と合わせてと次々に食べていき、気が付けばミニフライパンの上に置かれた料理は残すところ僅かになっていた。


「ジギスムントとは違った味付けだけど美味しいや。そういや、その米だっけかの料理は美味しいの?指定依頼を受けた後に、俺達と行くような店ではなかったような気がするけど」

「ん?ああ、ガルクブルンナー以外の人だと、ブラッファヌンは結構好き嫌いが別れてさ。まずはこっちの味にある程度慣れてから連れてく予定だったんだよ」

「ああ、なるほど。確かに、私にはこちらの料理は最初の内は濃いと思ってましたが、食べているとだんだん美味しくなってきました。なら次は、そのブラッファヌンに挑戦してみたいですね」

「そっか。それじゃあ、またここに連れてくるよ」


 やっぱり濃く感じるか。

 クラウディアの故郷のグラフベルンは知らないけど、ジギスムントではあまり香辛料の類いは使わない、素材本来の素朴な味だったな。

 帝都やラザフォスで食べた時も、バターや赤ワインなんかは使っていたけど、香辛料の類いは少なかったと記憶している。

 そう考えると、やっぱり料理は国ごとに特色があって面白いな。


◇◆◇◆◇◆


「ふぅ、さてと。お腹も一杯になったことだし、少しお話ししましょうか。そう言えば、ディータ君とクラウディアちゃんがガルクブルンナーに来たときの宴には私とゲオルグは参加できてなかったし、まずは挨拶からね。私は、ヴァネサ・ハーンと言ってこの子の義母で伐剣者をしているわ。ランクはSランクよ。よろしくね二人とも」

「えっと、初めまして。そういや、前の宴の時には来てなかったようですけど何かあったんですか?」

「ええ、うちの人が帰ってくる日付を間違えて依頼を受けてたのよ。しかも、危険領域での依頼でなかなか戻ってこれないやつだったのよ。たくっ、久しぶりに息子が帰ってくるんだから、曜日くらいキチンと押さえておいて欲しいわよね」


 いや、それお袋も忘れてたから反対しなかったんじゃ…。

 喉元まで出なかった言葉を、慌てて飲み込む。

 危なかった。思わず反射的に出かかったが、言っていたらえらいことになったかもしれない。


「それは大変でしたね。しかし、無事に帰ってこれてよかったですね。私も暗き森で王種の魔獣に出くわしましたが、あの時の恐怖は鮮明に覚えているだけに、今は心からそう思えます」

「ああ、そうだったわね。今朝、ギルドでロッホスが依頼を貼っているのを見て詳しく聞いたけど、あんなところに強力な魔獣が出たのは初めてらしいからギルドの方も慌ててたわよ」


 挨拶から始まり、暗き森での出来事などで話が弾み始める横で俺はというと、食後に頼んだ珈琲を飲みながら、満たされたお腹に満足しつつまったりとしていた。


 やっぱり食後は紅茶より珈琲の方が俺は良いな。

 ミルクと砂糖を入れた珈琲で、口の中を洗い直しているようで、食べ終わったという満足感も高まるし、食後の飲み物は大事だな、うん。


「それで、二人は筋肉痛とか言ってたけど、一体どうしたの?失礼かもしれないけど、一応体は鍛えてるのよね?それがどうすれば筋肉痛になるの」

「大したことじゃないです。暗き森からシュラフスまで、ロッホスと先生を追いかけて走ったってだけなんですけど、それが思いの外キツかったってだけです」


 ディータは少し嫌そうな顔になりながら、お袋に事情を話していく。

 それに頷き、詳しく聞きたいところは聞き返しながら二人の話を聞いていた。


 今思い返すと、あの場合は乗せられたと言うよりは、ロッホスさんの挑戦に応じたって形だったよな。

 まあ、とにかくロッホスさんは気骨があるというか反骨というか、相手が誰であろうとも向かってくるタイプの人間が好きだからなぁ。

 あの時のディータとクラウディアは、初めて出会うであろう王種との邂逅に気力も萎え、さらにそれを楽に討伐して幾段も上の実力を見せたにも関わらず、最後には視線をそらさずにぶつかり返したから、あの人喜んじゃってますます二人を気に入ったんだろうな。


 それにロッホスさん。全力でとか言ってたけど一応二人がギリギリ追い付けない(・・・・・・)くらいの速さに抑えていたし、本当にツンデレな人だよ、…いや、デレはなかったな。

 お袋も二人がいう、俺とロッホスさんの背中を追いかけて必死に走ったって言葉から薄々理解したのか、微妙に困った顔になっていた。


「事情は分かったわ。癪なんだけど。ロッホスの言うことに一理あると思ってしまった自分が本当に癪だけども、まだ理解できるわ。だけど、少しやり過ぎな面もあるわね」

「いや、お袋。俺が昔受けた親父とお袋の訓練に比べればまだマシな…」

「いい、レーヴェ。人間、過去に囚われては成長できないのよ。それに、私達は一応あなたに訓練の趣旨は説明したし、あなたも分かってやってたでしょ?その説明し納得するという過程が大事なのよ」


 ああ、魔力感知を理解できるようにするぞと言って、危険領域に連れていくことは説明と納得になるんですか、そうですか。

 確かに、あの時の事が切っ掛けで魔力感知は鍛えられたけど、流石にどうなんでしょうかね。

 いや、もう過ぎたことだし、謝ってももらったことだ。今さらぐちゃぐちゃと言うのも大人げないか。


「はいはい。分かりましたよ。それと、今日お袋に会えたのは本当に運が良かった。何せ、一度親父とお袋の教えを受け直してみたいと思ってたところだったんだ」

「あら?でも、さっき見た感じだと受け直さなくても大丈夫じゃない。……いえ、そうね。ちょうど良いし、この子達も含めて全員で受けて見るのも良いかもしれないわね」


 あれ?俺だけが受けるという話からなんで全員で受けるって話になってんだ?


「いいからいいから。さっき二人の話を聞いて思ったのよ。そうすることが全員にとって一番だ、ってね。ディータ君とクラウディアちゃんはどうかしら?一回、レーヴェと一緒に訓練を受けてみる?」


 そう言って、ディータとクラウディアにも確認すると、受けてみたいとの返事があったために、全員で受けることになった。



 目の前の状況に、どこでミスったのか分からず嬉しそうに笑いながら義母と話すディータとクラウディアを見ながら、残った珈琲を一気に飲み干した。


―次回投稿は9/7 18時頃を予定しています。

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