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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第二章 教師生活一年目 ―夏期長期休暇
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第十八話 空想の産物?


「暗き森に魔種と王種の魔獣が出たとか。まず、その報告から聞かせてくれ」


 急に呼び出されたにしてはピシッとした格好でやって来たテオは、俺とロッホスさんを見ると事務長室で話を聞くとして三人で二階に上がっていった。

 ディータとクラウディアは、まだ体力が回復しきってないようなので、受付で飲み物を出しておいてほしいとお願いして置いてきた。

 そうして、部屋に入って定位置である机に座ってからこちらの方を向いたテオは、情報の開示を求める。


「一応、お前が来るまで暗き森に行ってからの事をまとめたモノを用意しているけど先に見るか?」

「相変わらず手回しがいいな。そうだな……いや、やはり直に報告を聞いてから、それを補うモノとして後で見させてもらおう。とりあえず、レーヴェ。お前からの報告を頼む」

「了解」


 報告を聞いてからってことは、俺は紙を見ないで思い出しながら発言したほうがいいんだろうな。

 そうして、暗き森に入ってからの事をもう一度思い出しながら報告を開始する。


 着いたのが夕方だったので伐剣者が拠点としている場所で休むと決めたこと。

 森に入ってから違和感を持ち、辺りに注意を払っていたこと。

 翌朝、採取に向かうために森の奥に向かおうとすると違和感が強まり、鐘茸を見つけた時にルーガルの魔力の残滓を見つけたこと。

 ついでに、ナバラを含めて俺の魔力感知に引っ掛からなかったこと。


 箇条書きにするとこのような感じの事を、大体の記憶を思い出しながらテオに語っていく。

 俺の話を聞きながら時折ロッホスさんの方に視線を向けていることから、一つ一つ確認をとっているのだろうか。


「それで終わりか?話だけ聞くとレーヴェは森に入った段階で違和感を持っていたと…、ロッホス。君の意見は?」

「そうですな。正直言って、俺はレーヴェと違ってそこまで探知能力に長けてないので何とも言えませんな。強いて言うなら、気付かなかった。それだけです」

「まあ、レーヴェは昔から周りの視線や環境の変化に敏感だったからな。恐らくだが、レーヴェだからこそ気付いた微妙な変化しかなかったのだろう」


 まあ、伊達に日本人をやってなかったからな。

 小学校、ヘタをすれば幼少の頃から他人の気持ちを推し量ることは学んでいたから、相手の視線一つ取っても敏感にもなるさ。

 それに、進学なり就職なりをすると、その都度環境が変わっていくから周囲の状況に慣れる為に、雰囲気をよく観察する事も自然としていたような気がする。

 いや本当に、昔の経験というか記憶も意外なところで役に立つものだな。


「他には報告することはないのか?違和感を強めるきっかけとか、普段では起こらないことが起こったとか。何でもいいので、思い出せるだけ出してみてくれ」

「その前に、さっき言ってたまとめたものを渡しとくわ。でだ、他に何かあったかって言われても、多分何も……あっ。そう言えば暗き森でファウストって旅の薬師にあったな。クラウディアの知り合いだったから、恐らく北の方の国から来たんじゃないのかな」


 そうだった。確か、ファウストさんが静かでいい森だって言った事が決定的だったんだ。

 色々ありすぎて記憶から欠落していた情報を引っ張り上げながら報告すると、テオは渡された手元の紙を見て欠けていた情報に素早く筆を走らせてメモする。

 これが終わったら、人物照会なんかをして確認を取るんだろうな。


「とりあえず依頼全体を通しての報告は、ここまでにしよう。では次に、なぜあそこに魔種と王種の魔獣が出たのか、もう出る恐れはないのか、これについて伐剣者二人の意見を聞きたい」

「そうですな。可能性だけで言えば、危険領域での闘争に敗れてこちらの方に逃げてきた。あるいは、何らかの事情で餌を求めてこちらに来たといったところでしょう。ですので、もしかしたらまた出るかもしれない、その危険はあると考えたほうが無難でしょう」

「俺もロッホスさんに同じだな」


 俺とロッホスさんの話を聞くと、テオは少し考える素振りを見せるが、やがて納得できるかのように頷いた。


 可能性で言えば、本当にロッホスさんの発言したことが至極当然の内容だろう。

 だだ、漫画やゲームとかである陰謀論的なストーリーだと、もっと突拍子のない内容を追加することになるんだけどな。

 前世で見たりプレイした物語の内容を思い出していると、ついつい懐かしくなり頬が緩んでしまった。


「何を考えているんだ?」


 それを目敏く見つけたテオから質問されてしまい、少し慌てて手を振りながら返事する。

 

