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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第二章 教師生活一年目 ―夏期長期休暇
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第九話 依頼が終われば


 工鉱望を出ると、昼が近くなってきたのか太陽が中天近くまで来ているのがわかる。

 パルタザルに届けるものに弁当が含まれていることを考えると少し急いだ方がいいだろう。

 そう二人に伝え、足早に来た道を逆走していく。


「しっかし、先生の知り合いって濃い人が多いんだな」

「そうだな。しかし、ハーン教諭自体がかなり濃い人物であると考えると、すべては繋がるのではないか?」


 前を歩く二人の会話が俺の耳に入る。

 二人とも、濃いとオブラートに包んでいるが、それは俺が変人と言っているのと同義か?


 いやいや、俺自体はそんな濃くないと思うぞ、うん。

 そうは思ったが、二人があった人物を時系列順に並べてみると、まずはロッホスさんにベティーナときて、次にミューランさん、カティにテオとくる。

 そして、今日会ったのがミラ姉とクリスタだな。


 …まずい。まともなのがカティとミラ姉しかいない。

 このままだとクラウディアの言うとおり、類は友を呼ぶ理論で、俺自体が二人の言うような変人みたいじゃないか。


 パルタザル。俺が変人かどうかはお前に掛かっているから、頼むからまともな対応をしてくれよ!!


「ハーン教諭。…ハーン教諭、目的地に着きましたよ」


 考え事をしながら歩いていたせいか、目的地に到着した事に気付いていなかった。

 そのため、クラウディアの声で我に返ったのだが、二人の視線が痛い。

 いかん。自分で自分の首を絞めてどうする。


「そ、そうか。それじゃあ、二人とも中に入ろうか」


 何気ないフリを装いながら、店の中に入っていくとカランという音とケースに納められたいくつかの装飾具が煌めいて出迎えてくれる。

 久しぶりに来たが、これだけの煌めきを前にすると装飾関係に興味がない俺でも感嘆する気持ちが出てくるな。

 それは、二人も同じようでホーと息を吐いていた。


「いらっしゃい。って、レーヴェじゃないか、久しぶりだな。今日はどうした?」

「久しぶりだな、パルタザル。今日はクリスタからの依頼で来たんだ」


 ドアベルの音に気付いたのか奥からパルタザルが出てくると、俺の顔を見てすぐさま微笑みを浮かべて挨拶してくる。

 そうして、久しぶりに会った旧友が荷物の配達依頼をしているという返事に驚くと、「まさかお前」とクリスタとまったく同じ反応が返ってきた。

 いや、お前といいクリスタといい、俺の評価はどうなってるんだよ。

 それに、生徒達の俺への評価はお前の双肩に掛かっているんだから、もっとまともな対応をしてくれよ。


「違うわ!!今日はこの二人の指定依頼の付き添いで来たんだよ。ちなみに、二人はジギスムントで教えてる俺の生徒達だ」


 そう言って、二人を前に出す。

 さっきは、クリスタのノリに巻き込まれて、ついつい二人を紹介するのを忘れたので、今回は自己紹介くらいはしとかないとな。


「初めまして。俺は、ディータって言います」

「私はクラウディアと言います」

「初めまして。俺はパルタザル・ゲッツェというんだ。まあ、クリスタに会ってるなら聞いてるかも知れないけど、よろしく」


 一通りの挨拶を済ませると、二人はクリスタから預かっていた依頼品を渡して確認書にサインをもらう。

 よし、これで二つ目の荷物配達依頼も完了だな。

 

「まさか弁当付きで荷物が届くとは思わなかった。これで、外に食べに行く手間が省けたよ。ありがとう」


 よほど恋人からの弁当が嬉しいのか、受け取ってからずっと手に持ったまま、ディータとクラウディアに礼を言っている。

 さてさて、ちょっとは雑談でもしようかと思ったが、パルタザルも忙しいだろうし、何より微妙にソワソワした態度から早く弁当を食べたいのだろう。


 そう考えると、旧友との語らいはまた別の機会にして、今日のところは帰るとするか。


「さてと、これで依頼も終わったことだし、俺達も昼食にしようか。せっかくだ。二人には、俺の行きつけの店でうまい飯でもご馳走しよう」

「さっすが先生。俺もう腹がへって死にそうだし、早く行こう」


 よしよし、自分に素直で大変よろしい。

 パルタザルも、元気のいいディータに微笑ましいものを見たのか、笑顔が深くなっていく。


「悪いなレーヴェ。また近い内に」

「ああ、お前も頑張れよ」


 そう短く挨拶を済ませると、俺達は店を後にし昼の賑わいを見せる大通りとは逆の方向に歩いていった。


◇◆◇◆◇◆


 大通りに面した方が飲食店が多いが、この世界でも一つ路地を抜けた先に地元の人間くらいしか知らない店があることはよくある。

 そこで二人に昼飯をご馳走すると、少しの休憩をしてギルドへと戻ってきた。


 ギルドは、朝の喧騒が嘘だったかの様に静けさを漂わせており、幾人かの職員と伐剣者が居るのみだった。

 これからの事を考え、併設されている酒場から人数分の飲み物を貰うと、二人を促して端に置かれているテーブルに向かうと椅子に座る。


「あのさ、先生。えっと、ギルドに戻ってきたのって、別の依頼を受けるためじゃないの?」

「いや、今日のところはもう依頼を受ける予定はないよ」


 食事が終わりギルドに戻ると言ったことで、午後から新しい依頼を受けると思っていたようで、二人は俺の答えに戸惑っていた。


「最初から指定依頼については一週間ほどと余裕を見ていたからな。まあ、ゆっくり一つ一つ身に付けるながらやっていくつもりだ。そうだな…最初は二人に配達依頼を受けての感想を聞いてみようか」


 初めは配達依頼なんてみないなことを言っていたが、どうだったかな?

