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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第二章 教師生活一年目 ―夏期長期休暇
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第二十話 曇天の日に


 昨夜、テオとロッホスさんを交えた話し合いが終わると、受付にあるテーブルでグッタリとしている二人を仮宿であるギルド所有の宿舎に送っていった。

 送っていく途中で、二人の様子から心身ともに疲れきっている事、シュラフスに来てから一度もしっかりと休んでいない事などを考慮すると数日、二日ほどを休日に当てた方がいいだろうと考えると、その旨を伝えるがなんの反応も返ってこない。

 いや、…微かに頷いているようだから通じてはいると判断して、何かあれば明日は昼頃までギルドにいると思うのでそこに来てくれと付け加えた。


 一応伝わったとは思うけど、大丈夫だろうか。

 まあ、何かあればギルドに来てくれと伝えてはいるし、せっかくの休みをつくるんだ。この時間を有効活用して、俺も少し自分について見直す時間を作ろうかな。

 そう思うと、街灯に照らされる家路を足早に進んでいった。


◇◆◇◆◇◆


 翌朝、昨日から引きずるような俺の気持ちに応えるような曇天が広がっているのを見上げると、一つため息をつき防水性もある外套を纏ってギルドへと向かう。


 途中、曇天だからといって商人や職人の仕事がなくなるわけではなく、いつもと変わらず賑わうシュラフスの大通りを通り抜けると、同じく朝の活気に溢れるギルドへと足を踏み入れる。


「Dランク依頼のフェルス鳥の群れ討伐に参加してくれる人はいますか?!あと三人ほどはいけます」

「こっちはCランク依頼だ。朝露の雫石を採取しに行くのですが、人手が欲しい。報酬は採取量によって増減するのでランクが合えば幾らでも歓迎するぞ」


 久しぶりに早朝、それもまだうすぼんやりとした時間からギルドに来たが、依頼のために仲間を募る伐剣者達の大声を聞く。

 ああして依頼ごとに仲間を募り、ウマが合えば継続してコンビなりパーティーなりを組むのだが、一度きりの場合も多いしソロを貫く者も当然にいる。

 とにかく、駆け出しや中堅では色々と試行錯誤をしながら自分なりのやり方を見つけていく事になる。


 懐かしいな。俺も昔は、ああいう感じで仲間を募ったり入ったりしていたな。

 もっとも、それもDランク迄の事で、それ以後は仲間というか、親父とお袋との完全な家族で依頼をこなしていたから、少し感覚がズレているという自覚はある。

 それもこれも、危険領域で生き残ったという実績から、俺を利用したいという考えを持った者が出てきたため、ギルド側で手を打ったという理由なんだけどね。


 その時の事を思い出すと少し苦い気持ちになるので、意識を元のギルドの受付の喧騒に戻す。

 そうして、周りの声を聞きながら依頼掲示板から離れた依頼受注用とは別の受付向かおうとすると、後ろから伐剣者達の戸惑いを含んだ会話が耳に届く。


「おいおい。一体どうなってんだ。暗き森へ双猿王の遺骸を回収しに行くので人手を募集するだと?」

「双猿王ってあの双猿王だよな。王種の魔獣が暗き森に出るなんて普通じゃねぇぞ。そんなところに、回収とはいえ行くのも躊躇っちまうな」

「だけど、遺骸の回収に行くだけだし、もう危険なことはないんじゃないか?」

「馬鹿野郎。例え、既に討伐されていたとしても、本当に危険がなくなったなんて言えるって訳じゃないだろ。ただでさえ普通じゃ考えられないんだ。もしかしたら、まだ王種の魔獣が出るかもしれないんだぞ」

