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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第一章 教師生活一年目 ―前期
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第二十二話 担任・就任・普通の授業


 交流会の翌日、教職員室にある自分の机に座って、書類仕事に精を出していると、レオ先生から話しかけられる。



「レーヴェ先生。昨夜お話しした担任の件、フリッツ先生に話を通しに行きますので、ご一緒願いますか」

「あっ、はい。ちょっとだけ待ってもらえますか」


 キリのいいところまで書類を書き上げると、レオ先生と連れだって行く。


「フリッツ先生。少し、お話があるのですが、お時間を頂いてもよろしいですか」


 そう声をかけると、授業で使うのか、結構複雑な数式を書いている書類から顔を上げて、こちらの方を見る。


「レオ先生にレーヴェ先生ですか。如何しました?」

「担任変更をお願いしたいのです。現在、レーヴェ先生が教えている生徒達は、まだ私やヨーゼフ先生が担任となっているので、レーヴェ先生に変更手続きを取って貰えないでしょうか」


 そうお願いするも、フリッツ先生は不思議そうな顔をするだけで、直ぐには返事をしなかった。


「昨夜、私とヨーゼフ先生は、レーヴェ先生と食事をする機会を設けました。そこで、生徒の様子や教育方針を聞くと、レーヴェ先生が担任になった方が良いのではないかとの結論に至ったのです」


 沈黙が、続きを促していると判断したのだろう、レオ先生がなぜ担任変更をしようと思ったのか理由を語ると、顎に手を当て考える姿勢になる。


「それが、生徒達のためになると、お二人が判断なさったのならば、時期的にやや異例ではありますが、前例もあることですし構いませんよ」


 そう言うと、机の引き出しから数枚の書類を出すとサインをして、こことここにレーヴェ先生のサインをしてくださいと、目の前に置かれる。


 以前、内容を確認せずにサインしたという失敗があったな。今回は、俺だけじゃなく生徒にも関わる事なので、知らなかったとは言えないから、時間をかけて内容を読む事にするか。


 書類に目を通すと、これらの書類が担任登録書と、担任としての宣誓書と書かれている。

 登録書は、俺が担任になるという事を明示するものであるから、特に問題となることは書かれていない。そこで、宣誓書の方に目を通すと、表面には内容通りにする事を認めるとあり、裏面には担任としてするべきことが列挙されていた。


 習熟度が低い技能について、授業時間外にそれを補っていこうということかな。内容も、伐剣者としてオーソドックスなものが多く、戦闘技術の補修やら、授業に関係のないところでは、交渉術や探索術とかも含まれているようだな。

 

「どこか、不明な点でもありましたか?」 

「いえ、生徒にも関わることですし、内容をキチンと確認していたところです」


 書類に目を通す時間が長かったためか、フリッツ先生から声がかかる。内容に意識を向けていたことから、特に考えもなくサラッと出た俺の言葉に、なにやらウンウンと頷いている。


「ああ、サインの前に一つ。裏面に列挙されているのは、例示的なものですので、レーヴェ先生が必要と判断したものについては、適宜教えるようにしてくださいね」


 そうなると、担任の裁量は結構広いものになりそうだな。つまり、それだけ担任として責任があるということか。

 まあ、受け持つのは四人だけで、それほど負担になることも無さそうだし、問題はなさそうだな。


 そう納得し、サインをしてフリッツ先生に渡す。


「確かに受理しました。後はこちらの方で手続きを済ませておきますので、次回の授業の時に生徒達にも伝えておいてくださいね」


 フリッツ先生はそう言うと、書類を持って教職員室を出ていった。

 学院からはの通知でなく、俺から直接言うことになるのか。その時、生徒達は初めて知るわけだが、どんな反応をするか。

 いかん、少し不安になってきたぞ。


「これで手続きも終わりましたね。これからは、担任の仕事も増えますが、頑張って下さい」


 レオ先生はそう言うと教職員室から出ていった。それを見届け、これ以上不安に思っても仕方ないと、俺も書類仕事に戻るべく席に向かう。


 …そういや、担任っていくらか手当てって付くのかな。


◇◆◇◆◇◆


 担任になった事で、何か仕事が増えるのかと、気負っていたところもあったが、特に仕事が増えるわけでもなく、次の授業を迎えることになった。


 

 そして、集まった生徒達を前にすると、多少の不安を感じるが、これまで築いた生徒達との関係性を信じて、さっさと伝えてしまおう。…大丈夫かな。

 

「あー、授業を始める前に、いくつか伝えることがある」


 そう言うと、目に見えて生徒達は身構える。

 いやいや、そう身構えられると言いづらくなるじゃないか。


「そう身構えないでくれ。そうだな、まずは本日付で俺が君達の担任になる事が決まった。まあ、それでどうこう変わる訳じゃないと思うが、よろしく頼む」


 出来るだけ明るい声で伝えると、生徒達はあからさまにホッとして胸を撫で下ろす。


「なんだ。てっきり今日もハーン式訓練法だっけ。それをするのかと思ったよ」

「本当によかった。あっ、担任になったんですよね。よろしくお願いします」


 どんだけトラウマになってんだよ。

 この前の、走行訓練なんて、ハーン式訓練法でいや、レベル1みたいなもんなんだぞ。くそぉ、さっきまで持っていた不安は吹っ飛んだけど、別の不安が出てきちまったよ。

 やっぱり、生徒達にはまだ早かったのだろうか。いやいや、昨夜ヨーゼフ先生とレオ先生に相談して、迷わないと決めただろ。


「とにかく、そう言うわけだから、俺の方で未熟と感じた技能については補修やらを行うことになると思うから、よろしく頼むよ。後は、君達からも、ここを教えてほしいとかあったら、遠慮なく言ってくれ」

