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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第一章 教師生活一年目 ―前期
37/81

間奏 記者は今日も行く


「おーい、コロナ。この前の原稿はどうなってんだ?」


 ウチが机に向かって記事を書いていると、編集長がエライ大きな声で呼び掛けてくる。

 この前の原稿?一瞬なんの事やろかと頭を捻って、視線を落とすとピンときた。

 目下のところ必死に書き上げている、ジギスムントの歴史を訪ねてっちゅうコラムのことやろね。

 編集長も、面倒くさがらずにコラムはどうなってるかって言ってくれればいいのに。

 まあ、やり手なんは認めるで。この新聞を縦にぶち抜き柱のように記事を書くコラムってやり方とか、新しい事を考え付く当たりそれは認めるけど、やりづらぁて敵わんわ。


「今任されているコラムの事ですよね。もうすぐ仕上がりますんで、もぉちょい待ってください」

「そうか。それじゃあ、早い目に原稿を書き上げてくれよ。明日には、ゲラ刷りしたいからな」


 明日にはゲラ刷りって早すぎませんか、編集長。

 まあ、泣き言を言っていてもしゃーないし、気合いを入れて書き上げますか。


「まあ、お前さん達も大変な思いをしたみたいだけど、頑張ってくれよ。それに、ほら。なんとかって変わり者の教師と知り合えたんだろ?それを考えたら、記者としていい縁が出来たって事でトントンじゃないか」

「ああ、レオンハルトさんの事ですね。この前、カミラさんとドミニクさんを見舞った後に会いに行きましたけど、ホンマに面白い人でしたわ」


 そう言いながら、レオンハルトさんにエッダと一緒にお礼を言いに行った日の事を思い出す。


◇◆◇◆◇◆


 竜人の広場で別れた後、ウチらはその足で帝都新聞社に戻ると同僚のみんなが涙を流して抱きついてくる。

 どうやら、先に返されていたカミラさんとドミニクさんが治癒院に運び込まれたことで、ギルドから何かあったと報告があり、ウチらの身を心配していたところに無事に帰ってきたので、感情が爆発したらしい。


 いや、そこまで心配してくれるのは素直に嬉しいんやけど、ええ加減に離して欲しいですけど…

 ほら、エッダもだんだんときつそうな顔になってるやん。


「コロナ、エッダ!よく無事に戻ったな。お前らが依頼した伐剣者が治癒院に運ばれたって聞いたときは生きた心地がしなかったが。いや、とにかく今日はゆっくり休んでまた明日詳しい話を聞かせてくれ」

「あっ、でもウチらは特に疲れてなんか…」


 結局、編集長のいいからとの一言で帰らされる事になるのだが、帝都新聞社から出てエッダと二人笑うてしまった。


「しょうがないですね。今日のところは大人しく帰ることにしましょうか、コロナさん」

「せやね。ほんならまた明日」


 そう言って別れ、自宅に帰ると自分が思っていたよりも疲れていたのか、倒れるようにベッドに入ると泥のように眠りについた。



 翌日、ぐっすりと眠りたお陰が目も頭も冴え渡り、昨日入れなかったお風呂に入ってから、帝都新聞社に向かった。

 そうして、エッダを待ってから編集長に今までの経緯を説明することにした。


 あの日、新聞社を出てからウチらは伐剣者に守られながらドゥミバーズ遺跡に順調に進んでいたのだが、遺跡まで後少しというところで牛魔の群れに襲われた事を伝えると編集長の顔色が変わる。