「いや、何でもない」

「本当か?挙動不審の時のお前は、何か突拍子の無いことを考えていると経験上断言できるんだが」

「なんだよ突拍子の無いことって。しかも、挙動不審とは失礼な」


 そう言って笑うも、なおも俺を直視するテオの視線に負け、ほんの少し。ほんの少しだけ、話すことにする。

  

「いやな、例えば。例えばだけど、魔獣を操って俺を襲わせたとかがあるかなぁ~、なんて考えてました」

「もう少し詳しく話せ。特にお前を襲わせる理由の部分についてな」


 笑い話になるように、出来るだけ明るい声でと気を付けながら話したのに、何故か食いつかれてしまった。

 さらに、詳しく話せと注文されてしまうが、漫画やゲームにそんなシーンがよくあるんだよなんて言っても通用しないだろうな。

 はぁ、またそれらしい理由を考えながら話を作るか。


「えーと。本来いない魔獣が出たってんなら、その場所に人為的に連れてくるっていうのも考えられるかなって単純に思ったんだ。で、操った状態でどれくらい魔獣が使えるかを試すために俺を襲わせたなんてのも考えられるかなって思ったんだよ」

「……ロッホス。どう思う?」

「そうですな。魔獣を操るって訳じゃないですが、小馬竜ピュティックとは心を通わすっていう精神に作用する魔術を使っていますし、もしかしたらってのはあるでしょう。ただ、操るなんて強力な魔術は見たことも聞いたこともない。加えて、精神に作用する魔術の開発なんかは国やギルドで厳しく監視してるなか、それ以外で出来るもんなんですかね?」


 そうなんだよな。

 一応、精神に作用する魔術もあるにはあるが、そんな危険なものを国やギルドが放っておくはずがない。

 そのため、触媒やら理論やらは秘中の秘として徹底的に管理して、一部の者しか閲覧することができない。

 実際、SSランクとして最高位の伐剣者である俺や、ここシュラフスのギルド事務長のテオの申請であっても閲覧の許可は下りないだろう。

 ただ、もしそんな危険なものの存在が認知されたならば、あるという情報程度は下りてくるので、知らないという事にはならない。


 だからこそ、そんな話はあり得ないこととして笑い話になると思って軽く話したのだが、テオは真剣に考え込んでしまった。


「いや、テオ。その、…自分で言っていてなんだけど、これって普通はそんなん出来る訳ねぇよって笑い飛ばす話じゃないのか?」

「普通はそうだな。ただ、お前が言うと話は変わってくる。忘れたのか?以前、お前が身体能力強化と向上の重ね掛けをしたいと話したとき、周りはそんな事は出来ないと笑い飛ばしていただろう。それ以外にもいくつも出来やしないと笑われていた事をしたレオンハルトという伐剣者が言う言葉には慎重に対応する、そう私は決めているのだよ」


 いや、俺が言ったから説得力があるみたいな考え方は良くないぞ。

 何度でも言うが、俺の知識なんてのは知れたものだし、重ね掛けとか今の話も漫画やゲーム由来のものなんだから何の信憑性もないんだぞ。

 それを現実に当てはめるのは危険だし、ロッホスさんからも注意してもらおうと見るも、両手を開かれて首を横に振られた。


 いや、そんなやれやれってポーズを取ってないでなにか言ってやってくださいよ。

 …まさかとは思うが、そのポーズは俺に対して向けられたものだとか、そんなんじゃないですよね?


「この話はギルド本部に送って判断を仰ごう。あり得ないという思いが強いが、レーヴェが言ったということで、国とも話し合いの場を設けてくれるかも知れない」

「ちょっと待て。そんな大事にするほどの事か。単なる俺の戯言みたいなもんなんだぞ」


 いかん。このままでは、この発言の責任者にされてしまう。

 話が大きくなってから、これは空想上のお話なんですなんて言って通じるはずもない。

 そう思って、止めるため何とか上手い言い方はないかと考えていると、横からポンと方を叩かれた。


「諦めろレーヴェ。僅かでも疑問が出たら解消するための手段をとるなんてのは当たり前の事だろ?それに、どんなにあり得ないことでもそれを一個一個潰していけば真実は自ずと見えてくるもんだ」

「……格好よく言ってますけど、絶対面白がってるでしょ?」

「分かるか?」

「ええ。そんなに楽しそうに笑いながら言われたら嫌でも分かりますよ」


 俺の言葉におっとなんてわざとらしく口元を隠しても、もう遅いですよ。

 でも、面白おかしく話してはいるが言っている内容は至極もっともなだけにそれに対して反論することも出来なかった。

 


 そうこうしている内に真剣な顔をしながら書類をまとめだしたテオ。それを諦めの境地で見つめる俺。

 何これ。思い出し笑いをした俺が悪いの?


―次回投稿は8/16 18時頃を予定しています。

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