「でもさ。依頼人はあの<灰走り>だぞ。それなら、万が一があっても危険はないんじゃないか?」


 チラリとそちらの方を向くと、依頼掲示板、それもど真ん中に張り出された依頼書を前に受けようかと幾人かの伐剣者達が悩んでいた。

 まあ、あの人が一緒なら大丈夫だと思うよ。万が一があった場合はそれなりの働きを求められるくらいだし。

 ただ俺としては、安全第一で実力が足りないと思うんならやめた方が無難ではあるとは思うけどな。


 伐剣者としては見も蓋もない結論を出しながら、視線を前に向けると受付に行きテオに会いたいと伝える。

 そうすると、受付嬢はああという顔になって、聞いていますのでそのまま上がって下さいと言ってくる。

 昨晩から今日の間に色々とやることがあったであろうに、相変わらずキッチリしているな。


 そう感心して事務長室に向かおうとするが、念のためディータとクラウディアが来ているか確認してからにするかと思い直し、踵を返すとテーブル席の方へと足を向ける。

 しかし、テーブルには駆け出しや中堅の伐剣者達が依頼について話し合っているだけで二人はいなかった。


 昨日は大変だったし、まだ疲れが残って休んでいるんだろうな。

 とにかく、いないという事が分かれば、俺は俺でさっさと用事を済ませるか。

 そう思い階段を登り事務長室へと向かった。


「おはよう。約束通りに来たぞ」

「ああ、おはよう。しかし、依頼でもないのに早くに来たものだ。流石にお前でも気になるのか?」

「まあ、一応…な」


 気になると言えば気になる。

 いや、正直に言えば無茶苦茶気になってました。


 昨日、テオやロッホスさんと話してみると、自分が結構やらかしていると分かったし、報告内容によってこれからどうするか判断すると言われれば、普通の人間であれば気が気でないだろう。

 そのせいで昨日もぐっすりと…寝れたけどさ、やっぱりギルドに来るときの心と足取りは重かったよ。


「さて、結論から言うと、レーヴェ。お前はお前の好きなようにやれ。お前の尻拭いはすべて私がしよう」

「…えっ」

「そもそも、己が心に従い行動する伐剣者にあれやこれやギルドから縛りをかければ、いざというときに伐剣者としてのマトモ(・・・)な行動が期待できないしな。それなら、やらかしてくれる前提でこちらが色々と準備した方が良いと考えたわけだ。それに、そんな外観があれば外に対する聞こえが良いだろうしな」


 いや、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど、…それでテオは大丈夫なのか?

 もっというなら、外は大丈夫でも内であるガルクブルンナーのギルド本部から睨まれたりしないか?

 俺が、ジギスムントに行って教師になるってときも、ギルド本部からの説得(・・)要請を、結果として反故にしたようなもんなんだし、下手をしてクビとかになったりしたら流石に寝覚めが悪いぞ。


「外の声。まあ、主に伐剣者達の声だが、それがあると意外となんとかなるものだ。後は、私が上手く外に情報を発信して立ち回れば、そう簡単にはクビを切られる事もないだろうさ。だから、そんなに心配そうな目でこっちを見るな」

「いやさ。お前がそれで良いなら、俺としてはありがたいんだが…。ただ、嘘でも流れればそれに乗りたがる奴等は当然にいるぞ。分かっているだろうけど、十分に気をつけてくれよ」

「ほう?レーヴェにしては中々の意見だな。…分かった。気を付けておこう」


 いや、本当に頼むよ。

 嘘を流して煽るなんて事は、今世だけでなく前世でいくらでも見てきたんだ。しかも、その嘘の前に耳に心地良い美辞麗句を並べて嘘をも美化するなんて事をやる奴はやる。

 まあ、俺よりそういう手練手管があることに詳しいだろうし、これ以上は余計なお世話かもな。


「前置きが長くなったな。それでなんだが、…好きにやれと言った手前、こういう物を見せるのは心苦しいが、昨日ロッホスの報告を要約したものだ。まずはこれを読んで、不明な点や異議のある点について、今ここで言ってくれ」


 そう言ってピラリと一枚の紙を渡された。

 この紙には他の伐剣者、ロッホスさんから見た俺の行動なんかが記されているのか。

 ああ、今ならジギスムントで生徒達に渡した通信簿で嫌な予感がすると言った気持ちがよく分かる。

 

 それに、どうせ厳しい事しか書いてないだろうと内心嫌々だったが、受け取らないと話が進まない。

 大事なので二回言うが、本当に嫌々ながら受け取って書かれた内容を確認していくと、やれ俺が教えすぎるだの甘すぎるだの厳しいものでが並んでいた。


 心の準備が出来ていたので、最初の内はそれほどでもなかったものの中盤辺りまで読んでいくと、厳しい意見ばかりにへこんできた。

 せめて、せめて一行。いや、一文字でもいいので何か肯定的なものはないかと最後まで読み進めていくと、最後の最後にレーヴェの人柄からか生徒達との関係性は良好であるとあった。


 疑問系みたいな書き方だけど、俺のやり方が誉められているのではないけど、とにかく肯定的なものには違いない。

 我ながら調子が良いとは思うが、この一文で気持ちは明らかに上向きになったのだが、それを悟られることの無いように表面上は落ち着いて、内心では小躍りしながら読み終える。


 そうして、他の伐剣者から、それも高位の伐剣者から見たら俺の教え方はこんな風に見えるのかと考えさせられた。

 ただ、あまり考えてばかりいては時間が過ぎていくだけだし、これからどうやるかの叩き台になる程度の意見は出さなければならない。

 


 さて、どうしたものか。

 そう悩んでいると、事務長室の扉がノックされる音が聞こえた。


―次回投稿は8/26 18時頃を予定しています。

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