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変わり者の伐剣者  ~教師生活は思った以上に大変だ!!~  作者: 源五郎
第一章 教師生活一年目 ―前期
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第二十話 教員同士の意見交換1 ―交流会は酒と共に

 教員同士の意見交換は、二話によって構成されています。そのため、明日の同じ時間に、教員同士の意見交換2を投稿します。


 ハーン式訓練を終え、教職員室に戻ると、今日の日報を書き上げる作業に入る。


 どんな授業内容だったか、その時の生徒の様子はどうだったかなど、事細かに分けられた項目ごとに書く作業は、以外と骨の折れるものだ。


 伐剣者時代との違いに四苦八苦しながら仕上げると、椅子の背もたれに体を預けるように伸びをする。

 慣れない書類作成に、ゴキゴキとなる肩甲骨。その音を聞き、ゲンナリとした気分になる。


 さてと、とにかく日報も書き終わったことだし、今日わかったことを踏まえて、これからの授業方針に修正を加えるか。


 腕を組んで目を閉じると、今日の授業での生徒達の様子を思い出す。



 少し意外だったが、生徒達は自分の限界を知らずに、現時点での自分の能力に自信を持っているようだった。

 確かに、伐剣者としてDランクまで上がっていることから、戦闘技術に関しては、ランクに見合う、或いはそれ以上の能力はあるのだろう。それは、騎士であったクラウディアも同様で、今の能力でもある程度通用してしまっている事が、原因ではないだろうか。


 しかし、Aランク以上から認められる危険領域での活動は、王種や竜種との戦いに限られない。そこには、危険領域の過酷な環境との戦いという面もあるため、単に戦闘技術を高めればいいという訳にはいかないのだ。

 …云うならば、相手のいない自分自身との戦いでもあるため、諦めない心の強さが問われることになる。それなのに、限界を知らず、かつ、伸ばすことをしないのでは、いずれは頭打ちしてしまうだろう。


 ディータ達については、戦闘技術だけを見ると十分な能力があるため、前期では走行訓練など、精神面を鍛える訓練に重点に置いた方が良い気がする。

 しかし、そうなると、得意武器の選別からする必要のあるルディには、過度の負担が掛かってしまい、逆効果になるのではないだろうか。



 唸りながら色々と今後の方針を考えていると、ふとヨーゼフ先生やレオ先生はどんな授業をしているのか気になった。それに、俺が担当する前は、どちらかの授業を受けていたはずだし、一度話を聞いてみるものアリだな。


 よし、善は急げというし、早速聞いてみるかな。


 二人がいるはずの席に視線を向け、いることを確認すると、席を立って向かっていく。


「すみません。ちょっと、お聞きしたいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?」

「ん?すまんがちょっと待ってくれ。…よし、それで何が聞きたいんじゃ?」


 俺と同じく日報を書いていたのか、ヨーゼフ先生は区切りのいいところまで書き上げると、顔を上げて問いかけてくる。


「今日の授業で、生徒達の事で気になることがありまして。それで、お二人の授業内容と私の授業に移る前の生徒達の事を聞きたいのですが」

「ふむ、我々の授業内容ですか。…そうですね。前期も半ば近くまできましたし、どのような方向性で授業を行っているか、話し合ういい機会なのかもしれません」

「…そうじゃな。今後の生徒達の教育に必要なことが見えてくるかも知れんし、伐剣者から見た事を含めて話し合ってみる価値はあるか」


 そう言って同意してもらったことで、早速話し合おうとしたが、ヨーゼフ先生から待ったがかかる。


「まあ待て。せっかくだから、夕食でも取りながらじっくりと話そうではないか。それに、多少酒が入った方が言いにくいことも話せるだろうてな」

「…団長。それは、あなたが単に酒盛りしたいだけではないのですか?」


 ヨーゼフ先生が、素晴らしい提案をするも、レオ先生は呆れた感じで応じている。

 そんな、レオ先生…俺もヨーゼフ先生の案に賛成です。せっかく、帝都で旨い料理と酒を堪能できるチャンスなんです。何でもしますから、どうか受けて下さい。お願いします!!


