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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第一章 教師生活一年目 ―前期
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第二十三話 ルディとレオンハルト


 授業が終わり、ルディを呼び止めると不安そうな顔で立ち尽くす。


「あー、そんな顔をしないでくれ。単なる確認と提案をするだけで、その…他意はないからさ」


 何故かギョッとして慌てて言葉を付け足すと、ホッとした顔になる。授業の後とはいえ、こんなあからさまに顔に出るってことは過去に何か言われたんだろうか?

 それはそれで気になるが、今は関係もないし時間も限られていることだし、さっさと用件に入ろうか。


 気持ちを切り替えルディに話しかけようとするが、ディータ達が手を止めてこちらの様子を窺っているのが目についた。


「ん?用があるのはルディだけだから、みんなは帰ってもいいぞ」

「いや、何を話すか気になっちゃって。ここにいてもいいですか?」


 アニータの言葉に、ディータとクラウディアも頷く。

 いや、俺は別にいいけど、周りから見られながらってのはやりにくくはないのかな。


「ルディはどうだ?」

「えっと、できれば…」

「俺とルディだけの方がいいのか?」


 そう問うとコクンと頷いたので、アニータ達には後で話すと約束し、外で待ってもらうことにする。アニータが少し渋ったものの、ディータが取りなして食堂の方で待っていることで話がついた。

 


「よし、それじゃあ早速始めるか。ただ、改めて確認しておきたいことがあるから、修練場にある木剣を持って俺に打ち込んできてくれ。もちろん全力でな」


 不思議そうな顔をするが、木剣を持って対峙すると思いっきり打ち込んでくる。その時に、上段からの振り下ろし以外にも水平や下段からも打ち込んでくるように言って、適した型はないかと探っていくことも忘れない。


 それを何度か繰り返していくと、思った通り打ち込みが弱い上に最後の一押しが出来ていなかった。元がこれだと、魔獣と戦うには魔術を使って強化された状態でもキツいんじゃないか。

 今度は身体能力強化の魔術を使って打ち込んでもらうも、予想通りさっきと同じような感触だった。


 とすると、剣や斧、鎚などの武器は選択から外れるな。

 後は槍と弓も一応見ておくかと思い、ルディに木槍と弓を使ってもらったが、弓についてはかろうじで使えるのではないかという評価に落ち着く。


 さて、そうすると弓について教えていくことにするか…それとも、もう一つの可能性に賭けてみるか。

 


「確認することは、これくらいかな。それじゃあ、後はいくつか聞きたいことがあるから、座って話そうか」


 少し息を切らしているルディを促しながら、荷物を置いている方に向かって歩くと、地面にあぐらをかくようにして座る。

 そうして、対面に座るのを待ってから続きを話し始める。


「俺から話をする前に、最後に聞いておきたいことがある。ルディは、どんな伐剣者になりたいんだ。そうだな…例えば魔獣との戦闘を専門にしたいとか、危険領域での探索を専門にしたいとか、出来るだけ具体的に話してくれないかな」

「僕は…危険領域…の依頼を受けて活動する…魔獣討伐も探索もできる伐剣者になりたいです。あと…父さんのように、仲間を守れるように前に出て…戦えるような伐剣者になりたい…です」


 以前も、父親のように強くなりたいと言っていたし、よほど憧れているのだろう。

 しかし、前に出て戦う方を選んだという事は、弓を勧めるという目は消えたな。

 それに武器にはこだわっていないようなので、もう一つの選択肢を勧めるのだが、果たしてどう切り出したものか。


 これからのルディにとって重要な選択になるのだから、しっかりと考えてもらいたい。

 遠回しな言い方は、俺の考えがうまく伝わらない可能性もあるし、かといってストレート過ぎる言い方は傷付けるだけになるかもしれない。


 あぁ、こういう時にはどう言えばいいんだ。年齢的には中学生くらいなんだから、俺がそのくらいの時に学校の先生からどんな風に話されていたか思い出せ。


 ……ヤバい、全く思い出せないぞ。俺が、ごく一般的な生徒だったせいか、特に将来の方向付けについて話した記憶がない。あって、高校受験をどうするか話したくらいだ。



「ルディ。前回、そして今日の授業を見ていると、君は同年代に比べて筋力が足りてない。そのため、押し切るという武器は君に合っていないし、これでは魔獣と戦うことは無理だという結論に至ったんだ」