 

「……最初にハーン教諭が、調合や鍛冶の手伝いではなく配達依頼を受けたことが不思議で、どうしてだろうと考えましたが、やってみれば普段の自分が考えていないものを多く発見できて驚いています」

「俺は、あんまり興味がなかったんだけど、やってみると面白いと感じたかな。あとは、結構歩いたからシュラフスの街の地理についてちょっとは分かったかな」


 とりあえず、感触としては悪くないということでいいのかな。

 あと、さりげなくディータが言ったが、配達依頼を通してシュラフスの街の事を知ってほしいという、隠れた思惑も感じ取れているようで良かった。


「それじゃあ、さっそく今日の総括をしようじゃないか」


 そう言うと、二人に今日の依頼を受けて感じたこと、疑問に思ったこと、改善した方がいいこと等、幅広く問いかけていく。

 いきなりの俺の問いかけに、二人とも最初の内はまごついていたが、徐々に今日受けた依頼を思い返すように考え込んでいった。


「そうですね。私は、ハーン教諭が言った言葉を大事にしろですか、特に出し惜しみしないという部分に成る程と納得できるものがありました」

「俺は、知識は色んなものに役立つときがあるってことに気付けたことかな。ほら、クラウディアに言った歩き方とかのやつね」


 しばらくすると、二人は自分の関心があったことを口に出すが、やはりというかそれぞれ別々のものであった。

 出た意見を基に考えると、クラウディアは言葉について、ディータは知識のスライドについて強く意識していたのだろうな。


「なるほどな。じゃあ、何故その事が一番最初に出てきたのか。逆に何故相手の関心があったことが自分の一番ではないのか、それを二人で話し合ってみてくれ」


 自分の中で印象に残っていることは、放っておいても考えることができるが、そうでないものについては外からの呼び掛けが必要なときがある。

 特に同じことをしているのに異なる意見が出てきた時は、もう一方の意見に対してアプローチをする事が呼び掛けの方法として有効だろう。

 それに、相手に理解させるためには、自分の考えを論理的に整理し、筋道だって説明する必要があるため、自分の出した意見についても理解を深めることもできる。

 だからこそ、依頼を終えて記憶が新しいうちに、俺から生徒達へと一方からの伝え方ではなく、俺と生徒又は生徒同士の双方向の議論をしようと考えたのだ。


「うーん。言葉の出し惜しみについては、どうなんだろ。そういや、そういう事もあったなって感じだから、何故って聞かれても答えられないなぁ」

「しかし、言葉は伐剣者にとって、依頼や相手の事情に寄り添っていく上で大事なものではないのか?そのためには、ハーン教諭の言うように普段から意識しておかなければならないのではないか?」


 ふむ。クラウディアはそこが出発点になってるんだな。

 確かに、相手に寄り添うという、その視点は大事なことだな。


「確かに大事だけど、伐剣者にとっての一番は依頼を無事に達成する事なんだと思うんだよ。いくら相手に寄り添っても、依頼を達成できなけりゃ、その不利益は依頼人が負うんだよね。だからこそ、俺達は色んな知識を身につけて、それを場面に応じて使いこなせた方がいいんじゃない」

 

 ディータは、依頼を達成することの重要性が根底にあるのか。

 これも大事な視点で一理あるな。


 それぞれの意見の出発点が見えたことで、お互いがさらに自分の考えを述べ、それに反論するということを繰り返す。

 そして、相手の意見の中に納得できるものがあれば、それについては自分の考えを改め修正しながら意見を続ける。

 単に相手の意見を否定するのではなく認め取り入れることで、新しく発見した意見や疑問点、こうすればよかったとの改善点にまで議論の広がりを見せていた。


 そうして、意見や考えが出尽くしたのか、議論がループしかけたところを見計らい止めに入る。


「そこまで。どうやら、大体の意見が出尽くしたようなので、ここまでにしよう。二人ともお疲れ様」


 二人に声をかけると、それぞれ口をつぐみ目の前に置かれたコップに口をつけ一息いれる。

 

「あー、こんなに頭を使ったのって久しぶりだよ。なんか、頭が熱を持ったように熱いし、大丈夫かな俺」

「私も頭が痛いですね。受けた依頼はごく日常的なものなのに、それをここまで考えたのは初めてです」


 そうなんだよな。

 日常的なものほど、以外と複数の事情が絡み合っていて単純にはいかないことも多いんだよね。

 これが、魔獣を討伐してこいとかなら、もう少し考える事は減るんだから不思議なものだ。


「取りあえず、今日のところはこんなもんだな。これから一週間は、街中での指定依頼が終わる度に今日のような依頼全体を通してのまとめをするからそのつもりでな。それが終われば、町の外に出て、探索術の訓練になるような指定依頼を受けよう」



 クラウディアが伐剣者登録したことで出来たいい機会だ。

 せっかくなので、目一杯有効活用するつもりで、明日は最初に見た商売の手伝いとあと一つくらいは受けようかなと、これからの予定を組み立てていくのだった。


―次回投稿は7/21 18時頃を予定しています。

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