「レオよ。最近では、妻や息子の嫁に飲み過ぎるなと言われて、家でろくに飲めないのだし、たまには良いではないか。それに考えてもみよ。教官が、精神を休め、体調を万全に整えていた方が、生徒達はより良い授業を受けることが出来るではないか。したがって、これは単なる息抜きではない。教職にある者として、必要な体調管理の一環なのじゃ」


 流石は、元近衛騎士団の長。含蓄のある素晴らしい御言葉です。そうですよね。最高の授業をするためにも必要な事ですよね。


 俺が、内心で拍手喝采していると、レオ先生はため息をつきながら、しょうがない人ですねと答えている。

 それを受け、気を良くしたヨーゼフ先生は続きは後でと言うと、残りの日報を書き上げる作業に戻っていく。


 俺は、いち早く帰る支度を済ませ、ヨーゼフ先生達の作業が終わるのをウキウキしながら待つ事にした。


 暫くして、二人から声をかけられると、逸る気持ちを抑え、夜の街へと足取り軽く学院を後にするのだった。


◇◆◇◆◇◆


 どこに行くか相談しながら、学院から出てきたが、レオンハルトは、まだ帝都に不慣れでどんな酒場があるかを知らないと言う。

 それならばと、儂のお薦めの酒場に案内することに決め、他愛ない話をしながら、夕日に照らされた道をのんびりと歩いていく。



 こやつとは、一度じっくりと腹を割って話してみたかったから、丁度よかったわい。学院長の話では、ガルクブルンナーでSSランクの伐剣者をしていたらしいが…見た目だけではそうとは分からんな。


 魔獣の皮革を使った変わった防具を着て、見たことも無い武器を腰に差している姿は、よくてBランクの伐剣者と見えることだろう。

 しかし、醸し出す雰囲気は、儂もよく知るSSランクの伐剣者と同じものではある。しかも、学院長をして『優秀な』伐剣者と言わしめた以上、SSランク伐剣者の中でも何かを持っているのだろうな。

 

 それに、伐剣者学部における、始めての伐剣者出身の教官じゃ。伐剣者が、学院という場で、どのような考えを持って、授業を行っているか非常に興味がある。


 今日は、そこら辺を含めて、こやつの人間性が分かるよい機会じゃな。



 そんな事を思いながら、当たり障りのない雑談を続けていると、儂のお薦めの店、弓削の三日月(ゆげのみかづき)に着いた。


 開かれた扉からは、旨そうな匂いと賑やかな声が聞こえており、儂の腹をこれでもかと刺激してくる。

 席は空いておるかと覗いてみると、置かれている幾つかの丸テーブルに、伐剣者や職人らしいガタイの良い男衆が席に座って、焼いた肉やソーセージを肴に酒を飲んでいた。


 ふむ、幾らか席は埋まっているが、儂らが座る分には席は空いていそうじゃな。よしよし、それでは早速入るとするか。

 

「あの、何と言いますか、すごく庶民的な酒場ですね。ヨーゼフ先生のお薦めと言いますから、てっきり貴族らしい店に行くのかと思ってました」


 店に入ろうと一歩足を進めると、レオンハルトの戸惑ったような声に振り返る。

 儂のお薦めの店というわりには、開けた扉から見える店の中の様子は、まさに荒れくれ者の酒場といった感じじゃからな。まあ、何も言わずに連れてくれば、そう思うのも無理はあるまい。


「確かに、儂は貴族じゃ。しかし、貴族だといって、常にそのような場所で食事をするわけではない。それでは、国民の生活がわからず、貴族のみの常識で政をしてしまう。それを防ぐためにも、本音の出やすい庶民向けの酒場に足しげく通っているのじゃよ」


 そう言うと、レオンハルトは感心しながら頷いている。


 我ながら上手い返しが出来た。ククク、見てみよ。儂を見る目に、幾分の尊敬が混じっておるではないか。


 そう、内心で満足気に頷いていると、呆れたようなレオの声が割って入る。


「レーヴェ先生。騙されてはいけませんよ。本当のところは、安く飲めるお酒と美味しい料理が沢山ある事から、この店が気に入ってるだけです」


 レオよ、なぜそこで儂の威厳を下げることを言う。ここは、元部下兼現同僚として、もうちょっと持ち上げてくれても、いいんじゃないのか。


「えっと、美味しいお酒と料理があるのはいいのですけど、安く済むってどういう事です?」

「いや…な。儂、小遣いが少ないんじゃよ」


 そう言うと、目を見開いてビックリしている。まあ、仮にも元侯爵が小遣い制で、使える金が少ないと聞いたらそうなるかのぉ。

 