 色々と考えた結果、ストレートに、そして出来るだけ優しく話しかければ大丈夫だろうと思って話を始める。しかし、下手な考え休むに似たりという言葉通り、あまり意味がなかったようで、下を向いてしまった。


「あっ、いや。それでなんだけども…」

「もういいです!」


 続きを言おうとするも、今までにない大きな声に驚き、言葉は喉の奥に引っ掛かって出てこない。


「分かってるんです。初級者コースで剣を使っていた時も、周りから同じ事を言われました。それに、遠回しですけど、伐剣者に向いてないということも言われました。でも、それでも僕は…」


 …つっかえずに大きな声で話すことができるじゃないか、ってそうじゃない。

 驚きすぎて、思わずアホなことを考えていると、目の前で立ち上がり修練場から出ようとしているルディを慌てて止める。


「いや、ちょっと待て。俺がいらない前置きをしてしまったのが悪かった。本題はまだ言っていないから、頼むから待ってくれ」

「どうせ先生も同じ事を言うつもりでしょう!」


 だぁー、違うんだって。頼むから最後まで聞いてくれ。


「よく聞いてくれよ。続きを話すと、ある程度適正のある弓を進めようかと思ったが、君は前に出て戦う方を選んだ。そこで、俺が使っている刀を訓練してみる気はないか。そう言いたかったんだよ」


 そう一息に言い切ると、ピタリと動きを止めてこちらの方を見る。涙目になっているルディを見て、これで少しは落ち着いてくれと心から祈る。


「えっ?でも、さっきは僕には魔獣と戦うことは無理だって…」

「ああ。俺は、筋力が足りないから、押し切るような武器を使って戦うことは無理だと言ったんだよ」


 元に戻って本当に良かった。

 しかし、過去にそんなことを言われていたとは。それで、さっきはあんなに不安そうな顔をしていたのか。

 となると、何が地雷になるか分からないし、ここからは慎重に言葉を選んで話した方がいいな。


「これから言うことは、最後まで聞いてくれよ。…君は、まだ体が出来ていない。今後、成長する可能性もあるから、剣やそれ以外の武器を使っても、訓練次第である程度までは使えるだろう。でも、率直に言って、目指している高み…SSランクの伐剣者になることは難しいと思う」


 そこまで言うと、一息いれてルディの様子を窺う。

 なにか言いたそうだが、俺の言葉をキチンと聞いているようで、口を真一文字に結んでいた。


「そこで、だ。俺の使っている刀は、剣とは違って引き切る事を念頭に置いたもので、押し切るような武器とは性質が違う。これを使えば、筋力が足りないというマイナス…他人に劣る点を補うことができ、努力次第ではSSランクにも届く…のではないかと思う」

「あの、ちょっと…いいですか?」


 ここまで言ったところで、ルディが小さく手を上げて、遮ってくる。何か分かりづらいことをいったか?


「でも、刀を使ってる先生はSSランクじゃないですよね。…あっ、優秀なのはそうなんでしょうけど、その…」


 そうか…そこからか。ここに来て、俺がランクについては曖昧にしていたことが仇となった。

 一応、白金の伐剣者タグは持ってきているから、これを見せれば一発なんだろうけど…大丈夫かな?キチンと説明すれば大丈夫だよな。うん、きっと大丈夫だ。


「ルディ。とりあえず、これを見てくれ」


 胸元から、SSランク伐剣者の証、白金のタグを引っ張りだして見せる。それが何か分かると、呆然と見上げたまま固まった。しばらくすると、再起動したのかギクシャクした動きを見せると、頭を下げる。