 そして、カミラさんとドミニクさんが足止めしてくれたお陰で自分達は逃げれたのが、二匹だけは自分達を追ってきたというところで、悲哀に満ちた顔になった。


 いやいや、なんちゅう顔をしてるんですか。ウチらは生きてますって編集長。

 内心でため息を付きながら、続きを説明し終えると編集長の百面相も終わり、腕を組んで首を捻る。


「ほぉー、なかなか大変な目に遭ったんだな。しかし、ちゃんとドゥミバーズ遺跡の取材が出来ている当たり、運が良かったのか悪かったのか」

「いや、あそこでレオンハルトさん達に会わんかったら、ホンマに一貫の終わりでしたし、運は良かったと思いますよ」


 そう。必死に逃げた先でレオンハルトさん達に出会えたことは幸運以外の何者でもなかった。

 あの時見えた焚き火の明かりは、今でも鮮明に思い出せる。


「しかし、レオンハルトねぇ。学院の教師でそんな人いたっけかな?」

「ええと、確か新しく学院の教師になったって言うとりましたよ。あとガルクブルンナーって国から来たらしいですし、編集長が知らへんのも無理ないですわ」


 ガルクブルンナー?そりゃ、どこにある国だと聞き返されるが、知ってたらもぉちょい詳しく話しますって。


 編集長は考えてるだけで動こうとしないので、ため息を吐いて書棚にある地図を取りに行く。

 後ろから、「ありがとね、コロナちゃん」と声がかかるが、こんな時だけちゃん付けって、ホンマに調子のいい人なんやから。


 そうして、持ってきた地図を開けると、「ガ…ガガ」と指を這わせながら探す。最初は周辺国を見ていたが、見つからなかったのでさらに範囲を広げると、ジギスムントから見て南にガルクブルンナー王国があった。


「ほぉー、大分離れてるんだな。お隣のキルジオン王国を越えて南に下り、ボアルズ連邦のさらに南の南か。しかし、そんな国から教師になりにくるとは、また変わった人だな」

「なんや、燃え尽き状態になったらしくて、国を離れてここジギスムントで教師をしよかと思った言うとりましたよ。何か気になることがあるんでしたら、お礼しに行きますんで詳しく聞いときますか?」


 任せたという編集長の言葉を聞き、それじゃあと見舞いの品とお礼の品を買いに行くことにしますか。

 見舞いの品は花束と果物にするとして、お礼の品は何がええんやろね。


 そう頭を捻りながら、エッダを誘って街に買い物に出掛けていく。



 翌日、一日丸々の休みを貰ってから、先ずは治癒院に出向くことにした。


 治癒院は、帝都郊外の開けた場所に立てられており、病気や負傷の治療を行うために、広大な土地に何棟かの建物が建ち並んでいる。

 そのため、総合案内がある中央の建物に入り、カミラさんとドミニクさんがどこに入院しているかを確認する事から始める。

 通院する人や入院している者を見舞う人が多く行き交っている中を縫うように進み中央棟に入り案内所の人に来院目的と用件を告げる。


 すると、西棟の四階に入院している事を教えてくるたので、舗装され左右に花や樹木が植えられている道を、西棟に向かって進んでいく。


 教えられた西棟の病室に入ると、薬の匂いが鼻につき、少し心音が高くなったような気がする。

 幾分早まった鼓動の音を意識しながら、魔動力昇降機の中に入ると柵を閉じて、四のボタンを押す。


 ガゴンという音とともにわずかの浮遊感を感じながら昇っていくと四階につき、目的の治癒室の方に歩いていく。

 だだ、その足取りは自分が思っている以上に重く、なかなか前に進まない。それでも、進み続け病室についたので、そっと中の様子を伺う。

 すると、カミラさんとドミニクさんはベッドの上に座りながら談笑していたのが見えた。


 ああ、良かった。見た感じ元気そうやし、これなら伐剣者を辞めなければならないという事態は避けられるだろう。

 エッダも同じ考えだったのか、安心した顔になっている。


「カミラさん、ドミニクさん。お見舞いに来ましたよ」


 さっきまでの気持ちが嘘のように明るい声を出しながら治癒室に入っていった。


 ――――――――あれから、しばらくの間二人が入院している治癒室で容態なんかを聞いたりして時間を過ごした。

 なんでも、傷は深いが伐剣者を辞めるほどのものではなく、薬を飲んでいれば自ずと傷が塞がっていくらしい。 

 それよりも、自分達と別れてからのことが気になったらしく、あれからの経緯を聞きたがったので、かい摘まんで説明する。


 話を聞き終えると、二人にすまなかったと言われるが、むしろこっちが感謝こそすれ、謝られることなんてなんもない。

 そう伝えて、これ以上はお邪魔になるとして、また見舞いに来ることを約束して治癒室から出て行くことにした。

 