「おお、レオンハルトよ。儂の事を憐れな老人と思うなら、酒を奢ってくれれば…」

「小遣いが少ないのは、貴方の責任ですよ。近衛騎士団長の重責から解放された事で浮かれてしまい、教員の給与のほとんどを毎日の飲み歩きに費やしていたのでしょう。それで、奥様に雷を落とされた結果、小遣い制になったのですから、自業自得もいいところです」


 じゃから、儂の威厳を下げることを言うなというに。見よ、レオンハルトのあの眼を。さっきまでの尊敬の眼差しが消えてしまったではないか。

 しかし、何を言っても、儂をよく知るレオがいると、直ぐに反論されてしまうし、何よりこれ以上ここにいても腹は膨れん。


 そう思い、一つ大きな咳払いをしてから店に入ると、馴染みの娘が出迎えてくれる。


「あっ。ヨーゼフさん、いらっしゃい!!いつもの席が空いてますので、そこへどうぞ!!」

「そうかそうか!よし、まずは冷えたビールを三人分持ってきてくれ。それと、酒の肴になるものを幾つか見繕って持ってきてくれ。…レオとレオンハルトもそれでよいかの?」


 いつもの癖で注文してしまったが、レオンハルト達はビールでよかったかと思い確認すると、是と返ってきたので、そのまま注文し、レオンハルト達を促して席に着く。

 そうすると、周りを見渡したレオンハルトが、居心地の良さそうな店ですねと、笑顔で言ってきおる。


 ふむ、やはり伐剣者として生活していただけあって、同じような職種のものがいる店の方が良いのじゃろうかのぉ。まあ、この店は、酒と料理も美味いので期待しておけよ。



「はい。ビール三人前、お待ちどぉ!!それと、焼き菓子(プレッツェル)白アスパラ(シュパーゲル)。後は、太ソーセージ(ボックヴルスト)白ソーセージ(ヴァイスヴルスト)の盛り合わせです。それじゃ、また注文するする際には、声をかけてくださいね」

「おお、待ちかねたぞ。それと、後で必ず追加注文するから、その時は頼む。…よし、酒と料理がきた事だし乾杯といくかの」


 運ばれてきた、大きな杯に並々と注がれた黄金色の妙薬と生きる活力源に、居ても立ってもいられず、杯を持ちながら声をかける。


「ちと遅くなったが、レオンハルトの赴任とこれから良き関係が築ける事を願って…乾杯!!」


 儂が杯を掲げると、二人も同様に掲げ乾杯と返してくるので、それを確認して杯に口をつける。

 そうすると、口に広がる苦味と喉を通る爽やかな甘さに、一口二口と飲み続けて、杯の中辺りまで一息に飲み、ようやく口を離す。

 

「あぁ、この一杯のために、今日もよく頑張った」

「面白い言い方ですね、レーヴェ先生。一杯のために一日を頑張る、ですか」

「本当じゃのう。しかし、その言い方は気に入った。酒を愛するが故に出る言葉といえるじゃろうし、儂も今度使ってみるかの」


 うむうむ、酒好きには打ってつけの言葉じゃのう。こやつは、一日の終わりに飲む酒の価値をよく分かっておる。



 儂がそう言うと、レオの奴は苦笑しておるが、顔を見ると悪くは思っておらんのも丸分かりよ。

 そうして、酒と料理に舌鼓を打ちながら、新しい酒を注文したところで、ようやくレオンハルトが話があると言っていた事を思い出す。


 いかんな。久々の酒に飲む方を優先させてしまっていた。何か、相談があると言っておったし、ここは儂から話を振った方がよいかのぉ。




「さてと、そろそろ本題に入るとするか。確か、レオンハルトが教えてる生徒達の事じゃったかな?」



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