「ふむ。担任になることは分かりましたが、他には何があるのです?」

「ああ、そうだった。以前、君達に重ね掛け、正式には瞬時強化というのだが。それを教えると言ったが、それは後期まで待ってほしい。なぜなら、今の状況を見ていると、前期は基礎体力や精神鍛練に重点を置いた方がいいと判断したからだ」


 そう言うと生徒達から不満が上がるが、昨夜ヨーゼフ先生に話した事を、さらに自問自答しながら、より具体化した内容を語る。

 最初の内は不満顔だった生徒達も、話が進むにしたがって考えるようになり、最後には納得してくれた…と思う。


「うーん、何となくですけど、先生の言うことは分かる気がします。残念ですけど、後期までの楽しみに取っておきます」


 アニータの言葉に皆は頷き、今出来ることから積み重ねていこうという気になってくれたようだな。

 さてと、それじゃあ伝えることは全部伝えたと思うし、早速授業に移ることにした。



「よし。今回は体を温める事から始めるか。各自体をほぐしてから、外周を軽く走るぞ」


 そう言うと、入念にストレッチしてから、外周をゆっくり十周ほど走ると体は温まり、万全の状態になる。


 それから、俺が気になった、武器を使う時の癖を直すことを中心に戦闘技術を教えていくと、あっという間に午前の授業が終了した。


「よし。それじゃあ、午前の授業はこの辺で終わるので、昼休憩にするか。午後は第三修練場に集まってくれ。解散」


 午後からは、午前中に注意した癖が直っているか、模擬戦を中心に確認するかな。それと、体力が万全の状態でのルディが、剣をどの程度使えるか、見る必要もあるな。


 そう、予定を組み立てながら、一旦教職員室に戻って行った。


◇◆◇◆◇◆


 午後になると、第三修練場に生徒達が集まってきたので、それを待って授業内容を伝える。

 午前中に決めていた通り、模擬戦を中心に生徒達の技能を高めていくと話すと、生徒達が今日は普通の授業だと呟いている。


 なんだろう。何気ない呟きなのに、精神へのダメージが結構あるぞ。


 意外な形で受けたダメージを引きずりながら、今回は前回と違う点が多いので、その違いを意識しながら相手の動きを見るようにと説明する。

 また、素の自分がどれだけ動けるかを見るため、魔術の使用は禁止とした。



「それじゃあ、さっそくやってみようか」


 そう言って模擬戦を開始するが、前回とはやはり動きが違うな。力強いだけでなく、相手をよく見て動けている。

 

 それに俺から見るとだが、ルディに関しても、物足りないものはあるが、自分に合う武器を見つけれれば化ける可能性は十分にある。ただ、それこそが難しいので、今回の模擬戦に何かヒントがないかと、じっくりと観察することにするか。


 そういえば、ルディが万全の状態で武器を振るう姿を見るのは、これが初めてだな。

 さてどうなるかと見ていると、クラウディアに向かって剣を振るう姿は、前回とは違い格段に良いものになっているように思える。ただ、押し切ることができず、逆に盾に押し返されたり、いなされて動きを制限されているところは変わらないか。


 まだ成長しきっていないため、クラウディアと比べ体格面で劣るのはしょうがないとしても、同年代と比較しても筋力は低い方なのだろうか。それで、押し切る事がうまくいっていないとすれば、それ以外…例えば引いて切る武器がいいのかも知れない。



 そうこうしている内に、三周ほど模擬戦を繰り返したので、そろそろ休憩がてら生徒達の感想も聞いてみるかと、一旦生徒達を集めることにする。

 

「さて、前回は疲労困憊の状態で模擬戦をしてもらったが、今回と比較して気になったことを、自分や相手に関わらずに発表してもらえないかな」


 そう水を向けると、ポツポツとだが自分や相手の良かった点、悪かった点を発表し出す。大体出尽くしたが、誰もルディに関しては良かった点を言うだけに止めていた。


 こう、できていないものにできていないと言うのは、言う方にとっても精神的にくるものがあるからな。特に、解決策のないような問題については、その度合いも大きくなるから、悪かった点を言わないことについてはしょうがない。


 だだ、気付いていながらこのままというのは、教師としてはあまりに不誠実にすぎるだろう。かと言って、すぐさま解決策の出るものではないので、授業後にルディと話し合って、一緒に考えていくことにするか。



 それから、少し休憩を挟んで模擬戦を再開する。今度は、コンビを組んでの連携など、一対一以外での戦い方を教えていく。


 これについては、流石にディータとアニータに一日の長があるためか、ルディ・クラウディアの急造コンビでは相手にならない。

 そこで、コンビの授業については、一組ごとに俺が相手になることにし、もう一方の組はそれを見て自分ならどう動くかを考えるように変更する。


 変更してから更にコンビを変えて模擬戦をしていると、時間が早く過ぎていき授業終了の時間が近づいてきた。



「それじゃあ、そろそろいい時間だし、これで授業を終わるか。それと、少し話したいこともあるから、ルディは少し残ってくれないか」




 そう言うと、帰る準備をしようとしていたルディは、不安そうな顔をして立ち尽くしてしまった。



―次回投稿は、5/30 18時頃を予定しています。

2017.6.30 加筆修正しました。

(ディータ達に、重ね掛けを教える事を後期に回すと伝える描写を入れました)

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