「お二人とも、元気になりそうで良かったですね」

「ホンマにね。これで、少しは胸の支えが取れたわ。さて、ほんならもう一人の恩人とこに行こか」


 そう言って、ウチらは学院へ向かうことにする。


◇◆◇◆◇◆


 ジギスムント帝立学院に着くと、先ずは事務課の方に行き、レオンハルトという先生にお会いしたいと、身分と理由を添えて伝える。

 すると、教職員室に案内してくれるらしいので、事務員の後ろからついていく。


「レオンハルトさんの好みをこっちで勝手に決めて、お礼の品として持ってきましたが喜ばれるでしょうか?」

「さあ?それは分からへんけど、嫌な顔はしないんちゃう?それに、一応無難なモンを選んどるし大丈夫ちゃうかな」


 教職員室に向かう途中の廊下を歩きながら二人して小声で確認しあっていると、目的地に着いたようで大きな扉が開かれどうぞと中に通される。

 そして、案内してくれた事務員さんが、レオンハルト先生と呼び掛けると一人の男性が顔を上げた。

 すると、こちらに気付いたのか、立ち上がりやや小走りに向かってくる。

 

「コロナさんとエッダさんじゃないですか。今日はどうしたんですか?」

「遅くなりましたが、お礼に伺わせてもらいました」

 

 軽く目的を告げてから横目でチラリとエッダを見ると、意図を汲んでくれたのか、持ってきた品を渡すために一歩前に出た。


「レオンハルトさん。ドゥミバーズ遺跡に向かう途中に助けていただきありがとうございました。また、同行を許していただき、目的を遂げることもできました。これは、ささやかな物ですが、その時のお礼にと持ってきたものです。どうか、お受け取りください」


 そう言って、お礼の品を両手に持ち前に出す。

 しかし、レオンハルトさんはすぐには受け取らず、エッダの差し出した物を見るだけで、困ったように頬を掻いていた。

 だだ、少しすると「どうも、ありがとうございます」と言って納めてくれたのでホッとする。


「もしかして、今日はこの為だけにいらしたんですか?」

「最優先の目的はそうです。後は、記者としてすこーしお話を聞きたいなと思ってんですわ」


 そう笑って言うと、なにやら考えている。


「それじゃあ、座り仕事ばかりで疲れてるので、散歩がてら聞くというのでいいですか?」

 

 もともと伐剣者やからやっぱり座り仕事は辛いんかなと思いつつ、ええですよと了解する。


 しかし、休みをもらっているのに、記者の仕事をするなんて変な感じやね。

 こういうのを、職業病っちゅうんやろかな。


 そう思いながら、レオンハルトに続いて教職員室を出て行く。



 さて、何か面白い話は聞けるかな?


―次回投稿は6/24 18時頃を予定しています。


◇◆◇◆◇◆

 一応、序章のみになりますが、何度か見直してこれなら大丈夫だろうというものになりました。

 書いている段階だと、これでも意味は通じるだろう、読めるだろうと思っていたのですが、書いたものを批判的に見てみるとまだまだ粗がありましたので、その辺を踏まえて書き足し等をしました。

 加筆修正をした話としては【序章一話、三話】、その他の修正をしたものとして【序章二話、四話】となっております。

 最後に、改めて読み直す手間がかかるという面倒を、読者の皆様に課しましたことお詫び申し上げます。

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