「先生は、SSランクだったんですね。その、知らなかったとはいえ、ごめんなさい。でも、どうしてその事を話してくれなかったんですか?」

「いや、その…な。驚かずに聞いてほしいんだが、俺は二つ名を名乗ってなくてな。ここジギスムントでは、そういう伐剣者は受け入れられにくいと思ってたんだ」


 ギルドマスターのアロウズさんに、Aランク以上が名乗れる二つ名には国民も伐剣者も特別な思い入れがあると聞いていたし、理由も特に考え付かなかったから、そう言うしかない。


「二つ名を名乗っていないって、どうしてなんです…いえ、きっと先生なら何か理由があるんですよね」


 不味い。何故だか知らないが、ルディからの信頼度が異常に高いぞ。このまま誤解を解いておかなかったら、後々不味いことになるかもしれない。

 でも、理由がないなんて言ってもいいのか?ただ、下手な事を言って後々厄介なことになるのは、すでに経験したから避けたいし…なにより生徒に対して、変に言い訳することは躊躇われる。


「いや、その…俺が二つ名を名乗らないのには、特に理由はないんだよ」


 結局、素直に白状する方に天秤が傾いたのだが、そう聞いても、ルディは特に驚かなかった。それどころか、「大丈夫です。僕は分かってますから」とまで言ってくる。


 何が分かってるのだろうか…やめておこう。深く詮索してもろくなことにはならないのは目に見えている。それより、話の続きといこうか。


「とにかく、そういう訳で刀を使ってみる気はないか?無責任なようだが、刀を使えば強くなれるという保証は出来ない。ただ、見た感じでは、他の武器よりかはまだ可能性があるとは思っているんだ。どうだろう、今すぐに返事をくれとは言わないから、少し考えてみてくれないか?」


 こればっかりは、絶対に大丈夫だと保証する事は出来ない。何らかの方向性を示して、その選択を生徒に委ねている現状に忸怩たるものを感じ歯噛みする。

 ただ、後はとにかく返事を待つだけなので、この話はここまでにしようとすると、ルディが口を開く。


「先生…」

「どうしたんだ?」

「あの……先生の提案なんですけど、先生と違って僕なんかが刀を使っても、本当に大丈夫なんでしょうか」


 俺と違う?どういう意味だ?


「ちょっといいか。俺と違うっていうのは、どういう意味なんだ?」

「えっと…先生は僕と違って、元から伐剣者としての才能があったんですよね。だから、刀っていう今までにない武器を使っても、SSランクに上がれたんじゃないんですか」


 才能…ね。確かに、前世っていうアドバンテージがあるにはあったが、それを個人の素質としての才能とは言えないだろう。


 何せ、前世の記憶はどれもこれも、所詮は知っているだけのものばかりで、体系だって説明できるものは、数えるほどしかなかった。

 そんな上部だけの知識は、実際にはなんの役にも立たず、むしろこの世界で生きていく上での足枷でしかない。


 魔術については、漫画やゲームで知っているだけで、現実には見たことも使ったこともない代物だったので、知識とすら言えないのではないだろうか。

 この名称のボタンを押せば火魔法が使えて、この名称のボタンを押せば回復魔法が使えるなんて親切なものはない世界で、触媒にどんな風に魔力を通せば魔術が発動するかを試行錯誤しながら、何度も繰り返して覚えていく作業は当然に要求された。

 

 それに、今世の子供の頃には義両親からハーン式訓練法での体作りや武器の扱い方、魔獣との戦い方と、前世であれば虐待で通報されかねないような特訓を受けさせられて、様々な経験を積んできている。

 そこまでして、ようやく俺にどんな素質があるかを知ることができ、見つかった素質を更に伸ばしていった結果としてSSランクに上がれたにすぎない。

 そうして見ると、ルディの言うような伐剣者としての才能は元からは無かったと言えるだろう。



 つまり才能なんてものは、飽くなき反復作業を繰り返すという努力の先でしか見つける事ができない、漠然としたものなんだよな。

 それでも、どうしても才能の有無をいうならば、心構えの点で当時の俺はルディに大きく劣っていると断言できる。




 そこまで考えて、当時の事を思い出すと思わず苦笑いが出てしまった。


―次回投稿は6/1 18時頃を予定しています。

2017.6.30 修正しました。


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